中国人トップ選手がWTTチャンピオンズ重慶2024を最後に国際大会への出場を控えるようになったのに対し、パリオリンピックに向けて少しでもWRを上げたい選手は大会に連続出場しています。WTTは尋常ではない日程でコンテンダーシリーズを開催し、世界ランク20位以内への出場制限(PDR)を一時停止しました。多くの選手が怪我のリスクを負いながらも自身の目標達成のために、過密日程の中、連戦に挑むことになりました。
怪我のリスクがありながらもほとんどの大会に連続出場している早田ひな選手にとって、今大会の目標は(怪我しないことを第一にしつつも)シングルスと混合ダブルスの二冠達成だったはずです。そして見事にその高い目標を達成しました。
*アイキャッチ画像はテレビ東京卓球情報のXポストからの引用です。
WTTスターコンテンダー
- シニア向けWTTシリーズの下から2番目の大会です。
- 年間最大6大会開催可能です。
- 本戦5日、予選2~3日の日程で選手によっては1日に4試合に出場します。(今大会は本戦4日のタイトなスケジュール。)
- シングルス、ダブルス、混合ダブルスの3種目を実施。
- シングルスの本戦は48名、うち8名は予選を通過した選手。
- 予選人数は32、48、64名から開催国が選択します。
- ダブルス、混合ダブルス本戦16ペア、うち4ペアは予選を通過したペア。
- シングルスは各協会から6名までしか出場できません。(世界ランク20位以内の選手を除きます。)また世界ランク21位以降の上位者から優先出場となっています。
- 世界ランク20位以内の選手は、全体で6名しか出場できません。ホスト国はその6名を選ぶ裁量権を持ちます。
- 上記世界ランク20位以内の選手への出場制限(PDR)は、今大会は適用外です。
- ワイルドカード枠4名、WTT推薦枠2名。
- シングルスの決勝のみ7ゲームマッチ、他はすべて5ゲームマッチ。
- 優勝選手には600ポイントが付与されます。
WTTスターコンテンダーリュブリャナ2024
- 期間:2024年6月11日から16日
- 場所:スロベニアのリュブリャナ(日本との時差7時間、現地10:00が日本の17:00)
- 出場種目:シングルス、混合ダブルス
- 参照:WTT公式サイト、日本卓球協会の公式サイト
ネット中継
- WTTがYoutubeチャンネルでT1からT4をリアルタイム配信しました。
- テレビ東京卓球チャンネルは本戦2日目(Round 32)からT1をリアルタイム配信しました。
- テレビ東京卓球チャンネルはアーカイブの公開が迅速ですが、WTT公式チャンネルはしばらく待たされることがあります。
パリオリンピック前最後の4連戦の2大会目
WTTチャンピオンズ重慶2024の後、WTTはパリオリンピック前にコンテンダーシリーズを合計5大会設定しました。早田ひな選手はラゴスを除く4大会にエントリーしました。今大会はその怒涛の4連戦の2大会目です。
- WTTコンテンダーザグレブ2024(6月3日から9日)
- WTTスターコンテンダーリュブリャナ2024(6月10日から16日)
- WTTコンテンダーチュニス2024(6月24日から30日)
- WTTスターコンテンダーバンコク2024(7月2日から7日)
シングルス出場選手
本戦から出場する40名の顔ぶれです。PDRが解除されているので、WR20位以内の選手が11名もいます。
中国人トップの選手のいないスターコンテンダーはめったにないチャンスです。早田ひな選手はWR5位で第1シードでした。
日本人女子で出場したのは早田ひな選手、張本美和選手、伊藤美誠選手、平野美宇選手、木原美悠選手、長﨑美柚選手でした。
このエントリーなら早田ひな選手は優勝を目標にするしかないです。パリオリンピック本番を想定して、中国人選手と対戦するまでは絶対に負けない安定性が求められます。
シングルス:優勝
順当なら準々決勝で鄭怡静選手、準決勝で張本美和選手と当たるドローでした。次はR48終了後のベスト32のドローです。
日本人選手はこれ以上望めないほど山がバラけました。前大会に続いてドロー運に恵まれました。これなら日本人選手によるベスト4独占が期待されます。
ところが平野美宇選手がパバド選手に、木原美悠選手が申裕斌選手に敗れ、ベスト4に進めたのは早田ひな選手と張本美和選手だけでした。
早田ひな選手は準決勝で張本美和選手を、決勝で今大会絶好調のパバド選手を倒し、2週連続で優勝を手にしました。
Round 32(2回戦)
ルーマニアのエリザベータ・サマラ選手との対戦でした。ワールドカップマカオ2024の予選ラウンドで対戦しています。
1時間前に混合ダブルスを戦ったばかりでした。
接戦になりましたが勝ち切れて良かったです。
- 第1ゲーム、5-5まで競りますが、そこからサマラ選手に押される形で失点を重ね、あっさり5-11でこのゲームを落としてしまいます。早田選手のバックハンドがサマラ選手のボールに合わずにミスを連発しました。この戦い方を続けたら負けてしまいます。
- 第2ゲーム、バックハンドで得点できるようになり、第1ゲームとは違う攻め方でサマラ選手の強打を防ぐことでリードを広げる展開が続きます。サマラ選手がミスをさせられる形になりますが、早田選手の組み立てが良く、翻弄されてしまいます。最後は早田選手の低くコントロールされたサーブを無理に打ちに行ってミスになり、11-3でこのゲームを取り返します。
- 第3ゲーム、早田選手がリードを保つ展開になりますが、得点を決めに行くフォアハンドドライブを2本連続でミスして8-8と追い付かれます。このミスは中国四天王との対戦では致命傷になるので、減らしたいです。勝負どころのレシーブ2本をバックハンドで攻めて10-8とし、静かに拳を握ります。そこから1本レシーブエースされてしまいますが、最後サーブ3球目攻撃を厳しいコースに決めて11-9でこのゲームも取ります。この1本は試合を流れを大きく決めるものになりました。
- 第4ゲーム、早田選手らしい両ハンドドライブで得点を重ね、リードを保つ展開になります。最後まで攻めの姿勢を貫いて、11-6で危なげなく勝ち切り、難しい試合になることが多い初戦をものにしました。
第1ゲームの戦い方では負けてしまいそうなところ、第2ゲームから修正して負けない卓球を実践できて良かったです。その背景にはベンチの石田コーチによる的確なアドバイスがあったと思われます。
また、第3ゲームをデュースにしないで取れたことが大きかったです。
フル動画。
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この試合のスーパープレー。
Round 16(3回戦)
アメリカのチャン・リリー選手との対戦でした。WTTチャンピオンズ重慶2024のR16で対戦しています。その時はチャン選手のボールに順応できず接戦になりました。
チャン選手が強くて危なかったです。修正して勝てて良かったです。
- 第1ゲーム、競った展開が続くも8-5とリードしますが、そこからチャン選手の逆襲に会って8-11でこのゲームを落としてしまいます。ややバックハンドにミスが目立ちます。修正しないと負けてしまいます。
- 第2ゲーム、いくらか修正できたもののまだ両ハンドの精度が低く接戦になります。7-7まで競ったあと抜け出して11-8でこのゲームを取り返します。
- 第3ゲーム、両ハンドの精度が上がり、早田選手がリードする展開になります。ラリー戦の勝率が上がり、サーブも効くようになって11-3でこのゲームも取ります。
- 第4ゲーム、体勢を崩されながらもしっかり返球して得点を重ねます。危なかっしいプレーが目につきますが、チャン選手が強いのでしょうがないです。8-1と大量リードしたところから9-5まで追い上げられ、試合の印象を悪くしましたが、チャン選手はそんなに簡単に勝てる相手ではありません。チャン選手の追い上げを振り切って、11-5で勝ち切り、難しい試合をものにしました。
R32もそうでしたが、第1ゲームを落としてから修正して勝つパターンはファンの心臓に負担がかかるので、できれば第1ゲームを取って欲しいです。
また、レシーブを積極的にバックハンドで行こうとした結果ですが、サーブで逆を突かれることが多かったのが少し気になりました。
フル動画。
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準々決勝
フランスの袁佳楠(ユアン・ジアナン)選手との対戦でした。初対戦です。
袁佳楠選手はフォア面が表ソフトの異質型です。
バックハンドが袁佳楠選手のボールに最後まで合わず苦しめられましたが、持てる技術を出し切ってギリギリで勝ちました。
- 第1ゲーム、袁佳楠選手の球質にバックハンドが全く合わず苦戦します。ロングサーブにはミドルもフォアもミスを連発し、異質型との初対戦の怖さを痛感させられます。サーブは効いているのですが、3球目で仕留められずにラリー戦になるとオーバーミスさせられてしまいます。似たような失点パターンを重ねてしまい、7-11でこのゲームを落とします。相手に打ち込まれて落としたのなら、打たれないような組み立てが取れますが、返球全般でミスするのは順応に時間がかかるので危ないです。
- 第2ゲーム、袁佳楠選手の球質に順応できないまま、勢いづかせてしまって厳しいコースを突かれてさらに失点してしまいます。最後まで修正できずに5-11でこのゲームも落とし、ゲームカウント0-2と追い込まれます。
- 第3ゲーム、もう1ゲームも落とせない苦しい状況の中、何とか得点を重ねます。フォアハンドの得点率が上がり、11-6でこのゲームを取り返します。
- 第4ゲーム、劣勢が続く中、リードされていても要所で得点したら絶叫します。石田コーチの咆哮がシンクロします。そうです、吠えなきゃ勝てません。5-5から点差の開かない展開が続き、9-10とマッチポイントを握られてしまいます。世界中の早田ファンが心拍数を上げて見守る中、難しいラリー戦を制してデュースに持ち込みます。10-10からのレシーブは攻めたツッツキでしのぎ、最後サーブ3球目と5球目をフォアハンドでミドルに打ち込んで12-10で取り切り、ゲームカウントを2-2に戻します。
- 最終第5ゲーム、強打はフォアハンド主体に切り替え、ミドルへのボールにも回り込んで対応します。6-3で厳しいラリー戦を制して石田コーチと共に絶叫します。不運なエッジイン2本にも耐え、サーブとフォアハンドの強打で得点を重ねて10-7とマッチポイントを握ります。今夜は(心臓がもたないので)もうデュースは勘弁して欲しいところ、笑顔をみせながらサーブのモーションに入り、フォアサイドに振られた難しいボールにフォアハンドを振り抜いて得点し、11-7で勝ち切ってベスト4進出を決めました。
早田ひな選手は第3ゲームのサーブ2本目から最後まで、ハイトス(投げ上げ)サーブを出し続けました。ハイトスサーブをこんなに出し続けるのを見たのは初めてです。
パリオリンピック前に袁佳楠選手と対戦できたこと、対策練習すべき課題が数多く見つかったこと、苦しみながらも勝てたことで非常に収穫の多い試合になりました。
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試合結果を伝える記事。
この試合のスーパープレー。
準決勝
張本美和選手との対戦でした。前週にWTTコンテンダーザグレブ2024の決勝で対戦したばかりです。
張本美和選手の勢いを抑えて勝てました。
- 第1ゲーム、サーブが効いた早田選手がリードを広げる展開になります。ラリー戦も有利に進めて制し、11-6でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、打ち合いが増えて接戦になります。6-6まで競りますが、そこから早田選手にミスが続いて7-10とゲームポイントを握られます。ここから粘りを見せて9-10と追い上げ、張本選手はたまらずタイムアウトを取ります。9-10でレシーブの場面では長いラリー戦を選択し、コース変更したボールがエッジインで10-10になります。この1本は際どかったですが、このレベルの試合ではよくあることです。11-11からはハーフロングサーブから長い展開を選択してラリー戦を制します。最後、ミドルに打たれた低いロングサーブに回り込んでループドライブしたのを張本選手がオーバーミスし、13-11でこのゲームも取ります。
- 第3ゲーム、早田選手にミスが出て2-4とリードされます。ここで初めてバック側にロングサーブを出し、張本選手はフォアサイドを厳しく突きますが、それを読んでいたかのように対応します。次にフォア前のハーフロングのサーブでエースして4-4と追いついて「ナイスサーブ」と声を出します。7-5からはロングサーブ2本をフォアハンドで撃ち抜きます。早田選手に気の緩みは欠片も見られません。最後フォア側に出したロングサーブがオーバーミスになって11-5で勝ち切り、決勝進出を決めました。
張本美和選手は最後まで早田ひな選手のサーブに苦しめられ、得意とする展開に持ち込めないまま3ゲーム連取されてしまいました。先週の決勝戦では張本美和選手のレシーブが良く、自分の展開を思うように作れなかったことから、今大会では大きく戦術転換して臨んだようです。
フル動画。
ハイライト。
試合後のインタビュー。
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この試合のスーパープレー。
決勝
フランスのパバド選手との対戦でした。今大会絶好調で、伊藤美誠選手、平野美宇選手、申裕斌選手を倒して勝ち上がって来ました。混合団体ワールドカップ2023で対戦しています。
パバド選手の勢いを抑えて快勝でした。早田ひな選手のゲームメイクは恐ろしいまでに巧みでした。
- 第1ゲーム、4-4までは競りますが、そこから精度の高いプレーで引き離します。7-4からはフォアサイドを厳しく攻められますが、スーパーカウンターで返り討ちにします。10-4からもフォアサイドを厳しく突かれますが、わざとそうさせたのかと思うようなカウンター攻撃を決めて11-4でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、レベルの高いプレーの応酬が続き、点差が開かない展開が続きます。9-9からスーパーラリーを制してゲームポイントを握って吠えますが、ロングサーブをレシーブできずデュースになります。レシーブをバックハンドで攻めて11-10とし、最後ロングサーブをフォアサイドに厳しくレシーブされますが、長いリーチを活かしてストレートコースに打ち返し、12-10でこのゲームも取ります。今夜は間違いなく100%の早田です。
- 第3ゲーム、ラケットを振り回したいパバド選手の心理を逆手に取るような、実況も「賢い」と言うプレーでミスを誘います。この試合に良く研究して臨んだことが分かります。サーブ3球目攻撃もドライブとループドライブを混ぜて翻弄します。パバド選手はサーブが効かないため途中からバックサーブに変えて得点しますが、早田選手はすぐに対応します。パバド選手は得意の両ハンドを振る自分の展開を作れません。このゲームも11-6で取って優勝に王手をかけます。
- 第4ゲーム、早田選手がゲームを支配する形でリードを広げます。プレーの精度が高い上に異なる技術を織り交ぜて攻撃する巧みさを見せます。7-2からはチキータレシーブをフォアハンドでカウンターされますが、分かっていたかのようにスーパーカウンターして静かに拳を握ります。圧倒的な実力差を見せつけて11-3で勝ち切り、フランスの超新星の挑戦をストレートで退けました。早田選手、恐ろしいほどの強さでした。
現地時刻の13:00 シングルス準決勝、16:00 混合ダブルス決勝、18:00 シングルス決勝という残酷なスケジュールでしたが、3試合目の決勝でも体力・精神力は十分で、恐ろしいまでの強さを見せました。今大会、多くの選手がパバド選手のサーブに苦しめられたのに対し、事前準備が良かったのか早田ひな選手はレシーブでも自分の展開を作ることができました。
また、早田ひな選手の技術力の高さ、戦術の幅の広さを実感できる試合でした。パリオリンピック本番に向けて順調に仕上がってきていますね。
フル動画。
ハイライト。
表彰式。
表彰式後のロングインタビュー。石田コーチも登場。
試合結果を伝える記事。
この試合のスーパープレー。
混合ダブルス:優勝
本戦から出場する12ペアの顔ぶれです。はりひなペアは第2シードでした。
はりひなペアがパリオリンピックの第2シードを狙うのは困難な状況であるため、パリオリンピックまでに出場する残り(今大会を含めて)4大会の目標は、第4シードの死守だと思われます。
そのためにはスペインペアより先に負けてはいけません。また、残りの大会を第2シードで(韓国ペアとは反対の山で)戦いたいので、香港ペアより先に負けるのは避けたいです。幸いはりひなペアにとってドローは決勝まで進みやすいものでした。順当なら準決勝で香港ペアと対戦しますが、ここでこのペアに負けるわけにはいきません。
スペインペアが準決勝で、香港ペアがR16で敗れたのに対し、はりひなペアは苦しい試合に耐えながらも決勝に進出しました。反対の山では林鐘勳/申裕斌ペアが順当に勝ち上がり、迎えた決勝戦では運も味方に付け、苦しみながらもフルゲームの接戦を制して優勝しました。
残る対象試合での、林鐘勳/申裕斌ペアの勝ち上がり次第ですが、はりひなペアがパリオリンピックの第2シードを取れる現実的な可能性が出てきました。難しいことは変わらないのですが、試合はやってみなければ分からないものです。
Round 16(1回戦)
イシイ/B・タカハシのブラジルペアとの対戦でした。シンガポールスマッシュ2024のR16でも対戦しています。
接戦を制して勝てました。張本智和選手が素晴らしかったです。
- 第1ゲーム、はりひなペアにとって不利なローテーション、接戦で点差が開かない展開が続きます。はりひなペアの仕上がりは良さそうです。9-9まで競りますが、最後2本をしっかり決めて11-9でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、はりひなペアがリードを保つ展開になりますが、ブラジルペアは攻撃力が高く、積極的に強打してきます。はりひなペアは攻撃の組み立てが良く、11-8でこのゲームも取ります。
- 第3ゲーム、ブラジルペアの逆襲を受けて1-5と大量リードされます。そこから点差を詰めますが、8-10と先にゲームポイントを握られます。そこからしっかり攻めて12-10で勝ち切り、状態の良いブラジルペアに対しストレート勝利を手にしました。
張本智和選手は勝負どころで1本もミスしませんでした。早田ひな選手はらしくないプレーが見られたので、次戦までに修正して臨みたいです。
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準々決勝
イオネスク/サマラのルーマニアペアとの対戦でした。予選を勝ち上がってきました。
しっかり勝てました。
- 第1ゲーム、はりひなペアにとって不利なローテーション、はりひなペアがリードを保つ展開が続きます。はりひなペアは攻撃の組み立てが良く、ルーマニアの男子選手を抑えて11-6でこのゲームを取ります。はりひなペア、仕上がっています。
- 第2ゲーム、安定したプレーではりひなペアがリードを保つ展開が続きます。序盤は競りますが、終盤流れをつかんで引き離し、11-6でこのゲームも取ります。
- 第3ゲーム、このゲームも序盤は競ったものの終盤流れをつかんで引き離し、危なげなく11-5で勝ち切りました。
特に張本智和選手の状態が良く、ミスの多いルーマニアペアを寄せ付けませんでした。
フル動画。
ハイライト。
思わず笑ってしまったプレー。
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準決勝
韓国の呉晙誠/田志希ペアとの対戦でした。予選を勝ち上がってきた、韓国第2ペアです。R16で香港ペアを倒しています。
難しい試合になりましたが、勝ち切れて良かったです。
- 第1ゲーム、はりひなペアにとって不利なローテーション、試合への入り方が最悪で流れを渡してしまい、弱点を攻められ続けて0-9と一方的な展開になります。ところがラッキーなエッジインから流れが反転し、10連続得点して10-9と逆転します。このゲームはデュースの末に惜しくも落としてしまいますが、後半の戦い方なら十分勝機が見込めます。
- 第2ゲーム、はりひなペアが要所でしっかり得点を重ねてリードを広げる展開が続きます。はりひなペアの状態は良いです。危なげなく11-5でこのゲームを取り返します。
- 第3ゲーム、接戦になり点差が開かない展開のまま9-9まで来ます。最後2本、韓国男子選手に打ち込まれて9-11で落としてしまいます。
- 第4ゲーム、このローテーションだとはりひなペアの攻撃の組み立てがハマりやすく、韓国男子選手にいい仕事をさせません。つかんだ流れを放さず11-3でこのゲームを取り返し、ゲームカウントを2-2とします。
- 最終第5ゲーム、不利なローテーションから始まりますが、そこを5-2のリードで耐えます。エンドが変わって有利なローテーション、7-7と追い付かれるも弱気にならずに攻め続け、10-8でマッチポイントを握ります。最後、早田選手が田志希選手のサーブを(この試合で初めての)チキータレシーブで撃ち抜き、11-8で激戦をものにしました。
不利なローテーションで相手の男子選手を抑えるのが、はりひなペアの課題です。それを再認識させられる試合になりましたが、それでも勝ち切れて良かったです。ペアの状態が良いと、しっかり試合が作れますね。
フル動画。
ハイライト。
決勝
韓国の林鐘勳/申裕斌ペアとの対戦でした。前週開催されたWTTコンテンダーザグレブ2024の決勝と同じカードになりました。
不利なローテーションを落としながらも最終ゲームを技術と気持ちで制し、2大会連続の優勝を手にしました。はりひなペア、素晴らしかったです。
- 第1ゲーム、はりひなペアにとって有利なローテーション、林鐘勳選手をしっかり抑え、ラッキーなネットインも複数回あって流れをつかみ、リードを広げる展開が続きます。一方的な流れになり、11-3でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、弱点となっている不利なローテーション、第1ゲームとは別人同士のような試合内容になります。どうしても林鐘勳選手を抑えきれずに失点を重ねます。張本選手が申裕斌選手のボールを苦手としていることも失点要因です。改善できないまま5-11でこのゲームを落とします。現状ではこうなるのはしょうがないです。
- 第3ゲーム、再び有利なローテーション、第2ゲームとは真逆の展開になります。何故か早田選手の方が林鐘勳選手に対しての得点率が高いです。はりひなペアの仕上がりは良く、噛み合った攻撃でリードを保ちます。11-7でこのゲームを取り返します。
- 第4ゲーム、やはり不利なローテーションでは失点が増えます。韓国ペアは男女ともに生き返ったように元気になります。状態の良いはりひなペアは善戦して接戦になりますが、一歩およばず8-11で落としてしまいます。
- 最終第5ゲーム、ここまで来ることは想定していたはずです。有利なローテーションのうちにリードしておきたいところ、ラッキーなロビングでの得点もあって5-2でチェンジエンドします。ここからが課題の不利なローテーションですが、今日のはりひなペアは長く続いた不振から脱却したかのような好プレーを連発してリードを保つ展開になります。最後、練習の成果が出たプレーで締めて11-5と圧倒し、前週に続いてうれしい優勝を手にしました。
試合の流れは前週と同じで、有利なローテーションを絶対取って最終ゲームまで行く、最終ゲームはなんとかして林鐘勳選手を抑えて逃げ切るでした。今大会のはりひなペアは前週より明らかに状態が良くなっており、強い韓国ペアに勝つ方法があることを確信できたはずです。なお、今日はラッキーな得点もたくさんあり、卓球の神様に感謝しました。
フル動画。
ハイライト。
本人もびっくりしたスーパープレー。実況「文字通りマトリックスの動きだ」。
試合後のインタビュー。
試合結果を伝える記事。
この試合のスーパープレー。
まとめ
- シングルスは袁佳楠選手、張本美和選手、パバド選手を倒して優勝できました。袁佳楠選手との準々決勝では2ゲーム先行されるほぼ苦しい展開の中なんとかギリギリで勝ちました。ここで負けていたらパバド選手と決勝を戦うこともできませんでした。
- 袁佳楠選手との対戦では優勝したこと以上に大きな収穫が得られました。パリオリンピック本番でも対戦する可能性があり、あの球質にどうやって対応するかが大きな課題です。今大会で対戦できて本当に良かったです。パリオリンピック本番が初対戦だったらと思うとゾッとします。
- パバド選手は今大会絶好調で、伊藤美誠選手、平野美宇選手、申裕斌選手を撃破して決勝に進みました。そのパバド選手の勢いを抑えて優勝できたことは、大きな自信につながったはずです。
- シングルス優勝で付与されるWRポイントは600で、これは今から1年間、早田ひな選手の世界ランクを支えてくれます。
- 混合ダブルスは前週よりペアの状態が上がっており、林鐘勳/申裕斌ペアとの決勝でもペアの良さを発揮して優勝できました。不利なローテーションで林鐘勳選手を抑えられない課題は改善されないままですが、有利なローテーションでしっかり勝って最終ゲームで逃げ切りを図れたことは、試合内容の評価は別にして、ペアにとって非常に大きな収穫になりました。
- 何より怪我なく乗り切れて良かったです。
- 前週に続き、総じて収穫の大きい、素晴らしい大会になりました。
大会終了後
早田ひな選手のインスタグラムから。
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テレビ東京制作の公式動画。
帰国しないでパリで調整
今大会の1週間後にはチュニジアで開催される、WTTコンテンダーチュニス2024に出場します。カレンダー風に表現するとこうなります。ちょうど1週間空くわけですが、その週に開催されるWTTコンテンダーラゴス2024には日本人選手は出場しません。そして早田ひな選手は対象外ですが、アジア選手権2024代表選考会が開催されます。
チームひなは帰国しないでパリで調整する選択をしたそうです。また、今大会には日本生命レッドエルフのチームメイトである麻生麗名選手が練習パートナーとして帯同していましたが、そのままパリとチュニジアにも帯同します。