パリオリンピック出場選手の選考には、世界ランキングではなくて日本独自の選考ポイントが使われます。これまでにパリオリンピック選考会が3回、小型版パリオリンピック選考会とも言える、TリーグNOJIMA CUP 2022が開催済みです。また、2023全日本選手権大会も選考ポイント付与対象でした。
第4回パリオリンピック選考会からは選考ポイントが従来の倍になるため、さらに厳しい戦いが続きます。その第4回目の選考会で早田ひな選手は「死のブロック」を勝ち上がって優勝しました。
*アイキャッチ画像はテレビ東京卓球情報のツイートからの引用です。
大会概要
- 期間:2023年5月6日、7日
- 場所:トッケイセキュリティ平塚総合体育館
- 種目:シングルスのみ
- 試合方法:選考資格を得た32名によるトーナメント
- 順位決定戦:8位まであり
- 試合形式:7ゲームマッチ
- 参照:日本卓球協会の公式ページ
順位に応じてパリ五輪選考ポイントが付与されます。今大会から倍です。
ネット中継・放送
ネット中継は、第1回、第2回パリオリンピック選考会と同じテレビ東京が担当しました。テレビ東京卓球チャンネルのYoutube配信です。従来同様、2本のストリーミングによる生中継+全テーブル全試合のアーカイブ動画という構成です。が、残念ながら男子決勝戦だけは生中継がなく、配信民に不評でした。
総じて動画(フル、ハイライト、インタビューなど)のアップは迅速で、テレビ東京卓球チャンネルには感謝しかありません。
また女子の準決勝戦がBSテレ東で、決勝戦がテレビ東京系列で生中継されました。男子の決勝戦は女子の決勝戦の前に録画+編集で放送されました。
ドロー
ドローは大会前日に会場にて公開(ネット中継)で行われました。
第3回大会の結果でシードされました。トップシード8名は色を塗ってあります。また、前回の対戦で負けた選手とは反対の山に入るルールが適用されています。
なお、石川佳純選手が現役引退で棄権、加藤美優選手も棄権(理由不明)でした。
前回大会で8位まで順位決定していること、前回の対戦で負けた選手とは反対の山に入ることから、ドロー運の作用は小さいかと思いきや、そうではありませんでした。その理由のひとつに、何故か今大会はシード5位から8位がドロー+反対の山ルールに変わったことがあります。
結果、左上と右下の山が激戦区になりました。早田選手が入った右下の山は「死のブロック」と呼ばれました。
女子の見どころを解説した記事。
みんスポからの公式動画、早田ひな選手と伊藤美誠選手がドローについてコメント。
大会終了後に書かれた、今大会のドローの課題を指摘した記事。
試合結果
早田ひな選手はR16敗退の危機(マッチポイント8回)をしのいで勝ち上がり、決勝で張本美和選手に勝って優勝しました。
パリオリンピック選考会での優勝は第1回以来となる2回目です。
Round 32(1回戦)
髙森愛央選手(ミキハウスJSC)との対戦でした。
- 第1ゲーム、流れをつかんで9-2と大量リードします。その後ミスが出ますが、11-5で取ります。
- 第2ゲーム、早田選手のプレーの精度がいつも通りではないこと、髙森選手が粘り強く返球してくることから接戦になります。10-8とゲームポイントを握ったもののデュースに持ち込まれます。それでも13-11でこのゲームも取ります。
- 第3ゲーム、何かやりぬくいところがあるのか、リードを広げることができず、7-7まで競ります。そこから早田選手らしいプレーを続けて11-7で取り、ゲームカウントを3-0とします。
- 第4ゲーム、第3ゲームに似た展開で7-7まで競ります。そこから精度の高いプレーを続けて11-7で勝ち切りました。
実は2回戦(R16)終了後に明かされたのですが、この試合の第2ゲームまでは吐き気があったそうです。
フル動画。
フル動画、別アングル。
ハイライト。
1回戦の結果を伝える記事。
Round 16(2回戦)
横井咲桜選手との対戦でした。横井選手は今年の全日本選手権でベスト4でした。
横井選手が強くてフルゲーム・デュースの死闘になりました。
- 第1ゲーム、早田選手がリードを保つ展開になり、11-6で取ります。が、何かやりにくそうな感じです。
- 第2ゲーム、接戦になり5-5まで競りますが、その後リードを広げられ7-11で落としてしまいます。早田選手、オーバーミスと強打でのミスが多いのが気になります。横井選手は甘いボールを躊躇なく強打してきます。
- 第3ゲーム、調子が上がらない状態で9-9まで競ります。そこから何とか11-9で取ります。明らかに苦戦しています。
- 第4ゲーム、プレーが安定せず、ずるずると失点を重ねてしまい、5-11で落とします。ゲームカウントは2-2になります。選考会でこんなにミスが多い早田選手は久しぶりです。
- 第5ゲーム、接戦で6-6まで競りますが、ラリー戦の勝率が上がって11-7で取り返します。
- 第6ゲーム、接戦で5-5まで競ったものの、早田選手のミスが増えて5-11で落としてしまいます。
- 最終第7ゲーム、ややプレーに精度を欠き、横井選手にリードを許す苦しい展開になります。横井選手の強打に押される形で7-10とマッチポイントを握られます。そこからフォアハンドドライブ2本とサービスエースでデュースに持ち込みます。そこからマッチポイントを5回しのぎ、初めてつかんだマッチポイントをものにしました。
R16で負けると選考ポイントは20で、優勝者の100とは80も差が付いてしまいます。最終ゲーム7-10からの展開では寿命が縮みました。この試合に勝つのと負けるのでは天と地ほどの差があったわけですが、本当に勝てて良かったです。
この試合、ベンチにいる石田コーチも一緒に戦っていることが良く理解できました。僕はこの試合のことを生涯忘れないはずです。
フル動画。
ハイライト。別アングル、最終ゲーム5-8からの死闘。
勝利の瞬間に早田選手と石田コーチが爆発させた歓喜。これはハイライト動画から。次はテレビ東京卓球情報からのツイートから。
早田ひなが大接戦を制する!!!
コーチと一緒に喜び爆発🙌🔥🤝💥🏓第4回パリ五輪 #日本代表選考会
<女子2回戦>#早田ひな 4-3 #横井咲桜
11-6/7-11/11-9/5-11/11-7/5-11/17-15大会情報・ライブ配信👉https://t.co/8B8enbeg0f pic.twitter.com/NvdjHYFktQ
— テレビ東京卓球情報 (@tvtokyo_tt) May 6, 2023
2回戦の結果を伝える記事。
次はインタビュー記事から。
「横井さんは警戒をしていたけど、完璧な状態で試合に入れなくて相手は好調でいつもの感覚とずれていた。2−2の7−10くらいから感覚をつかめた。この感覚だったら最後は捉えきれると思ったし、最後に勝負をかけられた。(マッチポイントを取られて)周りが盛り上がってきたと客観的に見ることができた」
引用:卓球王国の記事
準々決勝の結果についても触れていますが、この試合中の心境が書かれています。
準々決勝
長﨑美柚選手との対戦でした。長﨑選手はR16で伊藤美誠選手をマッチカウント4-2で倒しています。
- 第1ゲーム、長﨑選手は明らかに好調で、5-5まで競ります。そこから精度の高いプレーでリードを広げ、11-6で取ります。R16の時より伸び伸びとプレーしているように見えました。
- 第2ゲーム、長﨑選手は早田選手との戦い方を熟知しているようで、長﨑選手がリードする展開になります。レベル高いです。両者譲らず10-10まで競りますが、最後早田選手がレシーブミスを続けて10-12でこのゲームを落とします。
- 第3ゲーム、早田選手がリードする展開になり、11-7でゲームを取り返します。
- 第4ゲーム、実力拮抗で競った展開になります。この試合、バック対バックのラリー戦が多いのですが、それで多く得点した早田選手が11-7でこのゲームも取り、ゲームカウントを3-1とします。
- 第5ゲーム、長﨑選手の積極的な両ハンド攻撃が決まる回数が増え、リードを広げられます。3-9とされても早田選手は笑顔で、R16の時とは別人のようです。このゲームは挽回できず、4-11で落としてしまい、ゲームカウントは3-2に。
- 第6ゲーム、フルゲームにはさせたくないところ、早田選手がリードする展開になります。両者、どうやったら得点できるか工夫しながら戦っている様子でした。レベルの高いプレーの応酬が続く中、8-7まで競ります。そこから早田選手らしいプレーで11-7で勝ち切り、ベスト4進出を決めました。
早田選手はゲーム間は椅子に座って体力を温存していました。横井選手とのフルゲーム・デュースの死闘から1時間経っていないので、当然の選択ですね。
フル動画。
フル動画、別アングル。
ハイライト。
この試合のスーパープレー。
準々決勝終了後のインタビュー。
試合結果を伝える記事。「伊藤や横井咲桜(ミキハウス)など、強豪がひしめく死のブロックを早田がついに抜けた。」
石川選手への思いも。
体調は万全ではなかったとのこと。
卓球ジャパン!から準々決勝の解説。
準決勝
日本生命レッドエルフでチームメイトの森さくら選手との対戦でした。
- 第1ゲーム、プレーが安定している早田選手に対し、森選手がミスを連発し、11-2の一方的な展開になります。
- 第2ゲーム、森選手のミスが減って接戦になり、6-6まで競ります。そこから抜け出して11-7でこのゲームも取ります。早田選手は森選手が仕掛けてくる技術への準備ができているようでした。
- 第3ゲーム、接戦になり点差が開かない展開で8-8まで競ります。そこから強烈な両ハンドでゲームポイントを握り、そのまま11-8でこのゲームも取ります。
- 第4ゲーム、両ハンドで森選手のミドルを攻めて得点を重ね、危なげない展開で11-5で勝ち切り、決勝進出を決めました。
早田選手、初日は体調が悪かったそうですが、この試合を見る限り問題なさそうでした。
フル動画。
フル動画、別アングル。
ハイライト。
試合結果を伝える記事。
決勝
張本美和選手との対戦でした。張本美和選手は準々決勝で平野美宇選手を4-2で倒しています。
- 第1ゲーム、実力拮抗で接戦になり点差が開かない展開で9-9まで競ります。最後取り切れずに9-11で落とします。
- 第2ゲーム、両者サービスからの展開で優位に立とうとするものの点差が開かず9-9まで競ります。このゲームを落とすと苦しくなるところ、激しいラリー戦を制して10-9とし、最後は苦しめられてきたロングサーブをフォアハンドドライブで打ち返し、このゲームを取り返します。
- 第3ゲーム、サービスからの組み立てが良くなり、レシーブからの展開も得点率が上がって10-2と大量リードします。そこから強気のプレーで追い上げられますが、最後は張本選手にチキータさせてから左右に打ち分けて11-5で取ります。
- 第4ゲーム、プレーの精度が上がり、早田選手がリードする展開になります。一方的な流れになり、11-3でこのゲームも取ります。ゲームカウントは3-1に。
- 第5ゲーム、張本選手の逆襲にあい、リードされる展開になります。8-8まで追い上げたものの、張本選手に押し切られて8-11で落とします。
- 第6ゲーム、サーブで張本選手の読みを外し、両ハンドを振り抜いてリードを広げます。危なげなく11-4で勝ち切り、第1回選考会以来の優勝を手にしました。
第2ゲームを落としていたらあぶなかったかも知れません。早田選手の「得点できる方法を見つける能力」はとても高いですね。
フル動画、実況・解説付き。
フル動画。
フル動画、別アングル。
ハイライト。
ハイライト、別バージョン。
この試合のスーパープレー。
優勝インタビュー。
2日目終了後のインタビュー。
表彰式。
早田選手の優勝を伝える記事。
インタビュー記事。
最終順位
最終順位(8位まで)と、獲得した選考ポイントです。
その結果を反映した、選考ポイント合計上位8名です。
今大会でのポイント増加率を見ると、張本美和選手が突出しています。チャンスをものにして10位から5位に急上昇しました。
今大会から付与されるポイントが増えたので、現在上位の選手も早いラウンドで敗退すると一気に順位を落としてしまいます。選考レース、厳しいです。
選考レース状況に関する記事。
選考会に優勝して得たもの
この選考会の優勝者に付与される選考ポイントは100です。そのポイントを除くと、何かの大会の出場資格が与えられるなどの特典はありません。が、9月に韓国で開催されるアジア選手権大会の出場資格は選考ポイント上位5名に付与されるため、選考ポイント合計1位の座を固めておくことは重要な意味を持ちます。
また選考レースでは、勝てる時に勝ってポイントを稼いでおくのが良いです。
今大会は初日の体調が良くなく、吐き気もしたそうですが、そうした中でも選考会を勝ち抜けたことは大きな自信につながったはずです。
試合終了後
早田ひな選手のツイート。
全農カップ平塚大会沢山の応援ありがとうございました🐥⸒⸒
次は世界選手権🏓🇿🇦
残り少ない期間ですがしっかり調整し良い結果を残せるよう頑張ります💪🔥
PHOTO:Itaru Chibaさん
千葉さんいつも素敵な写真ありがとうございます📷✨ pic.twitter.com/pixnlE0XLo— 早田ひな (@hayata_hina) May 8, 2023
今大会終了後の選考レース状況を伝える記事。
大会終了後のインタビュー。必見です。
早田ひな #tbsS1 独占インタビュー①
7日の卓球パリ五輪選考大会・全農CUP
女子シングルスで見事優勝🏆
パリ五輪日本代表選考ポイントで
独走中の #早田ひな 選手!S☆1は大会直後に独占インタビューに成功!
喜びの声を大公開しちゃいます!@hayata_hina#卓球#パリオリンピック pic.twitter.com/BsEzVjiDUV— TBS S☆1 (@TBS_TV_S1) May 10, 2023