早田ひな選手はパリオリンピック選考レース期間中、選考ポイントランキング1位をキープし続けました。第6回選考会に臨む前の時点で、1位通過をほぼ確実にし、2024年全日本選手権大会で優勝してダントツの1位で選考レースを終えました。
約2年に及んだ選考レース期間中に、早田ひな選手は飛躍的な成長を遂げましたが、その道程は決して平らなものではありませんでした。この記事ではパリオリンピック選考レース期間中における、早田ひな選手の戦いを振り返ります。
*アイキャッチ画像はこちらの記事からの引用です。
2022年
第1回パリオリンピック選考会(3月5日、6日)
パリオリンピック選考レースは2022年3月に開催された、第1回選考会から始まったように思われますが、出場選手32名のシードには年初に開催された全日本選手権大会の結果が使われました。つまり、選考レースは2022年全日本選手権大会から始まっていたと考えることができます。
早田ひな選手は心臓に悪いフルゲームの、非常にきわどい試合を制して優勝し、選考レースで好スタートを切れました。
- 準々決勝で石川佳純選手とのフルゲームの激闘を制します。もの凄い試合でした。石川佳純選手に負けていたら、世界卓球2022成都大会(団体戦)への出場資格は得られませんでした。
- 決勝は長﨑美柚選手との対戦でした。長﨑美柚選手はめっちゃ強く、いきなり3ゲーム連取されてしまいました。そこから3ゲーム取り返し、最終ゲームは先にチャンピオンシップポイントを握られたものの、デュースの末に勝ちました。まさに死闘でした。この試合は、僕が生涯忘れられないもののひとつです。
特典が多かった第1回選考会
この選考会の優勝者に付与される選考ポイントは50で、準優勝者は45です。差はわずか5ポイント。が、優勝者にはアジア競技大会のシングルスへの参加資格が与えられました。
- アジア競技大会のシングルスは選考ポイント付与対象。
- アジア競技大会のシングルス枠は2名しかない。
このシングルス枠に入れるのは、この選考会の優勝者と、アジア競技大会選考会の優勝者だけですので、ハードルがものすごく高かったです。早田ひな選手が優勝できた意味は非常に大きいです。
また、世界卓球選手権(団体戦)への出場資格が選考会の上位4名に与えられました。
この第1回選考会の結果、早田選手は次の特典を手に入れました。
- 選考ポイント50(当時トップ)
- 世界卓球選手権(団体戦)への出場資格
- アジア競技大会シングルスへの出場資格
もちろん、選考会を勝ち抜いたこと、長﨑美柚選手との死闘に勝利したことで大きな自信を手にしたはずです。
シンガポールスマッシュ2022(3月7日から20日)
- シングルスは準々決勝まで勝ち進み、孫穎莎選手と対戦できたことは大きな収穫だったはずです。獲得したポイントは350で、これは決して少なくないです。(WTTコンテンダーの優勝ポイントが400です。)
- みまひなペアのダブルスは、決勝まで進んだものの、今大会調子が上がらないまま終わってしまった印象です。二人が共に好調でないと孫穎莎/王曼昱ペアには勝てません。
- はりひなペアの混合ダブルスは、ベスト8という非常に残念な結果に終わりました。何が悪かったは、張本智和選手、早田ひな選手が良く分かっていることでしょう。これからさらに強くなると信じています。
WTTコンテンダーザグレブ2022(6月13日から19日)
- シングルスはR16で平野美宇選手に負けてしまい、悔いの残る大会となりました。平野美宇選手、強かったです。
- みまひなペアのダブルスは、不調ながら期待通り優勝できました。みまひなペアは調子に波がありますね。
- はりひなペアの混合ダブルスは、期待通りに優勝できました。はりひなペア、強かったです。張本智和選手は頼りになる漢でした。
WTTスターコンテンダーESS2022(7月11日から17日)
- シングルスはR32で劉煒珊選手、R16で平野美宇選手を倒して準々決勝に進みました。特に平野美宇選手にリベンジできたことの意味は大きかったはずです。準々決勝では孫穎莎選手に(またしても)勝てませんでしたが、収穫の多い大会だったことでしょう。
- ダブルスはなんとか決勝まで進んで世界最強ペアと対戦しますが、ラリー力の強さを見せつけられる結果となりました。課題が多い大会でした。
- 混合ダブルスは、R16でうだみまペアに競り勝っていなかったら大きな悔いが残った大会でした。準々決勝以降は調子を上げ、あと一歩で中国ペアを撃破するところまで迫りました。素晴らしい大会でした。
WTTチャンピオンズESS2022(7月18日から23日)
- R16で石川佳純選手を倒して準々決勝に進みました。石川佳純選手にしっかり勝てて良かったです。
- 準々決勝では陳夢選手にあと一歩及ばず勝てませんでしたが、収穫の大きい試合だったはずです。
TリーグNOJIMA CUP 2022(8月13日、14日)
初開催となったTリーグ個人戦ですが、パリオリンピック選考ポイント付与対象としたことで、興行イベント色を付けた小型版パリオリンピック選考会になりました。早田ひな選手は見事優勝して初代女王になり、選考レースをリードする最高の大会にできました。
- 第6シードの早田ひな選手は伊藤美誠選手とは逆の山に入りました。ドロー運が悪い時期が長かった早田ひな選手ですが、今回はドロー運に恵まれました。伊藤美誠選手の山には石川佳純選手と長崎美柚選手が入り、激戦区になったのはドロー運としか言いようがないです。
- 早田ひな選手は接戦になった平野美宇選手との決勝に勝って優勝し、初代女王になりました。第3ゲーム、第4ゲームのどちらかのデュースを落としていたら、負けていたかも知れない接戦でした。強い平野美宇選手に勝ててよかったです。
世界卓球2023ダーバン大会(個人戦)の選考レースをリード
早田ひな選手は世界卓球2023ダーバン大会(個人戦)で、王芸迪選手との卓球史に残る激闘を制して銅メダルを獲得しましたが、その大会のシングルス出場権は選考ポイントランキング上位5名に与えられました。はしょって言うと、第3回選考会までの結果で世界卓球2023ダーバン大会のシングルスに出場できるかどうかが決まったのです。
第2回パリオリンピック選考会(9月3日、4日)
早田ひな選手は準決勝で伊藤美誠選手に敗れ、3位決定戦で長﨑美柚選手に勝ち、結果3位でした。
- 準々決勝は平野美宇選手との対戦でした。TリーグNOJIMA CUP 2022の決勝戦からわずか3週間での再戦になりました。でもそうなることは十分予想できたので、両者ともに十分な対策をしてきたことでしょう。早田ひな選手はミスが少ない上に頭が冴えていて、常に平野選手の一歩先を進んでいる感じでした。
- 準決勝は伊藤美誠選手との対戦でした。2022年全日本選手権大会の決勝戦以来の対戦となりました。伊藤美誠選手はプレーの精度が高く、スマッシュを少なくした堅実な戦術で早田ひな選手を上回りました。早田ひな選手は試合前半、準々決勝までと違ってミスが多く、試合を優位に進めることができませんでした。
- 3位決定戦は長﨑美柚選手との対戦でした。第1回選考会の決勝戦以来の対戦となりました。準々決勝から3位決定戦までは時間間隔が短く、残っていた体力・知力を振り絞って何とか勝利したという印象です。勝てて良かったです。
第2回選考会で得たもの
3位でしたので、得られた選考ポイントは40でした。選考ポイント付与対象の大会が3回終了した時点で、2位の伊藤美誠選手との差は30ポイントになりました。
第2回選考会は、第1回と違って優勝者に特別な権利(資格)は付与されませんでした。そのため優勝できなかったものの、選考レースを戦う上で大きく不利になるようなことはありませんでした。そして選考ポイントランキングで2位以下を大きく引き離していたため、世界卓球2023ダーバン大会(個人戦)のシングルス出場権獲得に有利な状況でした。
すべての大会で優勝するのは無理ですから、どうしても負けられない大会では優勝し、優勝できなかった大会からはより強くなるための経験・知見を得るという姿勢でいいと思います。その意味で、伊藤選手との(久しぶりの)対戦から得たものはものすごく大きかったはずです。
お互いの戦術や技術をフルに駆使しての死闘を終え、早田は「伊藤選手とやるときはもう1人分の頭がほしいくらい頭を使うし、疲れる」と苦笑い。ただ、伊藤に勝った20年1月の全日本選手権時に比べて「今回はお互い同じくらいの緊張の中で駆け引きができた」と手応えを示し、対伊藤攻略の糸口についても「自分の感覚をつかんだ。(伊藤に対して)これくらいで打つのが正しい方法だと、やっとつかむことができた。それだけでも収穫」とうなずいていた。
引用:早田ひな快進撃ストップ 伊藤美誠と激戦も苦杯「もう1人分の頭ほしい」攻略法に収穫も
WTTコンテンダーアルマトイ2022(9月12日から18日)
- シングルスで銭天一選手、平野美宇選手に勝って優勝でき、収穫の多い大会でした。国際大会でのシングルス優勝は、2021年アジア選手権大会で3冠を達成して以来11ヶ月ぶりでした。
- 2022年に獲得したWRポイントが少なかったところ、一気に400ポイント増やすことができました。これは2023年の戦いを有利に進める上でとても重要でした。
- ダブルスでは平野美宇選手と組んだみうひなペアで優勝し、このペアの可能性の高さを示すことができました。
左上腕三頭筋の炎症
早田ひな選手は今大会の途中から左腕にテーピングをしていました。この時は筋肉痛のようなものと認識していたようですが、約2週間後に開催された世界卓球2022成都大会で、左上腕三頭筋の炎症であることが判明します。
今大会あたりから、左腕は限界を超えていたということですね。
世界卓球2022成都大会(団体戦、9月30日から10月9日)
- 中国には歯が立ちませんでしたが、4大会連続で銀メダルを獲得しました。
- 選出された5名全員が複数の試合で起用されて勝利しました。選手も起用した監督も素晴らしかったです。
- 早田ひな選手は万全の状態でなかったことに加え、準決勝のドイツ戦で左腕を痛めてしまい決勝戦を欠場するという残念な結果となりました。さらに10月開催のWTTチャンピオンズ、WTTカップファイナルズも欠場しました。
左腕の状態について
帰国後の取材で、左腕の状態が明かされました。
上記2記事の要点はこうです。
- 左腕の痛みについては「筋肉痛がひどくなっているような感じ。腕を曲げると張りがある」。
- WTTコンテンダーアルトマイのころから左腕に炎症があったが、治り切らないまま世界選手権に入った。
- 準々決勝から3試合出場する予定だったが、決勝はプレーできない状態だった。
- 大会中は緊張などが理由で食事がのどを通らないこともあった。
- 左腕を曲げると張りを感じるため、日常生活でも極力伸ばした状態で過ごしている。
- 1ヶ月休養し、11月中旬の第3回パリオリンピック選考会での復帰を目指す。
世界中の早田ひなファンにとって、つらくて苦しい1ヶ月でした。
第3回パリオリンピック選考会に間に合った
決勝戦を欠場してから5週間後に開催された、第3回パリオリンピック選考会に間に合わせることができました。実践的な練習を再開できたのは選考会の2日前、1日試合ができるだけの体力を付けることはできず、強打の練習もできませんでしたが、それでも元気に出場して奇跡的に決勝戦まで進み、平野美宇選手に敗れましたが準優勝という、これ以上望めない成果を手にしました。
間に合って本当に良かったです。
なお、準々決勝後のインタビューで、世界卓球選手権の決勝戦に出ていたら、第3回パリオリンピック選考会にはまず出られていなかったと語っていました。
第3回パリオリンピック選考会(11月12日、13日)
早田ひな選手は10月上旬に左腕を故障してしまい、治療のための休養に入りました。第3回選考会に間に合わせることを目標にしていたのですが、元気に復帰して準優勝できました。間に合って本当に良かったです。
早田ひな選手によれば、決勝まで進めたのは奇跡だったそうです。
第3回選考会で得たもの
早田ひな選手は準優勝で選考ポイントを45積み上げることができました。この選考会に出場できていなかった場合、来年の世界卓球選手権への出場権獲得が危なくなる可能性がありましたが、しっかりポイントを増やすことができました。これにより、パリオリンピック選考レースで重要な大会となる、2023世界卓球選手権(個人戦)への出場権獲得は確実になりました。(コンディションを整えて、来年1月開催予定のアジア大陸予選会に出場することが条件になります。)
また、試合の中での収穫もあったようです。
2週間はラケットを握らない完全休養期間も設けるなど、体力面と試合勘に不安を抱えた中で優勝争いを演じただけに「決勝に残れてまずはうれしかった。100%じゃなかったが、最初2ゲーム取って自分がビックリした」と笑顔。詳細は伏せたものの、新たに取り組んでいるプレーも試せたといい「(状態が)100%に戻ったときに成長するチャンス。負けはしたが、平野選手と対戦できて良かった」と収穫にうなずいた。
大会終了後
石田コーチがインスタグラムストーリーズで、気がかりだったことについて明かしてくれました。ありがたいです。次はその要約です。
- 医師やトレーナーなど多くの人から練習再開可能との判断をもらい、すぐにでも練習したいところを我慢して我慢して、本当にギリギリのタイミングで再開した。
- 試合では最低限のできることで、無理しないで戦うことを目指した。難しかった。
- それでも大切な試合であれだけのプレーができたことに感謝。
- 卓球が大好きなひなにとって練習、試合ができないのは誰よりもしんどいこと。それでも笑顔で頑張った。
- ご心配いただいていますが、選考会を戦い抜いても元気です。
早田選手が(選考会を戦い抜いた後も)元気だと分かって安心しました。
今後について早田選手はこのように語っています。
今大会を終えて、世界選手権代表に内定できたことはとても嬉しいです。この結果は今大会だけでなく、今までの実績の積み重ねだと思うので、世界選手権シングルスでしっかりと勝てるように練習内容を見直し、無駄を省いた練習で自分自身を作り上げていきたいと思います。
アジアカップ2022(11月17日から19日)
準決勝で王芸迪選手に敗れ、3位決定戦でマニカ・バトラー選手に敗れて4位でした。故障からの復帰戦であったことを考えると、良くそこまで戦えたと言っていいでしょう。そしてWRポイント175を獲得できたことにより、2023年1月に2021年のWRポイントが失効後も、日本人選手2位(1位は伊藤美誠選手)のポジションをキープできました。
- 苦しい初戦を勝ち切れた。
- さらに苦しい準々決勝で杜凱琹選手に勝てた。
- 100%の状態でない中、王芸迪選手、バトラー選手と対戦して負けはしたものの、収穫があった。
大会終了後
大会終了後に、インスタグラムストーリーズで状況を教えてくれました。次はその要約です。
- 選考会とアジアカップを、無事に怪我なく終えられたことにホッとしています。
- サポートしてくれている方、応援してくれる方への感謝の気持ちでいっぱいです。
- いろんな戦型の選手と戦えて、さらに自分を成長させられる気付きがたくさんありました。
- 感覚がほとんど戻っていない中でどう戦うかをすごく考えさせられた2大会でした。
- それでも今までできなかった感覚での打球ができた、自分自身の力でそれを掴めた瞬間はすごくうれしかったです。
- 次にコートに立つ時には100%の状態で試合ができるよう、身体を戻せるように頑張ります。
- 引き続き応援よろしくお願いします。
大会に出ても大丈夫だと慎重に判断し、できる範囲で無理しないで戦ったわけですが、何よりケガなく終えられて良かったです。
2022年の試合を終えて
2022年最後の試合はTリーグの京都カグヤライズ戦でした。チームも早田ひな選手も負けてしまったのですが、インスタグラムストーリーズで次のように語っていました。
- ユアン選手に負けてしまい悔しい気持ちもありますが、練習してきたことがたくさん出せて、内容としては良かったなと思える試合でした。
- 勝ち負けにこだわることも大事だけど、試合の中で挑戦していく気持ちが大事だと思いました。
- 今日の負けは自分の卓球をより突き詰め、幅を広げていくきっかけになりそうな気がしました。
- 来年はアジア大陸予選会から試合がスタートします。周りの方々のサポートを力に変えて1歩ずつ進んで行きます。
- 今年1年ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
2023年
アジア大陸予選会2023(1月7日から13日)
シングルス、ダブルス(みまひなペア)、混合ダブルス(はりひなペア)の3種目で、世界卓球2023ダーバン大会(個人戦)への出場権を獲得しました。
2023年全日本選手権大会(1月23日から29日)
- シングルスの決勝戦で戦った木原選手は過去一番の強さで、これまでの対戦経験が通用しませんでした。それでも勝てたのは実力が上がったからだと、早田選手自身が認識しており、とても価値のある優勝を手にできました。この優勝によりパリオリンピック選考ポイント60が加算され、合計224ポイントで首位を独走しました。
- ダブルスはみまひなペアで歴代最多の5連覇を達成、混合ダブルスはハリひなで2連覇達成と、「ダブルスの女王」との呼称にふさわしい結果でした。
- ダブルス競技含めて6日間で17試合を戦い抜き、女子では史上4人目の3冠を達成しました。
WTTスターコンテンダーゴア2023(2月27日から3月5日)
シングルスはR32で鄭怡静選手に完敗、混合ダブルスは張禹珍/田志希ペアに準決勝で惜敗と、非常に悔しい大会になりました。特にシングルスは近年では(スコア的に)一番弱く、対人競技で負けることもあるとは分かっていてもショックが大きかったです
シンガポールスマッシュ2023(3月7日から19日)
- シングルスはR32でスターシニー選手に負けてしまい、非常に悔いが残る結果になりました。
- ダブルスは明らかに調整不足で実力を発揮できず、陳夢/王芸迪ペアに負けてベスト4でした。
- 混合ダブルスは樊振東/王曼昱ペアを破って決勝に進みましたが、王楚欽/孫穎莎の世界最強ペアに負けて準優勝でした。
1ヶ月半続いた不調
シンガポールから日本への航空便が満席で、帰国できたのが20日月曜の夜中、そしてTリーグ・プレーオフ・セミファイナルが22日でした。そのセミファイナルで2勝した後のインタビューで、次のように答えていました。
全日本が終わってから、3回くらい体調が悪くなって、自分で感じるほど卓球の調子が落ちるのが分かりました。
WTTスターコンテンダーゴア、シンガポールスマッシュのシングルスは明らかに調整不足でした。ケガの予防と体調管理は早田ひな選手の大きな課題ですね。
Tリーグ・プレーオフファイナルで、平野美宇選手にストレート勝利した後のインタビュー記事にこうありました。(一部表現を変更しています。)
22日のセミファイナルまで陥っていた不調から中3日で休養と練習を重ね「一気に感覚も状態も戻った」と実感した。
セミファイナル前まで約1カ月半続いた不調を「初めて卓球がやりたくない、できないと思うぐらい追い込まれていた」と振り返る。その中でセミファイナル、ファイナルと大勢の観客に包まれる中で試合し「私の試合を見に来てくださる方を見ると、卓球をやって良かった。またどん底に落ちないよう、自身と向き合わないと」と精神面で成長する必要性を感じていた。
次は別の記事から。
今回、1ヶ月半くらいずっと試合をしていて、自分の人生の中で、はじめて卓球ができないかも、と思うくらい追い込まれていました。
でも、こうやって私の試合を観に来てくださった方々を見ると、卓球をやっててよかったなと改めて思います。今回、どん底に落ちたとき、どうやって這い上がっていくかなど、いろいろな良い経験になりました。
インドのゴア、シンガポールの2大会のような試合を今後絶対にしないように自分自身と向き合い、4月の中国、マカオ、選考会に向けて調整していきたいと思いました。
WTTチャンピオンズシンシャン2023(4月9日から15日)
準々決勝で陳夢選手をあと一歩のところまで追い詰めましたが、フルゲーム・デュースの末に負けてしまいました。それでも陳夢選手を相手に互角の戦いができたことは大きな自信になったはずですし、不調だったインド、シンガポールの大会から完全に復調したことは間違いないです。その点において、とても収穫の多い大会でした。
WTTチャンピオンズマカオ2023(4月17日から23日)
前大会から好調を維持しており、準々決勝での陳夢選手との再戦には期待が持てたものの、陳夢選手が強すぎました。早田ひな選手への対策が完璧で、1週間でここまで変わるものかと中国ナショナルチームの怖さを実感しました。
第4回パリオリンピック選考会(5月6日、7日)
選考ポイントが従来の倍になった第4回選考会で、早田ひな選手は「死のブロック」を勝ち上がって優勝しました。決勝では、準決勝で平野美宇選手を倒して勝ち上がってきた張本美和選手に勝利しました。
第4回選考会で得たもの
優勝者に付与された選考ポイントは100でした。そのポイントを除くと、何かの大会の出場資格が与えられるなどの特典はありませんが、9月に韓国で開催されるアジア選手権大会の出場資格は選考ポイント上位5名に付与されるため、選考ポイント合計1位の座を固めておくことは重要な意味を持ちました。
早田ひな選手は選考ポイントを332.5まで伸ばし、2位の平野美宇選手との差を125.5に拡げました。
世界卓球2023ダーバン大会(個人戦、5月20日から28日)
シングルスの準々決勝で王芸迪選手との死闘を制して銅メダルを獲得する「歴史的快挙」を成し遂げました。僕はこの試合で繰り広げられた死闘を生涯忘れません。
- シングルスは準決勝で孫穎莎選手に負けてベスト4(銅メダル)でした。
- ダブルスは準々決勝で陳夢/王芸迪ペアに敗れてベスト8でした。
- 混合ダブルスは準決勝で林詩棟/蒯曼ペアに勝ち、決勝で王楚欽/孫穎莎ペアとの再戦を果たしましたが、あっけなく敗れて準優勝でした。
シングルスでベスト4入りしたため、WRポイントを700、選考ポイントを120、さらにWR3位の王芸迪選手に7ゲームマッチで勝利したため打倒中国ポイントを15獲得しました。
- 2022年秋からWRポイントを満足に稼げておらず、世界ランクの下落が続く厳しい状況でしたが、WRポイントを700獲得できたことはとても大きかったです。
- パリオリンピック選考ポイントを135加算できたことで、さらに2位以下を大きく引き離すことができました。
あの時、実は
2024年1月22日に公開された特別企画「あの時、実は」。早田ひな選手「卓球人生の可能性を広げてくれた試合」。
TリーグNOJIMA CUP 2023(6月17日、18日)
準決勝で伊藤美誠選手に敗れ、3位決定戦で大藤沙月選手に勝利して結果3位でした。
今大会の早田ひな選手と伊藤美誠選手の状態なら勝てると思いましたが、勝てませんでした。伊藤美誠選手は別人のように強かったです。
WTTコンテンダーザグレブ2023(6月26日から7月2日)
- 7月と9月にWRポイントが大量に失効する早田ひな選手としては、今大会で優勝して400ポイント獲得したいところだったと思います。ところがWTT推薦枠で孫穎莎選手がエントリーし、準決勝で当たるドローとなってしまった結果ベスト4止まりで、140ポイントしか獲得できませんでした。
- でも、世界卓球2023ダーバン大会に続いて孫穎莎選手と対戦したことで、多くの課題を見つけると共に通用する技術の確認もできました。石田コーチのインスタグラムのコメントからもそう読み取れました。これはWRポイントには代えられない貴重な経験になったはずです。
- 決勝戦で平野美宇選手がフルゲームを制して孫穎莎選手を下して優勝しました。孫穎莎選手は2019年に伊藤美誠選手に負けてからは中国人選手以外に無敗を続けていたので、歴史が動いたと言える勝利でした。
WTTスターコンテンダーリュブリャナ2023(7月3日から9日)
- シングルスのみにエントリーし、準々決勝で孫穎莎選手に惜敗してベスト8でした。孫穎莎選手に負けはしたものの、過去一番勝利に近づけた試合でした。
- 中国のTOP3が出場すること、早田ひな選手は第5シードであることから、準々決勝で中国人選手を倒さないとベスト8止まりになります。ドロー運により孫穎莎選手との対戦になりましたが、先週の対戦と平野美宇選手が勝利したことを踏まえて、今大会で再戦できたことはラッキーだったと思われます。
- 先週は良いところを出せないままストレートで負けましたが、今大会では別人のような戦いぶりで、勝利にはあと数点足りませんでしたが、とても収穫の多かった試合になったはずです。
第5回パリオリンピック選考会(7月22日、23日)
決勝戦で天敵の伊藤美誠選手に勝って優勝しました。伊藤美誠対策が完璧でした。
第5回選考会で得たもの
優勝者に付与された選考ポイントは100でした。そのポイントを除くと、何かの大会の出場資格が与えられるなどの特典はありません。また、今年後半の国際大会の出場資格にも影響はありません。
が、選考ポイントを100追加して、選考レースの首位独走体制をより強固なものにできたことの意味は、今後出場を予定している大会に体調不良などで出られなくなる可能性(リスク)を考えると、非常に大きかったです。
また、勢いで勝ったことしかない(パリオリンピック選考会期間中に2度負けている)伊藤美誠選手に4-0で勝って優勝できたことは、今大会最大の収穫であり、大きな自信につながったはずです。
WTTコンテンダーリオデジャネイロ2023(8月7日から13日)
- 中国人選手が出場しないコンテンダー大会でシングルスのみにエントリーし、期待通り優勝しました。WTTシリーズのシングルス優勝は、WTTコンテンダーアルマトイ2022に続く2回目でした。
- 400ポイントの失効が迫っていたため、現在のWRを維持するためにどうしても今大会で優勝して400ポイント獲得したいというのが、チームひなの考えだったはずです。
- 石田コーチは表彰式のインスタライブの中で「地球の裏側まで来た甲斐がありました」と話していました。日本からの移動だけで40時間、時差12時間、Tリーグの試合を4回出ない選択をして挑んだ大会だったので、結果を出せて、優勝できて本当に良かったです。
2023年アジア選手権大会(9月3日から10日)
- 団体戦は準決勝で中国と当たってしまい、完敗でベスト4(銅メダル)でした。中国は優勝しました。
- シングルスはR64で敗退してもおかしくない試合をものにし、準決勝まで進みましたが、孫穎莎選手に異次元の強さを見せられる結果になりました。結果ベスト8、WRポイントを90、選考ポイントを40獲得しました。
- はりひなペアの混合ダブルスは準々決勝で林高遠/王芸迪の中国ペアに敗れてベスト8でした。張本智和選手が右親指を負傷していたので、この結果は気にしなくていいです。
- 団体戦とシングルスの2試合で孫穎莎に実力差を見せつけられたのは、収穫もあったとは言え、厳しいものを感じました。
2022年アジア競技大会(9月22日から10月2日)
- 団体戦は決勝で中国に挑みましたが負けてしまい、準優勝(銀メダル)でした。それでも出場した3人が1ゲーム以上取るなど、これまでで一番競った試合になりました。
- シングルスは準々決勝で鄭怡静選手に苦しめられながらも勝利し、準決勝で王芸迪選手との激闘を制して決勝に進出しましたが、またしても孫穎莎選手に力の差を見せつけられて準優勝(銀メダル)でした。それでも王芸迪選手を倒しての準優勝は素晴らしいです。
- アジア競技大会のシングルスで日本人選手が決勝に進出したのは29年ぶりだったそうです。
- シングルスで準優勝したので、WRポイントを350、選考ポイントを60獲得しました。11月に昨年のアジアカップで獲得した175ポイントが失効しましたが、それと入れ替わりで(大陸別大会の)350ポイントを獲得できたのは非常に大きかったです。
- はりひなペアの混合ダブルスは準々決勝で林高遠/王芸迪の中国ペアに敗れてベスト8でした。完敗でした。
- 早田ひな選手の選考ポイントは700を超えました。2位の平野美宇選手との差は270.5ポイントに広がりました。
WTTスターコンテンダー蘭州2023(10月2日から8日)
蘭州の標高は1,500mもあります。その影響を克服できずに本来のパフォーマンスを発揮できない選手も散見されました。
- シングルスはR32で劉煒珊選手に負けてしまい、ベスト32という悔しい結果でした。最後まで劉煒珊選手のボールに対応できず、今後に向けて大きな課題を残しました。
- 混合ダブルスはペアの調子が万全でない中、決勝で中国若手ペアに惜敗したものの、絶対に負けたくない韓国最強ペアに準決勝で勝ち切ったことで、最低限の目標はクリアできました。
アジア競技大会とWTTスターコンテンダー蘭州を振り返って
早田ひな選手は蘭州から(次の大会の)オマーンへの移動途中で、インスタグラムストリーズに想いを投稿しました。次はその要約です。一部補足情報を追加しています。
- アジア競技大会は各選手のコーチ陣がいつものようにサポートできないため、団体戦もシングルスの時も、いつもはライバルである4人の選手が練習相手になってくれたり球拾いしてくれたり、最後の最後まで応援してくれたり、本当にみんなに助けられた、忘れられない大会になりました。
- 蘭州大会は調整しきれず、特にシングルスは反省が必要な大会になってしまいました。日程のことは分かっていて、自分自身で出る覚悟を決めて臨んだので、結果は全て自分の実力です。
- この経験が自分をまた一回り強くしてくれる、成長させてくれると感じた大会でした。
- やるべきことがたくさんあるし、これからも何度もするだろう苦しい経験から都度学んでパリまでにより分厚い人間になれるよう頑張っていきたいです。
- オマーン、トルコ、フランクフルトと大会が続きますが、自分を見失わないよう、今回の過ちを繰り返さないよう頑張りたいと思います。
- そしていつもの感謝の気持ち。
早田ひな選手、最高です。
WTTコンテンダーマスカット2023(10月8日から14日)
- 厳しい出場制限をかいくぐって、中国人選手がひとりもいない今大会にエントリーし、R16敗退の危機を乗り越えてから復調して優勝しました。
- WTTシリーズのシングルス優勝は、WTTコンテンダーリオデジャネイロ2023に続いて今季2度目でした。
- エントリー的に優勝を狙える大会が少ない中、そのチャンスをものにできたことの意味は大きかったです。特にR16までは不調で、梁夏銀選手に負ける寸前だったのを耐えて勝ちをもぎ取り、翌日から復調して決勝戦では本来の状態まで戻して戦えたことは、大きな収穫になったはずです。
- 最近ポイント失効により世界ランキングが下落傾向でしたが、この優勝でWRポイントを400獲得したことで、8位から6位に上昇しました。
- 混合ダブルスはベスト8でした。パリオリンピックを見据えるとペアの世界ランキング2位を死守したいのですが、韓国最強ペアに猛追されていました。今大会は申裕斌選手が怪我で棄権したことから、優勝してリードを広げたいところでしたが、はりひなペアが不調でベスト8に終わりました。
WTTコンテンダーアンタルヤ2023(10月16日から22日)
- シングルスはスターシニー選手、長﨑美柚選手を倒したオラワン選手、張本美和選手、ハン・イン選手に勝利して優勝しました。WTTシリーズのシングルス優勝は2週連続、今季3度目でした。
- 中国人選手がエントリーをキャンセルしたこと優勝しやすくなった大会で、そのチャンスをものにできたことの意味は大きいです。決して楽勝だったわけではなく、第1ゲームを落とした試合では高い修正能力を見せ、早田ひな選手が確実に強くなっていることを実感できました。
- この優勝でWRポイントを400獲得したことで、5位に上昇しました。
- 混合ダブルスではりひなペアは苦しい試合を勝ち抜いて優勝し、WRポイント400を獲得しました。オリンピックの第2シード確保のため、張本智和選手は混合ダブルスのためだけに今大会にエントリーしました。
WTTチャンピオンズフランクフルト2023(10月29日から11月5日)
- 準々決勝で、陳夢選手を倒して勝ち上がってきたセーチ選手にフルゲームで勝利して準決勝に進みましたが、王曼昱選手に実力差を見せつけられる形で完敗し、結果ベスト4でした。
- チャンピオンズでベスト4に入ったことでWRポイントを350獲得しました。
- セーチ選手のトマホークサーブの対策をしっかりしないとダメだと分かりました。
- 王曼昱選手にサーブが効かなかったのはショックが大きいですが、それが分かっただけでも対戦できて良かったと言えます。
- 王曼昱選手の球質は孫穎莎選手、陳夢選手、王芸迪選手とも違うものだったのでしょう。王曼昱選手と互角の勝負ができるようになりたいですね。それがこの時期に分かったことは、中国人選手がいないコンテンダーで優勝するよりも大きな収穫になったはずです。
第6回パリオリンピック選考会(11月25日、26日)
ポイント差が十分大きくなれば、第6回選考会には出場しないで調整期間にしたいとも話していましたが、早田ひな選手は出場を選択しました。そして順当に決勝まで進みますが、絶好調の張本美和選手に敗れて準優勝でした。
第6回選考会で得たもの
石田コーチ、早田ひな選手のインスグラムストリーズからは、次のことが読み取れました。あくまで僕の印象です。
- 選考レースを戦い抜き、パリオリンピックのシングルス出場権獲得を確実にできて良かった。でも目標はその先にある。
- 今大会も進化のために多くのことにチャレンジした。これからも続ける。
- 現状のままではダメで、夢(パリオリンピックで中国人選手を倒して金メダル)を叶えるためには殻を破らないといけない。今それに取り組んでいる最中。
混合団体ワールドカップ2023(12月4日から10日)
WTTシリーズが開催されるようになって以降、ワールドカップは開催されていませんでした。そこへ突然男女混合の新フォーマットで団体戦のワールドカップを開催すると発表されました。開催経緯に問題があったものの、大会は大盛況でした。
- 日本は韓国、中国に敗れて3位(銅メダル)でした。韓国はフルメンバーで大会に臨んできたし、ダブルスが強かったです。
- 混合団体ワールドカップで中国と優勝を争うためには、ダブルスで互角に戦える選手を揃える必要があります。選手選考はそれを踏まえたものにしないといけないですけどね。
- 混合団体ワールドカップの新フォーマットは好意的に受け入れられた印象です。
- チームによっては、特定の選手が偏って起用される傾向がありました。日本はその典型でした。来年以降は選手起用が偏りすぎないように制約が追加されるかも知れません。
WTT女子ファイナルズ名古屋2023(12月15日から17日)
- 初戦で陳夢選手と当たり、2-1と先行したものの逆転され、惜しくも2-3で負けてしまいました。
- 結果ベスト8で獲得したWRポイントは100でした。中国四天王が揃っている大会で、ベスト4に入って大きなWRポイントを獲得するのは非常に難しいです。それは、世界ランク4位までと5位以下のポイント差に表れています。
- 試合後のインタビューで涙を浮かべていましたが、その悔しさと試合中に気付いた学びを糧に、さらに強くなって欲しいです。これまでそうしてきたように。
2023年の試合を終えて
- 2023年最後の試合はTリーグのトップ名古屋戦で、VMで横井咲桜選手に惜しくも負けてしまいました。この敗戦を糧にまた大きく成長できるはずです。
- 2023年は全日本選手権大会で3冠達成、世界卓球ダーバン大会で王芸迪選手との卓球史に残る激闘を制して銅メダル獲得、アジア競技大会で王芸迪選手を倒して銀メダル獲得、パリオリンピック選考会第4回から第6回は優勝、優勝、準優勝としっかり結果を残せました。
- 一方で早いラウンドであっさり負けてしまった大会、優勝したものの仕上がりが悪くて早期敗退の危機にあった大会もあり、課題も多く見つかった年でした。
- 第6回選考会の前に、事実上1位通過でシングルス代表権獲得を確定させられており、余裕を持って練習に取り組めて良かったです。
2024年
WTTスターコンテンダードーハ2024(1月8日から13日)
- シングルスは準々決勝で孫穎莎選手に敗れてベスト8でした。孫穎莎選手に負けはしたものの、これまでで一番良いプレーがたくさん出せた試合だっと思います。え、こんなプレーこれまでの対戦で出してなかったよね、というのがいくつもありました。そうしてフルゲームを戦えたことは大きな収穫になったはずです。
- 混合ダブルスははりひなペアの課題が出る形でフランスペアに惜敗し、ベスト8でした。これからパリオリンピックに向けてシード権争いが激しくなります。
2024年全日本選手権大会(1月22日から28日)
- シングルスのみに出場し、昨年に続いて優勝して2連覇を達成しました。決勝で対戦したのは、第6回選考会の決勝で負けていた張本美和選手でした。
- また注目されていたパリオリンピックシングルス2枠目を獲得したのは平野美宇選手でした。
- 早田ひな選手はぶっちぎりの1位で選考レースを終えました。910.5ポイントは約2年に及んだ選考レースを、怪我による離脱をも乗り越えながら、安定した成績をキープできた結果です。そしてそれは努力が結果につながらない時代も、諦めないでコツコツと努力を継続してきた成果です。
選考レース結果
パリオリンピック選考レース終了後の、選考ポイント合計8位までです。早田ひな選手はぶっちぎりの1位です。
積み上げグラフで見ると良く分かります。早田選手は安定してポイントを積み増すことができました。
選考ポイント付与対象となった大会の結果一覧
国内選考会(全部で10回)は優勝6回、準優勝2回、3位2回でした。
さらに選考ポイント付与対象の国際大会でも大きなポイントを獲得しました。
シングルス1枠目は早田ひな選手
怪我による戦線離脱や予期せぬ体調不良を乗り越え、約2年間に及ぶ選考レース期間を戦い抜き、誰よりも安定した成績を残してぶっちぎりの1位通過でパリオリンピックシングルスの出場権を獲得しました。
シングルス2枠目は平野美宇選手
2024年全日本選手権大会を迎えた時点で、女子のシングルス2枠目を獲得できる可能性があったのは、平野美宇選手と伊藤美誠選手の2名だけでした。他の選手はポイント的に可能性がありませんでした。二人のポイント差はわずか34.5で、伊藤美誠選手が平野美宇選手より2回戦勝ち進むと逆点で伊藤美誠選手が2位通過するきわどい状況でした。
結果、平野美宇選手はR16で大藤沙月選手にストレートで勝利して準々決勝に進出しましたが、伊藤美誠選手はR16で木村香純選手にフルゲームで負けてしまい、この時点でパリオリンピックシングルス2枠目は平野美宇選手に決まりました。平野美宇選手と伊藤美誠選手のポイント差は64.5でした。
団体戦要員
張本美和選手が選出されました。選考理由について問われた渡辺監督は、次のように説明しています。
女子代表の渡辺武弘監督は、3枠目の選考理由について「選考基準でうたっているように、ダブルスが組めて、シングルスもダブルスも活躍できるということでふさわしいと選考した」と説明。「海外と戦うので、昨年1年間国際大会を一緒に帯同して、戦いぶりや上位選手との成績を総合的に見ながら、今回は張本美和選手が一番ふさわしいと思って選出した」と話した。
また、伊藤との比較について「本当に選考は悩んで、悩んだ」と難しい選考だったことを明かした。その上で、張本美の国際大会での結果や戦いぶりに加え「ダブルスも非常に上手で、アジア大会では木原選手とペアを組んで、中国の孫穎莎、王曼ユペアにも買った。混合ダブルスでも戸上選手と組んで中国選手に勝ったり。トータルな見方をしたときに、わずかだが、張本選手を選考させていただいた」と述べた。
引用:張本美和は「卓球界の逸材」伊藤美誠は「卓球界の宝」 女子代表監督が「悩んで悩んだ」選考事情明かす パリ五輪代表発表
混合ダブルスペア
張本智和選手・早田ひな選手の「はりひなペア」が選出されました。シードの関わるペアの世界ランクが2位で、他のペアの可能性はゼロでした。
オリンピック本番まで、現在の世界ランクを維持する厳しい戦いが続きます。
パリオリンピック代表候補予定選手発表後
早田ひな選手のコメント
石田大輔コーチのコメント
早田ひな選手のコメントは前記のものですが、石田大輔コーチのコメントが充実している記事です。やはりこの二人の組み合わせが生まれるのは100年に1度あるかないか、だと思います。
選考レースを振り返って
Tリーグプレーファイナルで優勝後のインタビューで、2年間の選考レースを振り返って次のように話しています。
「この2年間の選考過程では試合数がめちゃくちゃ多い。前半は1回優勝してもポイントにもならない。優勝しても次に切り替えないと置いていかれるのがこの2年間。それが自分を強くした。過密日程で体調不良になったり、世界ランクを上げないといけないところで上げられないこともあった。
メリット、デメリットがあるけど、自分にとってこの2年間は試合が多いことで試す場所がより多くなったことはよかった。あとは日本全体のレベルが高いこと。自分が優勝してもウカウカできない。でも、負けた時は受け入れないと前に進めない。今日は平野選手に勝てたけど、次は負けるかもしれない。勝負はそういう世界。それを受け入れてどれだけ次に頑張れるかだと思う」
これからも応援します。