早田ひな選手はシングルスのみに出場し、昨年に続いて優勝して2連覇を達成しました。決勝で対戦したのは、第6回パリオリンピック選考会の決勝で負けていた張本美和選手でした。
また注目されていたパリオリンピックシングルス2枠目を獲得したのは平野美宇選手でした。
*アイキャッチ画像は日本卓球協会公式サイトからの引用です。
大会概要
- 期間:2024年1月22日から28日
- 場所:東京体育館
- 出場種目:シングルスのみ
- 参照:日本卓球協会公式サイト
順位に応じてパリ五輪選考ポイントが付与されます。
パリオリンピック選考会と違って順位決定戦がありません。
今大会に臨むにあたって
早田ひな選手は今大会前に、パリオリンピックのシングルス代表を1位通過で確定させていました。そのため今大会で目指すのは2023年大会に続く優勝(連覇)だったと思われます。
シングルスにしか出場しない理由
- ダブルスに出場するならみまひなペアが順当になりますが、結果的に双方が出場しないことを選択したのでしょう。伊藤美誠選手は記者会見でシングルスに集中したかったという主旨の発言をしていました。
- 混合ダブルスに出場するならはりひなペア以外考えられませんが、張本智和選手はダブルスにも出場します。今大会は日程的に3種目に出場して決勝戦まで進むのは自殺行為なので、混合ダブルスを回避したのではないでしょうか。
今大会はシングルスのみの出場としたのは適切な判断だったと思いましたが、大会終了後の記者会見で早田ひな選手は、3種目出てもいいと思っていた、という主旨の発言をしていました。
大会日程の比較
これは一般の部の大会日程を比較したものです。早田ひな選手は2023年大会で17試合を勝ち抜いて3冠を達成しました。
3種目に出場した場合、2023年は1日に最大4試合だったのが、2024年は木曜日が5試合、土曜日は6試合と殺人的日程になっています。
2025年、26年大会はシングルスとダブルスを分離開催
ダブルス競技にも出場する選手から過密日程について批判が多かったようで、日本卓球協会は2025年、26年大会はシングルスとダブルスを分離開催すると発表しています。シングルスを東京体育館で開催し、3日空けてダブルス競技を愛知県で開催するそうです。
分離開催は妥当な試みだと思います。2027年大会から正式採用となって欲しいです。
ネット中継・放送
- 昨年に続き、全テーブル・全試合がもれなく卓球TVでネット中継されました。ありがたいです。見逃し配信(アーカイブが公開)も迅速でした。
- 女子シングルス準々決勝、男女シングルス準決勝がNHK BSで中継されました。
- 混合ダブルス決勝、男女ダブルス決勝がNHK教育で中継されました。
- 男女シングルス決勝がNHK総合で中継されました。
- ハイライト動画(日本卓球協会提供)がsportsnaviで公開されました。卓球TVにはないものです。
大会開催前
見どころ解説記事
注目は女子のパリオリンピック選考2位争い
パリオリンピックのシングルス代表1枠目は早田ひな選手が獲得済みです。2枠目の可能性を残しているのは平野美宇選手と伊藤美誠選手の二人だけです。二人のポイント差はわずか34.5しかありません。
平野美宇選手と伊藤美誠選手は反対の山なので、決勝まで対戦はありませんが、平野美宇選手が決勝まで進むとたとえ伊藤美誠選手に負けても2位が確定します。
平野美宇選手、伊藤美誠選手共に難敵・強敵との対戦が続きます。R64から激アツです。
出場前の記者会見
水曜日の記者会見で次のように発言したようです。
「前より緊張を感じているが、自分一人で乗り越えられないとオリンピックは戦い抜けない。自分にとって試練だとすごく思っている。その重圧を跳ね除け、重圧すら楽しみたい」
「どの選手も思い切って試合をしてくる。自分を信じて最後までできるか。そういったところを楽しみながら頑張っていきたい」
遅れて公開された記者会見の様子。9分間。必見です。
シングルス:優勝
2023年全日本選手権大会に続く2年連続3回目の優勝を飾りました。
スーパーシード選手が登場するベスト64のドロー(テレビ東京卓球情報局のXポストから引用)で、早田ひな選手は長﨑美柚選手がいる1/4の山に入りました。平野美宇選手は準決勝で当たる隣の山に、伊藤美誠選手、木原美悠選手、張本美和選手は決勝まで当たらない反対の山に入りました。
早田ひな選手は長﨑美柚選手、赤江夏星選手、張本美和選手に勝利して、今大会の目標だった連覇を達成しました。早田ひな選手、強かったです。
表彰式。
優勝者セルフィー、日本卓球協会のXポストから引用。
ベスト64の結果(テレビ東京卓球情報局のXポストから引用)。
Round 64(4回戦)
竹前裕美子選手との対戦でした。実業団に所属している右シェーク裏裏ドライブ型です。
しっかり勝つことができました。試合終了後に選手・コーチと会話していたのが印象的でした。
フル動画。1:11:00あたりから。
Round 32(5回戦)
原芽衣選手との対戦でした。四天王寺高校の19歳、右シェーク異質攻撃型です。
早田ひな選手は仕上がりが良く、快勝でした。
フル動画。3:06:30あたりから。
Round 16(6回戦)
芝田沙季選手との対戦でした。いつも接戦になる強敵です。
危なかったです。負けていてもおかしくない試合でした。
- 第1ゲーム、6-6まで競りますがそこから流れをつかんで11-7でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、芝田選手に攻め込まれ、リードを許す展開になります。3-9から6-9まで追い上げますが、11-6と押し切られてしまいます。
- 第3ゲーム、芝田選手の強打を防ぎ切れずリードを許す苦しい展開が続きます。3-8と大量リードされますが、5連続得点で追い付きます。10-9と先にゲームポイントを握りますが決めきれず、デュースに持ち込まれます。サーブ権を持っている方が得点する、心臓に悪い展開が続きますが、最後激しい打ち合いを制して15-13で取ります。このゲームを逆点で取れたのは大きかったです。
- 第4ゲーム、接戦で点差が開かない展開が続きます。やや早田選手にミスが目立ちます。7-9からのラリー戦2本を制して9-9と追い付き、10-9とゲームポイントを握って絶叫します。レシーブのフォアフリックをネットミスしてデュースになりますが、しっかり攻めて15-13でこのゲームも取り、ゲームカウントを3-1とします。
- 第5ゲーム、この試合で得点する方法を見出したのか、攻撃の組み立てが良くなった早田選手がリードする展開になります。最後は意表を突くYGサーブからの3球目を倒れ込みながらフォアハンドで撃ち抜き、11-5でこの試合をものにしました。
芝田沙季選手、強かったです。勝ててよかったです。
またこの試合、石田コーチの咆哮が何度もコートに響いていました。それが必然となるほどの接戦でした。
フル動画。5:10:00あたりから。
ハイライト。
準々決勝
長﨑美柚選手との対戦でした。2022年全日本選手権大会の準々決勝の再戦となりました。
早田ひな選手は仕上がりが良く、精度の高いプレーで長﨑美柚選手の流れにさせませんでした。
- 第1ゲーム、実力拮抗で8-8で競りますが、そこから練習の成果が出たプレーで9-8とし、最後サーブ3球目を打点の高いフォアハンドで決めて11-8でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、序盤早田選手が4点リードしたものの7-6と追い上げられます。そこからミスの少ないプレーで引き離し、11-7でこのゲームも取ります。早田選手、安定しています。
- 第3ゲーム、早田選手がリードを保つ展開が続きますが、8-7と追い上げられます。そこから精度の高いプレーで10-7とし、最後長﨑選手のチキータレシーブを身体を折り畳みながらフォアハンドドライブで撃ち抜き、11-8でこのゲームも取ってゲームカウントを3-0とします。
- 第4ゲーム、6-5まで競りますがそこから流れをつかんで引き離します。最後YGサーブからの3球目を回り込みフォアハンドドライブで撃ち込んで11-6で勝ち切り、6年連続の準決勝進出を決めました。
早田ひな選手、安定していました。この試合では特に攻撃的なレシーブが良かったです。
また、この試合の第4ゲームでYGサーブを3本出しました。昨年末のTリーグで久しぶりに披露して以来、少しずつ実戦での使用を増やしているようですね。
フル動画。0:05:30あたりから。
ハイライト。
試合結果を伝える記事。
準決勝
赤江夏星選手との対戦でした。右シェーク裏裏ドライブ型です。デンソー所属ですが、Tリーグは日本生命レッドエルフに参加しています。Tリーグで早田ひな選手とダブルスを組んだこともあります。
今大会、準々決勝で平野美宇選手とのフルゲームの激戦を制して勝ち上がってきました。
第1ゲームは接戦でしたが第2ゲーム以降流れを渡さず快勝でした。
- 第1ゲーム、接戦で点差が開かない展開が続きます。10-8でゲームポイントを握り、11-9でこのゲームを取ります。このゲームは赤江選手のボール、調子を見ながらのプレーだったようです。
- 第2ゲーム、5-4までは競りますがそこから流れをつかんで引き離し、11-5でこのゲームも取ります。明らかにギアを上げてきました。
- 第3ゲーム、精度の高いプレーで7-0と大量リードします。9-6と追い上げられたところではサイドを切るサービスエースでゲームポイントを握り、そのまま11-6で取り、ゲームカウントを3-0にします。
- 第4ゲーム、安定した隙のないプレーでリードする展開になります。両ハンドの精度が高いです。10-3からYGサーブを出しますがミスになります。まだ実戦での使用歴が浅いのですが、使わないとモノにできません。最後は前陣からフォアハンドドライブをストレートに撃ち込んで11-4で勝ち切り、決勝進出を決めました。
赤江夏星選手の勢いをしっかり鎮めることができた試合でした。
フル動画。0:06:00あたりから。
ハイライト。
試合結果を伝える記事。
準決勝前の練習の様子。
#早田ひな 準決勝前練習🔥🔥
🏓天皇杯・皇后杯
2024年全日本卓球選手権大会(一般・ジュニアの部)⏰10:30〜
女子準決勝
早田ひな 🆚 #赤江夏星全台ライブ配信中📱💻#卓球TVhttps://t.co/WfChyJxcGF
特設ページ👇https://t.co/6RCAOjoGBF#全日本卓球 2024 #東京体育館 pic.twitter.com/ZwJSJFGb6V
— 日本卓球協会 (@jtta_official) January 28, 2024
張本美和選手との決勝戦について聞かれて。
Q.この後は決勝です。2連覇を目指すうえで何を意識しますか
早田:2連覇をしたいのも、もちろんあるんですけど。張本選手には11月の選考会で負けているので、私としてはこの決勝という舞台を、オリンピックという舞台に切り替えて、本当に緊張感だったりとか、その舞台を精いっぱい楽しみたいと思います。
決勝
張本美和選手との対戦でした。第6回パリオリンピック選考会の決勝では2-4で負けています。
第1、第2ゲームの接戦を制して流れをつかみ、ストレート勝利でした。
- 第1ゲーム、5-5まで競りますが、そこから早田選手にミスが出て張本選手に攻め込まれ、5-9と大量リードされます。ここから精度の高い、攻撃的なプレーで9-9と追い付きます。最後サーブ2本をハイトスサービスに切り替えて連続サービスエースして11-9でこのゲームを取ります。この2本、しっかり吠えます。このゲームを逆点で取れたのは大きかったです。
- 第2ゲーム、早田選手がリードを保つ展開になり9-6とします。決勝戦にふさわしい、レベルの高いプレーの応酬が続きます。張本選手が追い上げて10-9になりますが、最後激しい打ち合いのラリー戦がエッジになって11-9でこのゲームも取ります。張本選手にはアンラッキーな終わり方でした。
- 第3ゲーム、サーブが効き、速いラリー戦でも負けず、早田選手がリードする展開になります。張本選手の得意なパターンにさせずに11-6でこのゲームも取って、ゲームカウントを3-0にします。
- 第4ゲーム、張本選手のプレーも質が高いものの、それを上回る早田選手がリードする展開になります。早田選手はラリーコントロールも安定していますし、凡ミスがありません。それでも8-7まで追い上げられますが、チキータレシーブをミドルに撃ち込んで吠え、最後チキータされたサーブ3球目を狙いすましたバックハンドでカウンターして11-7で勝ち切り、両手を突き上げました。実況の山﨑アナウンサー「両手を高く掲げてこの笑顔です」。
前回対戦時とは違うマインド、違う戦術で臨み、負けてから練習したことをたくさん出して、張本美和選手を上回った結果だと思います。別人のようなゲームメイクでした。
フル動画。0:08:00あたりから。優勝インタビューは0:47:50あたりから。必見です。
ハイライト。
早田ひな選手の優勝を伝える記事。
これは内容の濃い記事。
張本美和選手へのインタビュー記事。
優勝後の記者会見を伝える記事。
優勝後の記者会見で、決勝戦での勝因を聞かれての回答。
決勝の勝因は?
前回張本選手に対策された部分をさらにこちらが対策しました。
今回、ラリーになったときにタイミングをずらすことをお互いやっていて、強打に繋げることができなかったんですけど、我慢して我慢して、相手が難しいところや逆を突いたりと選択が良かったと思います。
優勝を決めた瞬間のガッツポーズ(テレビ東京特設サイトのギャラリー)。
優勝会見①、8分間。
女子シングルス#早田ひな 優勝会見①🏆
「11月の選考会で負けていたので、楽しんでチャレンジャーな気持ちで頑張ろうと思いました」
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— 日本卓球協会 (@jtta_official) January 29, 2024
優勝会見②、7分間。
女子シングルス#早田ひな 優勝会見②🏆
「(中国選手には)守備からの攻撃に持っていく連携が大事になってくる」
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— 日本卓球協会 (@jtta_official) January 29, 2024
パリオリンピックシングルス2枠目は平野美宇選手
平野美宇選手はR16で大藤沙月選手にストレートで勝利して準々決勝に進出しましたが、伊藤美誠選手はR16で木村香純選手にフルゲームで負けてしまい、この時点でパリオリンピックシングルス2枠目は平野美宇選手に決まりました。平野美宇選手が準々決勝で敗退しても他の選手が選考ポイントを逆点するのは不可能だからです。
五輪切符決定直後の言葉。
五輪切符が決まった後は「少し自分の勝った試合が終わった後に決まったので。まだ実感はわいていないけど、決まったことは事実なので。まずは凄くうれしいし、ここまで来るには家族や中沢監督、ちゃんコーチ、チームのみんながいないと来られなかった。感謝の気持ちでいっぱいです」と感慨に浸った。
五輪切符決定後の記者会見。
大会終了後
早田ひな選手からのメッセージ。
早田ひな選手のXポスト。
全日本選手権女子シングルスで優勝することが出来ました🥇🏆
本番はここからです。パリオリンピックに向けてあと半年、負けない卓球+勝つ卓球に磨きをかけていきたいと思います!!
引き続き応援よろしくお願いいたします🐥⸒⸒
後悔しない選択を。 pic.twitter.com/nmgM89qLq8— 早田ひな (@hayata_hina) January 28, 2024
石田コーチのインスタグラム。
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早田ひな選手のインスタグラム。
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大会終了数日後の石田コーチのインスタグラム。
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石田コーチと早田ひな選手へのインタビュー記事。
まとめ
早田ひな選手は今大会前にパリオリンピックのシングルス出場権を確定させていたので、目標は「連覇」でしかなかったはずです。が、優勝後の記者会見では、優勝して120ポイント加算してぶっちぎりでパリに行けることにも価値を認めていました。そりゃそうですよね。
特に昨年11月の第6回パリオリンピック選考会の決勝戦で、試合へのモチベーションは異なってはいたものの、張本美和選手に負けていただけに、今大会でリベンジして優勝できたのは大きな自信につながったことでしょう。
次は今大会終了時点(=パリオリンピック選考レース終了時点)の選考ポイント合計上位8名です。
早田ひな選手はぶっちぎりの1位で選考レースを終えました。910.5ポイントは約2年に及んだ選考レースを、怪我による離脱をも乗り越えながら、安定した成績をキープできた結果です。そしてそれは努力が結果につながらない時代も、諦めないでコツコツと努力を継続してきた成果です。
また、張本美和選手は4位まで順位を上げました。実力的には国内で3位位内だと思いますし、伸びしろを考えると期待しかない選手です。
おまけ
平野美宇選手、伊藤美誠選手のパリオリンピックシングルス代表権を賭けた戦いについて、早田ひな選手の想いに触れた記事。
テレビ東京特設サイトのギャラリー。撮影はItaru Chibaさん。
早田ひな選手、以前とは違う戦い方をしていました。
技術的には、以前より少し前陣でプレーしている気がしました。以前は台から距離少し距離を取って動いて、よく回り込んでいましたが、今は前陣で両ハンドでのプレーが中心になってきています。技術的には小さいスイングで威力を出す工夫をしていると感じます。プレーも全体的に早くなりました。