2021年11月に米国ヒューストンで開催される世界卓球選手権の出場枠は5名ですが、うち3名は東京オリンピックに出場した選手が決まっていました。残り2枠を選考会で競うことになりました。
この選考会、6月に開催された2021アジア卓球選手権の日本代表選考合宿よりも体力的に厳しいものでした。
早田ひな選手は見事1位通過し、世界卓球選手権ヒューストン大会の(自身初となる)シングルスの代表権を獲得しました。
選考方法
選考会に出場した24名で2つのステージのリーグ戦を戦い、1位から8位までを決定する過酷な選考会です。
- 予選リーグ:24名を6名ずつ4ブロックに分けてリーグ戦を実施。
- 決勝リーグ:予選リーグの各ブロック1位、2位の計8名でリーグ戦を実施。
- 予選リーグでの対戦結果は、決勝リーグに持ち越し、決勝リーグは8名ですが予選リーグで戦っていない6名のみと試合を行います。
- 全試合7ゲームマッチ。
- 決勝リーグ上位2名が代表権を獲得。
7ゲームマッチのリーグ戦なので運の要素を激減できますが、4日間で合計11試合を戦う(2試合、3試合、4試合、2試合)ため選手にとって負担が大きいと思いました。
大会情報
- 期間:2021年8月31日から9月2日
- 場所:新潟県 新発田市カルチャーセンター
- 参照:日本卓球協会の公式ページ
ネット中継
テーブルは男女合わせて10台ありましたが、テレビ東京卓球チャンネルが2テーブルをネット中継してくれました。中継予定の試合が終わっても、他のテーブルで試合が進行中だったらそちらを映してくれるなど、2ストリームしかない中で最大限の配慮をして頂きました。
また、中継対象外の試合映像も(ストリーミング用でないカメラで収録)アーカイブして頂き、感謝しかありません。
出場選手
出場した選手24名です。
セルを赤く塗っている6名がシードで各ブロックに分かれます。残りの人は所属ができるだけ重複しないように配慮しながらドローで振り分けられました。
組み合わせ抽選会。
会場練習風景。
予選リーグ
予選リーグは全勝でブロックを1位通過しました。ブロックを2位通過した選手との対戦成績は決勝リーグに持ち越されるので、予選リーグは全勝することが必須でした。
原芽衣戦
原芽衣選手は異質攻撃型です。ミスを恐れず向かって来るところを、危なげなく勝つことができました。
フル動画。
ハイライト。
張本美和戦
当時、早田ひな選手が1位通過する上で脅威になるとは思っていませんでしたが、1年後の張本美和選手は別人に成長していました。
- 第1ゲーム、流れをつかめず1-6と大量リードされます。そこから6-6に追い上げますが、9-11で落とします。9-10の場面で張本美和選手がタイムアウトを使ったのにはびっくりしました。
- 第2ゲームはハイトスサーブをメインに組み立てます。第1ゲームに連発したオーバーミスが減って11-5で取り返します。
- 第3ゲーム、サーブからの展開で失点することが多くなり苦しくなりますが、それでも11-7で取ります。
- 第4ゲーム、序盤1-5とリードを許す苦しい展開になりますが、4連続得点で追いつき、その後はリードを保って11-8で取ります。ゲームカウント3-1に。
- 第5ゲーム、攻撃時のミスが減り9-3と大量リードします。このゲームを11-5で勝ち切って、試合をものにしました。
フル動画。
ハイライト。
佐藤瞳戦
佐藤瞳選手は日本を代表するカットマンです。早田ひな選手はカット打ちがうまいのですが、この試合は苦労しました。フルゲームになっていたら、危なかったですね。
- 第1ゲームはミスが少なく11-4で取ります。今日の状態なら安心だと思ったのですが、間違っていました。
- 第2ゲーム、ミスが増えてリードを許す展開になり、7-10とゲームポイントを握られます。そこから粘りますが、9-11で落とします。
- 第3ゲーム、ミスが減って11-3で取り返します。
- 第4ゲーム、佐藤瞳選手に強打されて失点する機会が増え、4-9と大量リードを許します。そこから追い上げますが、8-11で落とします。ゲームカウントは2-2に。
- 第5ゲームは安定したカット打ちと前後の揺さぶりでポイントを重ね、11-4で取ります。石田大輔コーチの「ナイスプレー」が会場に響き渡ります。
- 第6ゲーム、接戦になり8-8まで競ります。そこから強気のレシーブエースを2本決め、11-9でなんとか勝ち切ります。
佐藤瞳選手、強かったです。
フル動画。
森田彩音戦
ゲームによって展開が大きく変わり、1ゲーム落としてしまいましたが、きっちり勝ちました。
フル動画。
ダイジェスト。
香取悠珠子戦
11歳のホープスナショナルチーム選手です。しっかり勝ちました。
フル動画。
決勝リーグ
予選リーグを通過した8名がリーグ戦形式で戦いますが、予選リーグ2位通過の選手との対戦成績は持ち越されるので、各自6試合となります。
決勝リーグ1日目(大会3日目)は4試合を行う、体力的に負担の大きいスケジュールでした。
決勝リーグに進出した選手についての記事。
安藤みなみ戦
安藤みなみ選手は前陣速攻型です。接戦になることが多かったですが、勝てて良かったです。
- 第1ゲーム、接戦になり5-5まで競りますが、そこから6連続得点でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、ややミスが多く5-9とリードされます。8-10と先にゲームポイントを握られますが、デュースに持ち込んで13-11で連取します。
- 第3ゲーム、7-6まで競った展開になりますが、そこから抜け出して11-6で取り、ゲームカウントを3-0にします。
- 第4ゲームは別人のようにオーバーミスを連発し、5-11であっさり落としてしまいます。
- 第5ゲーム、接戦になり8-10と先にゲームポイントを握られます。ここから強気の姿勢を崩さず4連続得点で勝ち切ります。
フル動画。
ハイライト。
長﨑美柚戦
日本生命のチームメイトなので、ベンチコーチはいません。長﨑美柚選手、強かったです。
- 第1ゲーム、早田ひな選手のコース取りが良く、11-4と大量リードで取ります。
- 第2ゲーム、10-7でゲームポイントを握りますが、そこからデュースに持ち込まれます。強気の姿勢を崩さずに12-10で取ります。
- 第3ゲーム、リードを許す展開になりますが、終盤追い上げて10-8とゲームポイントを握ります。そのまま11-9でこのゲームも取り、ゲームカウントを3-0とします。
- 第4ゲーム、リードを守る展開で10-6とマッチポイントを握ったものの、デュースに持ち込まれます。それでも勝負どころで失点せず14-12で勝ち切ります。
ストレート勝ちでしたが、展開が違っていたら負けていてもおかしくなかったです。
フル動画。
ダイジェスト。
木原美悠戦
木原美悠選手、めっちゃ強かったです。運が悪ければ負けていました。
- 第1ゲーム、接戦になり9-9まで競ります。先にゲームポイントを握ったものの、逆転されて10-12で落とします。
- 第2ゲームも接戦で9-10とゲームポイントを握られますが、逆転して取り返します。
- 第3ゲーム、両者譲らず7-7まで競ります。そこから打ち合いを制して9-7とリードしますが、詰めが甘く9-10と逆転され、そのまま落としてしまいます。
- 第4ゲーム、レシーブが甘くなったところを強打される、勝負に行ったフォアドライブが入らないと流れをつかめず、6-11で落としてしまいます。ゲームカウント1-3と後がなくなります。
- 第5ゲームも接戦になりますが、10-8と先にゲームポイントを握ります。ここからミスが続いて10-10になりますが、最後ラリー戦2本を制して落とせないゲームを取ります。
- 第6ゲーム、一進一退の激しい打ち合いが展開されます。このゲームも10-8と先にゲームポイントを握るものの、デュースに持ち込まれてしまいます。最後踏ん張って12-10でこのゲームも取り、ゲームカウントを3-3にします。
- 最終最終第7ゲーム、攻撃的姿勢を貫く早田ひな選手が9-3とリードします。最後は打ち合いを制して11-5で勝ち切り、苦しかったフルゲームの試合をものにしました。
この試合は、選考会を勝ち抜いて1位通過することがどれだけ困難なことであるかを認識させてくれます。
フル動画。
ダイジェスト。
橋本帆乃香戦
木原美悠選手との激闘を制してからわずか15分後には、同日4試合目となる橋本帆乃香選手との対戦が始まりました。
- 第1ゲーム、普段よりカット打ちの精度が低く、接戦になりますが、なんとか11-9で取ります。
- 第2ゲームも接戦になりますが、終盤リードを広げて11-7で取ります。
- 第3ゲーム、なんとか6-6まで接戦にするものの、そこからミスを連発して6-11で落とします。
- 第4ゲームも似たような展開になりますが、なんとか11-7でとってゲームカウントを3-1にします。
- 第5ゲーム、接戦で9-10からデュースに持ち込みますが最後取り切れず13-11で落とします。
- 第6ゲーム、プレーの精度が落ちて3-11で落としてしまいます。ゲームカウント3-3で勝負は最終ゲームへ。
- 最終第7ゲーム、6-3とリードするも疲労のためかリードを守れず6-9と逆転されます。8-10とマッチポイントを握られ、デュースに持ち込むも最後2本オーバーミスで負けてしまいました。試合時間1時間18分、死力を尽くした戦いでした。
第6ゲームから、先に試合が終わった長﨑美柚選手がコート脇で応援してくれていた姿に泣けました。
フル動画。
ダイジェスト。
大藤沙月戦
選考合宿最終日の1試合目は大藤沙月選手との対戦でした。昨日の疲れを見せず快勝しました。
- 第1ゲーム、接戦で7-7まで競りますがそこから抜け出して11-7で取ります。
- 第2ゲーム、ややミスが多く接戦になりますが、打ち合いを制して11-8で取ります。
- 第3ゲーム、大藤沙月選手のミスが増え一方的な展開になります。11-4で取って、ゲームカウントを3-0にします。
- 第4ゲーム、強烈なフォアドライブで圧倒し、このゲームも取ってストレート勝ちをおさめます。
フル動画。
ハイライト。
芝田沙季戦
選考合宿最終日の2試合目、最後の試合は芝田沙季選手との対戦でした。芝田沙季選手は橋本帆乃香選手に勝利していたので、この試合に負けていたら代表に選出されませんでした。勝てて良かったです。
- 第1ゲーム、芝田沙季選手のボールのレシーブに苦しみながらも9-9まで競りますが、9-11で落としてしまいます。
- 第2ゲーム、レシーブに難があるものの攻撃が冴えて一方的な展開になり、11-2で取り返します。
- 第3ゲーム、レシーブが良くなり11-7でこのゲームも取ります。
- 第4ゲーム、打ち合いを制して8-4とリードします。そこから追い上げられますが11-7でこのゲームも取ってゲームカウントを3-1にします。
- 第5ゲーム、流れをつかんで9-2と大量リードします。そのまま11-4で勝ち切ってこの試合をものにし、最終結果として1位通過・代表権を手にしました。
フル動画。
ハイライト。
選考結果
決勝リーグの対戦成績です。
出典:日本卓球協会
早田ひな選手が6勝1敗で1位、芝田沙季選手と橋本帆乃香選手が5勝2敗でしたが両名の対戦結果により芝田沙季選手が2位となりました。早田ひな選手が(最後の試合で)芝田沙季選手に負けていたら、代表権は獲得できなかったという非常にきわどい選考会でした。
最終順位です。
表彰式。
優勝インタビュー。
選考結果を伝える記事。
大会終了後
早田ひな選手のツイート。
世界選手権選考会では沢山の応援ありがとうございました!!
1位で予選通過し初のシングルス代表になる事が出来ました☺✨
大会運営に携わってくださった皆さま感染防止対策と運営ありがとうざいました🙇♂️
11月の本戦もしっかり頑張ります🐣💪🏻
PHOTO:Itaru Chiba さん pic.twitter.com/oCILgBouiV— 早田ひな (@hayata_hina) September 2, 2021
まとめ
- 早田ひな選手は見事1位通過し、世界卓球選手権ヒューストン大会のシングルスの代表権を獲得しました。
- 木原美悠選手との試合は際どかったし、最後の試合で芝田沙季選手に負けていたら代表権を逃していたという厳しいものでした。1位通過できた本当に良かったです。
- わずか2枠しかない代表権を争うこの選考会は、選手にとって過酷なものだったことでしょう。それだけ、世界卓球選手権が(日本卓球協会において)重要な大会に位置づけられているということですね。