2023年5月に開催される世界卓球選手権の選手選考には、パリオリンピック選考ポイントが使われます。別途選考会を設けないで、ある時点のパリオリンピック選考ポイントの合計上位5名が選出されるのです。
合理的で公平性も担保される方式だと思いますが、その選出時期がびっくりするほど早く、2022年12月7日あたりです。そしてその5名に入るかどうかが、パリオリンピック選考レースに大きく影響します。
*アイキャッチ画像はこちらの動画からの引用です。
選手選考基準
日本卓球協会は2022年6月4日に2023年世界選手権ダーバン大会(個人戦)の選手選考の考え方を公表しました。以下はその内容を噛み砕いたものです。
- 2022年10月から12月のどこかで、アジア大陸予選会が開催されます。これには日本から最大5名が出場可能です。
- アジア大陸予選会に出ていないと、世界選手権には出場できません。(故障などで出られない場合はITTFに許可をもらって変更可能。)
- アジア大陸予選会の前に、東アジア地域予選会が開催されることもあります。(これはもう日程的に無理でしょう。)
- どちらであっても、その試合への出場選手は、その時点での選考ポイント上位5名とします。選考ポイント対象試合は次の通り。
-パリオリンピック選考会が最大3回。第3回は11月中旬開催なので、上記試合がそれより前に開催されるなら2回。
-8月に開催されるTリーグ個人戦。
-Tリーグレギュラーシーズンのシングルスとビクトリーマッチ。 - Tリーグレギュラーシーズンの試合はアジア大陸予選会30日前までのものを対象とし、該当期間のトータル試合数に差がある場合は、一番試合数の少ないチームに合わせ調整します。
- 男女ダブルスと混合ダブルスのペアリングは日本卓球協会強化本部が決定します。
アジア大陸予選会の開催予定が不明でしたが、こちらの記事によると2023年1月開催見込みのようです。
- 選考ポイント上位5名を選出するのは大会1ヶ月前なので、12月中旬。よって11月の第3回パリオリンピック選考会とそこまでのTリーグ・リーグ戦の結果が対象になる。
- 5位タイの選手がいる場合は直接対決で決める。
2023年世界卓球選手権への出場資格は、選考ポイントを獲得する上で非常に重要です。パリオリンピックを目指す選手は何としても、選考ポイント上位5名に入りたいところです。
【参考】2021年世界卓球選手権ヒューストン大会の選考基準
世界卓球選手権は個人戦と団体戦が交互に開催されています。2021年の個人戦の選手選考基準を要約するとこうでした。
- 2021年6月15日発表のWR20位以内の日本人最上位選手:1名
- 2021年6月15日発表のWR100位以内の日本人最上位選手:1名、上記のWR20位以内の日本人最上位選手を除く
- 東京オリンピックにて種目に関わらずメダル獲得した選手
- 国内選考会の上位から出場枠に達するまで
上から3つの条件を、東京オリンピック出場組である伊藤美誠選手、石川佳純選手、平野美宇選手が満たしていたので、残る2枠を競う選考会が開催されました。
こうして振り返ってみると2021年大会の選手選考は半年以上前から行われていたことになりますが、2023年大会の選手選考は締め切りが早いです。
選手選考基準正式版
日本卓球協会は2022年12月13日に「2023 年世界卓球選手権ダーバン大会(個人戦)アジア大陸予選会男女日本代表選手選考基準および 2023 年世界卓球選手権ダーバン大会(個人戦)男女日本代表選手選考基準」を公表しました。従来よりも詳しい内容が記載されていますが、考え方は変わっていません。
また、こちらのITTF作成の資料で2023年世界卓球選手権ダーバン大会の出場資格獲得のルールが解説されています。
アジア大陸予選会の日程決定
アジア大陸予選会の日程が決まりました。2023年1月7日から13日です。
選手選考結果
アジア大陸予選会に出場する選手が発表されました。
女子シングルスは次の5選手です。早田ひな選手、伊藤美誠選手、平野美宇選手、木原美悠選手、長﨑美柚選手。
女子ダブルスは、みまひなペアとダブル・みゆうです。
混合ダブルスは、はりひなペアと、篠塚・木原ペアです。
予想通り、早田ひな選手は3種目に出場します。
世界卓球選手権大会(個人戦)の位置付け
日本卓球協会は世界卓球選手権大会を、オリンピックに次ぐ重要な国際大会と位置付けています。そして2023年世界選手権ダーバン大会(個人戦)はパリオリンピック選考ポイント付与対象です。
世界選手権大会のシングルスには、普通に考えて、中国のトップ選手が5名出場するので、優勝すると200ポイントも付与されます。パリオリンピック選考会の倍です。でも優勝するには中国のトップ選手を2人以上倒す必要があるでしょうから、その壁の高さは尋常ではありません。
しかも、2023年の国際大会のシングルスは「打倒中国ポイント」の対象なので、準決勝と決勝で中国のトップ3位以内の選手を倒して優勝すると付与される選考ポイントは230にもなります。
現実問題としては、日本のトップ選手なら可能性が十分あるベスト4で120ポイント、最低限の目標となるベスト8で80ポイント付与されるわけですが、そもそも代表権がなければ可能性はゼロです。
早田ひな選手の場合
第3回パリオリンピック選考会(2022全農CUP TOP32船橋大会)終了時点の、選考ポイント合計上位8名です。
現在ダントツで1位をキープできています。アジア大陸予選会の開催日程が決まりましたので、第3回パリオリンピック選考会までのポイントと、12月7日より前(で試合数が最も少ないチームに調整した)Tリーグ・リーグ戦のポイントで決まります。早田選手、伊藤選手、平野選手、木原選手は確定ですね。また僕の計算では、芝田選手が長崎選手を逆転するのは不可能なので、長﨑選手も選考されると思います。
早田選手は世界卓球2022成都大会で左腕を故障してしまい、決勝戦を欠場、帰国後治療のための休養に入りました。第3回パリオリンピック選考会に間に合わなかったら、世界卓球選手権大会(個人戦)の出場資格が付与される、選考ポイント上位5名に残れない可能性もありましたが、間に合わせてベスト8以上(ポイント的に安全圏に入る条件)の成績を残すことができました。(準優勝でした。)
第3回パリオリンピック選考会に間に合い、世界卓球選手権大会(個人戦)の出場権を確実なものにできて本当に良かったです。
なお、ケガや病気を避けて、2023年1月に開催される予定のアジア大陸予選会に出場しないといけません。
アジア大陸予選会で勝ち抜けないといけません
アジア大陸予選会の資料によると、トーナメント戦を勝ち抜けると世界卓球選手権の出場枠が付与される仕組みのようです。
シングルスの試合形式です。
- 1グループ5、6名で構成される16グループに分かれます。
- ドロー時のWRで16名がシードされ、各グループに分かれます。
- 同じくWRで続く16名がランダムに、各グループに分かれます。ただし、同じ協会からの選手が同一グループに入らないようにします。
- 残りの選手はランダムに、各グループに分かれます。ただし、同じ協会からの選手が同一グループに入らないようにします。
- 各グループの勝者は世界卓球選手権の出場枠を獲得します。
- 各グループの2位の選手は、同じ協会からの選手と当たらないようにした上で、ランダムに選ばれた選手と戦います。ここでも負けると世界卓球選手権の出場枠は付与されません。
- 世界卓球選手権の出場枠数によっては、さらに試合が行われます。
16グループのトーナメント形式はこうです。
引用:アジア大陸予選会の資料
中国がWR通りに選手を派遣した場合、こうなるはずです。
- 早田ひな選手はおそらく、第6グループのポジション1に入ります。
- 同じグループに中国人選手はいません。
- ポジション8には普通に強敵が入ってきます。
- 2回勝てば文句なしの勝ち抜け確定ですが、厳しい戦いになるはずです。
なお、アジア大陸予選会はシングルス、ダブルス、混合ダブルスの全試合が7ゲームマッチで、運の要素が少ないです。
アジア大陸予選会で勝ち抜けなかった場合
アジア大陸予選会で勝ち抜けなかった場合でも、世界ランキングで32位以内であれば(日本は)出場枠を最大シングルス5名、男女ダブルス各2ペア、混合ダブルス2ペア獲得できます。ただし、日本が獲得した出場枠は、アジア大陸予選会出場選手とペアに与えられます。
世界ランキング32位以内に日本人女子が5名いれば、アジア大陸予選会に出場した選手は全員(勝ち抜けられなかったとしても)、シングルスの出場権を得ます。2023年の世界ランキングがどうなっているか分からないですが、ギリギリ4名ということもありそうなので、アジア大陸予選会で勝ち抜けておきたいです。世界卓球選手権のシード的にもその方が有利でしょう。
アジア大陸予選会の結果
アジア大陸予選会で、日本人女子選手は全員、目指していた出場権を獲得しました。良かったです。
- 女子シングルス:早田ひな選手、伊藤美誠選手、平野美宇選手、木原美悠選手、長﨑美柚選手。
- 女子ダブルス:みまひなペア、ダブル・みゆう。
- 混合ダブルス:はりひなペア、篠塚・木原ペア。
5月に開催される世界卓球選手権ダーバン大会(個人戦)が楽しみです。