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TリーグNOJIMA CUP 2022の結果詳細

初開催となったTリーグ個人戦ですが、パリオリンピック選考ポイント付与対象としたことで、興行イベント色を付けた小型版パリオリンピック選考会になりました。

早田ひな選手は見事優勝して初代女王になり、パリオリンピック選考レースをリードする最高の大会となりました。

*アイキャッチ画像はTリーグ公式サイトからの引用です。

Tリーグ個人戦の仕様

  • Tリーグが5シーズン目で初めて企画した個人戦。パリオリンピック選考ポイント付与対象となったことから、興行と選考会が混ざった位置づけがあやふやなものになってしまいました。
  • 男子は16名、女子は24名によるトーナメント戦。
  • Tリーグ所属選手でなくても日本卓球協会の推薦により出場可能としたこと、ドロー(シード)の1位を2022年全日本選手権大会の優勝者としたことは、伊藤美誠選手への配慮なのは明らかで、これには批判的意見が多く聞かれました。
  • Tリーグ個人戦でありながら、日本人しか出場できない制約がある点も商業イベントとパリオリンピックの選考会をごっちゃにした結果です。
  • 全試合7ゲームマッチ。3位決定戦あり。

出場選手選出基準はこうでした。

1. T リーグ男女選手選出方法(2022年6月30日までにTリーグ登録選手に限る)
①2022年第1回パリオリンピック選考会ベスト8入賞者
②Tリーグ実行委員会推薦選手(各チーム最大2名まで)
なお、①、②に基づく出場選手は、各チーム3名までとする。
2. 上記以外の出場者は、公益財団法人日本卓球協会強化本部で決定する。(Tリーグ所属選手に限らない)

出典:「2022 Tリーグ個人戦」 大会概要及び出場選手選出基準 決定

また、ドロー順序要領はこうでした。

1. 2022年全日本卓球選手権大会(一般の部)優勝者
2. ノジマTリーグ2021-2022シーズンのシングルス勝利数上位
※勝利数にはビクトリーマッチを含む(同数の場合は勝率の上位)
3. 上記に該当しない選手は、公益財団法人日本卓球協会強化本部で順序を決定
4. ドローは 1位、2位、(3位、4位)、(5位、6位)、(7位、8位)、(9位-12位)、(13位-16位)、(17 位-24 位)の順序とする。

出典:「2022 Tリーグ個人戦」 大会概要及び出場選手選出基準 決定

順位に応じてパリ五輪選考ポイントが付与されます。

次はパリオリンピック選考会で付与されるポイントです。

パリオリンピック選考会で付与されるポイント一覧

Tリーグ個人戦1位はパリオリンピック選考会の半分のポイントが付与されますが、順位が下がると急激に少なくなります。(ポイント配分の傾斜がきついです。)

大会情報

  • 期間:2022年8月13日、14日
  • 場所:トッケイセキュリティ平塚総合体育館
  • 開催種目:シングルスのみ
  • 参照:Tリーグ公式サイト

ネット中継

非常に不満の多いものでした。

  • 当初、dTVとひかりTVチャンネルによる有料配信のみで、アマプラは対象外、しかも配信されるのが準々決勝1試合、3位決定戦、決勝戦の男女それぞれ3試合のみという残念すぎるものでした。
  • 有料配信されなかった試合動画は後でTリーグのYouTubeチャンネルで無料公開されるとありました。
  • このひどい内容に当然ファンから不満が噴出し、大会直前になってメインテーブルの試合で有料配信しないものに限り、TリーグのYouTubeチャンネルでリアルタイム配信されることになりました。(おそらく実力者の判断が働いたのでしょう。)
  • Tリーグ公式サイトでライブスコアのサービスもありましたが、リアルタイム性が低い、サイトが頻繁に落ちる(アクセス不可になる)と課題の多い運用でした。

2023年にもTリーグ個人戦は予定されているので、今回の結果を活かしていろいろ改善して欲しいものです。なお僕はTリーグ個人戦は商業イベントなので、1日1,000円ぐらいで全テーブル全試合を有料配信(ストリーム4本、メインテーブルの特定の試合以外は固定カメラ+実況なし)するのでも大歓迎です。

ドロー

ドローは大会前日に会場にて行われました。リアルタイム配信の予定でしたが、技術的な問題で途中で断念し、後で動画が公開されました。

 ドロー

出典:Tリーグ公式ホームページ

第1シードは2022年全日本選手権大会の優勝者で、これは伊藤美誠選手のことを指します。第2シード以降はTリーグ2021-2022シーズンの勝利数順でした。第1シードを特別扱いしないと、強い伊藤美誠選手がノーシードになってしまっていろいろとまずいとの判断だと思われます。

第1試合終了後の16名のドローはこうでした。

第1試合終了後の16名のドロー

第6シードの早田ひな選手は伊藤美誠選手とは逆の山に入りました。ドロー運が悪い時期が長かった早田ひな選手ですが、今回はドロー運に恵まれました。

伊藤美誠選手の山には石川佳純選手と長崎美柚選手が入り、激戦区になったのはドロー運としか言いようがないです。

試合結果

早田ひな選手は接戦になった平野美宇選手との決勝に勝って優勝し、初代女王になりました。結果を残せたし、課題も見つけられた最高の大会になりました。

Round 16(2回戦)

成本綾海選手との対戦でした。成本選手はバック表の前陣速攻型です。

TリーグNOJIMA CUP 2022、R16スコア表

この試合は幸運にもYouTubeで中継されました。

  • 第1ゲーム、ややバックハンドにミスが多く、8-8まで競ります。そこから成本選手のミスを誘って11-8で取ります。
  • 第2ゲーム、サーブからの組み立てが良くなり10-4と大量リードでゲームポイントを握りますが、そこから成本選手の逆襲にあい10-9まで追い上げられます。最後はレシーブエースで取りましたが、バックハンドにミスが多いのが気になります。
  • 第3ゲームも似たような展開で接戦になり、8-8まで競ります。そこから強気の攻撃が決まって11-8でこのゲームも取ります。
  • 第4ゲームも接戦になりますが、10-7でマッチポイントを握ります。そこからフォアドライブをミスして天を仰ぎ(めったにしないです)バックハンドのミス2本でデュースに持ち込まれます。最後はなんとか12-10で勝ち切りました。

早田ひな選手の初戦は難しい試合になることが多いですが、次戦はもっと調子を上げたいですね。

フル動画。

準々決勝

安藤みなみ選手との対戦でした。安藤選手はバック表の前陣速攻型です。

TリーグNOJIMA CUP 2022、準々決勝スコア表

この試合は中継がなく、更新頻度が低い、頻繁に落ちるライブスコアで苦労しながらの応援でした。

  • 第1ゲーム、5-5まで競る展開になりますが、そこから流れをつかみ6連続得点で取ります。初戦で課題だったバックハンドの調子は良さそうです。
  • 第2ゲームも接戦で6-6まで競ります。その後9-7とリードしますが、安藤選手の逆襲にあい4連続失点で落としてしまいます。
  • 第3ゲームも接戦で6-5まで競りますが、そこから抜け出して11-6で取り返します。
  • 第4ゲーム、3-3から強烈なバックハンド4本を含む強気の攻撃で流れをつかみ、11-4でこのゲームも取ります。ゲームカウントは3-1に。
  • 第5ゲーム、フォアハンド、バックハンドともに精度が高く、石田大輔コーチが吠える回数が増えます。流れを相手に渡すことなく11-5で勝ち切ります。

(相性もあるでしょうが)初戦の調子だと勝てなかったと思います。調子を上げて勝つことができ、良かったです。

フル動画。

準決勝

今大会第2シードの木原美悠選手との対戦でした。木原選手はバック表の前陣速攻型です。今大会3人連続で前陣速攻型との対戦でした。

TリーグNOJIMA CUP 2022、準決勝スコア表

この試合は幸運にもYouTubeで中継されました。

  • 第1ゲーム、試合への入りが良く、木原選手のミスもあって7-0と大量リードします。その後も流れは変わらず11-2で取ります。
  • 第2ゲーム、早田選手がリードする展開で7-5まで進みますが、そこから木原選手がミスを連発して10-5とリードが広がります。最後は木原選手の追い上げを振り切って11-7で取ります。
  • 第3ゲーム、早田選手のコース取りが良く7-1と大量リードします。その後も流れを渡さず11-4でこのゲームも取り、ゲームカウントを3-0にします。
  • 第4ゲームは接戦になり7-7まで競りますが、攻撃にミスが出て7-9とリードを許します。そこから強気の攻撃で逆転し、11-9で勝ち切ってこの試合をものにしました。

木原美悠選手への準備(対策)がしっかりできていた印象です。

フル動画。

決勝

今大会好調の平野美宇選手との対戦でした。第3ゲーム、第4ゲームのどちらかのデュースを落としていたら、負けていたかも知れない接戦でした。

TリーグNOJIMA CUP 2022、決勝スコア表

この試合は有料配信でしたので、僕はdTVで視聴・応援しましたが、ここにリンクを置ける無料アーカイブ動画はありません。

  • 第1ゲーム、攻撃パターンの組み立てが良い平野選手が流れをつかんで2-7と大量リードします。早田選手は7-8まで追い上げますが、今大会好調だったフォアハンドにミスが3本出て、8-11で落としてしまいます。
  • 第2ゲームは第1ゲームと逆の展開になり、6-2とリードを広げます。7-5まで追い上げられますが、サーブからの組み立てが良くなった早田選手が11-5で取り返します。
  • 第3ゲーム、レベルの高いプレーが展開され、両者譲らず9-9まで競ります。先にゲームポイントを握ったものの、平野選手の強烈なチキータが決まってデュースになります。ハリケーン平野の激しい攻撃をしのぎ、最後コースを突いたバックハンドを決めてこのゲームも取ります。早田選手と石田大輔コーチの咆哮が会場に響きます。
  • 第4ゲームも接戦になり、9-9まで競ります。実力は拮抗しています。第3ゲーム同様先にゲームポイントを握りますが、平野選手も強気の攻撃でしのぎ、再度デュースになります。10-10から平野選手がフォアに回り込んで打ったチキータをフォアドライブで打ち返して決めます。最後は打ち合いに勝ってこのゲームも取り、ゲームカウントを3-1にします。
  • 第5ゲーム、ややミスが増えた平野選手に対し、安定した強気のプレーで攻め続け7-2と大量リードします。前陣での打ち合いにも勝って10-4とマッチポイントを握ります。最後は平野選手の甘くなったレシーブを強烈なフォアドライブで打ち返し、11-4で勝ち切ります。早田選手は、優勝した瞬間のガッツポーズがいつも控えめですが、それでもこの大会で優勝した意味の大きさを感じさせるものでした。

強い平野美宇選手に勝ててよかったです。

最終順位

最終順位(ベスト16まで)と、獲得した選考ポイントです。

最終順位(ベスト16まで)と、獲得した選考ポイント表

選考ポイントの合計上位8名です。

選考ポイントの合計上位8名

1位をキープしていますが、あと17ヶ月ある選考期間を戦い抜かねばなりません。

女子の結果を伝える記事。

早田選手、渡辺武弘監督のコメントがある記事。

テレビ東京卓球NEWS「練習でやっていることがそのまま試合で出来た」。

とても興味深い記事。

大会終了後

早田ひな選手のインスタグラム。

 
 
 
 
 
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2023年世界卓球選手権の選考レースをリード

2023年1月にアジア大陸予選会が開催されます。日本からは最大5名が出場可能ですが、その5名は選考ポイント上位者から選ばれます。

そして2023年5月22日から10日間の予定で開催される、世界卓球選手権に出場するためにはアジア大陸予選会に出場しておかなければなりません。つまり、来年5月開催の世界卓球選手権の選手選考は、第1回パリオリンピック選考会から始まっており、11月の第3回パリオリンピック選考会で終わるのです。(Tリーグのリーグ戦も対象になります。)

2023年世界卓球選手権のシングルスは選考ポイント付与対象の重要な大会ですが、早田ひな選手はその出場選手の選考レースをリードしているということです。

この2023年世界卓球選手権の出場選手選考については次の記事にまとめてあります。

この大会に優勝して得たもの

早田ひな選手は選考ポイント25に加えて大きな自信を手にできたことでしょう。また戦い抜いた4試合(特に平野美宇戦)を通して、試合からでなければ得られない経験と学びがあったはずです。また、2023年世界卓球選手権の出場選手選考レースをリードできたことも大きいです。

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