中国人トップ選手はWTTチャンピオンズ重慶2024を最後に国際大会への出場を控えるようになりましたが、パリオリンピックに向けて少しでもWRを上げたい選手はコンテンダーシリーズに出場し続けています。選手は怪我のリスクを負いながらも自身の目標達成のために、過密日程の中、連戦に挑むことになりました。
早田ひな選手は出場可能な大会のほとんどにエントリーしました。今大会はパリオリンピック前最後の4連戦の3大会目に該当します。
当初シングルスと混合ダブルスにエントリーしていましたが、開催直前になってシングルスをキャンセルしました。そして混合ダブルスで3大会連続で優勝し、パリオリンピックの第2シード奪取に望みをつなぎました。
*アイキャッチ画像はテレビ東京卓球情報のXポストからの引用です。
WTTコンテンダー
- シニア向けWTTシリーズの最下位大会です。(WTTフィーダーシリーズはWTTシリーズではありません。)
- 年間最大14大会開催可能です。
- 本戦4日、予選2~3日の日程で選手によっては1日に4試合に出場します。
- シングルス、ダブルス、混合ダブルスの3種目を実施。
- シングルスの本戦は32名、うち8名は予選を通過した選手。
- 予選人数は48、64、96名から開催国が選択します。
- ダブルス、混合ダブルス本戦16ペア、うち4ペアは予選を通過したペア。
- シングルスは各協会から4名までしか出場できません。(世界ランク20位以内の選手を除きます。)また世界ランク21位以降の上位者から優先出場となっています。
- 世界ランク20位以内の選手は、全体で3名しか出場できません。ホスト国はその3名を選ぶ裁量権を持ちます。
- 世界ランク20位以内の選手への出場制限(PDR)は、今大会は適用外です。
- ワイルドカード枠3名、WTT推薦枠1名は上記制限の対象外。
- シングルスのシード数は8。
- シングルスの決勝のみ7ゲームマッチ、他はすべて5ゲームマッチ。
- 優勝選手には400ポイントが付与されます。
WTTコンテンダーチュニス2024
- 期間:2024年6月25日から30日
- 場所:チュニジアのチュニス(日本との時差8時間、現地10:00が日本の18:00)
- 出場種目:混合ダブルス
- 参照:WTT公式サイト、日本卓球協会の公式サイト
ネット中継
- WTTがYoutubeチャンネルでT1からT4をリアルタイム配信しました。
- テレビ東京卓球チャンネルは本戦2日目(Round 16)からT1をリアルタイム配信しました。
- テレビ東京卓球チャンネルはアーカイブの公開が迅速ですが、WTT公式チャンネルはしばらく待たされることがあります。
本戦1日目に誤ってT1の視聴制限がかかり、解除されませんでした。再三起こるこの問題、根本的な対策をして欲しいです。
パリオリンピック前最後の4連戦の3大会目
WTTチャンピオンズ重慶2024の後、WTTはパリオリンピック前にコンテンダーシリーズを合計5大会設定しました。早田ひな選手はラゴスを除く4大会にエントリーしました。今大会はその怒涛の4連戦の3大会目です。
- WTTコンテンダーザグレブ2024(6月3日から9日)
- WTTスターコンテンダーリュブリャナ2024(6月10日から16日)
- WTTコンテンダーチュニス2024(6月24日から30日)
- WTTスターコンテンダーバンコク2024(7月2日から7日)
大会開催直前にシングルスをキャンセル
当初はシングルスと混合ダブルスにエントリーしていましたが、大会開催直前にシングルスをキャンセル(棄権)しました。WTTは「スケジュール調整のため」と伝えています。
次の理由からシングルスを回避したと思われました。
- シングルスはWRポイント的に考えて、無理してコンテンダー大会に出るべき時期ではない。
- 連戦が続いており来週はスターコンテンダーバンコクがあるので負荷を減らしたい。
- 今大会は混合ダブルスに専念したい。
でもシングルスで張本美和選手と大藤沙月選手が決勝に進出したのを見て、自分も出たかった、その想いをスターコンテンダーバンコクにぶつけたいと思ったことでしょう。
シングルスをキャンセルした理由
早田ひな選手は今大会に続いてWTTスターコンテンダーバンコク2024でもシングルスをキャンセルして混合ダブルスに専念しました。それについて、石田コーチが大会終了後に狙いを話してくれています。
混合ダブルス:優勝
本戦から出場する12ペアの顔ぶれです。はりひなペアは第1シードでした。
はりひなペアは林鐘勳/申裕斌ペアとパリオリンピックの第2シードを争っています。状況的には林鐘勳/申裕斌ペアが有利で、はりひなペアは今大会で優勝した上で、最後の対象大会となるWTTスターコンテンダーバンコクでの逆転に賭けるしかありません。
その大きなプレッシャーがかかる中、苦しい試合を戦い抜いて見事に優勝しました。
準々決勝
タッカー/カマスのインドペアとの対戦でした。R16はBYEだったので、この準々決勝が初戦です。
第2ゲームまでインドペアのボールに対応できず危ない内容でしたが、第3ゲームから対応して勝ちました。
- 第1ゲーム、はりひなペアにとって不利なローテーション、インドの男子選手を抑えることができずリードを広げられる展開が続きます。またボールとの距離感がつかめないのか、早田選手にミスが目立ちます。良いところがほとんどないまま4-11でこのゲームを落とします。
- 第2ゲーム、接戦になりますが、このゲームを落とすわけには行かない中、張本選手が早田選手を支えます。9-9で早田選手のサーブ2本、張本選手のバックハンドとサービスエースでなんとか11-9でこのゲームを取り返します。
- 第3ゲーム、苦手なローテーション、0-3と出遅れますがようやくインドペアのボールに順応できるようになります。流れをつかんで11連続得点し、11-3でこのゲームも取ります。早田選手のミスが激減し、はりひなペアらしいプレーが増えました。
- 第4ゲーム、はりひなペアがリードを保つ展開になります。危なげなく11-6で勝ち切り、序盤は危なかった試合をしっかりものにしました。
フル動画。
ハイライト。
試合結果を伝える記事。
テレビ東京制作の公式動画。
準決勝
チタレ/シャーのインドペアとの対戦でした。
しっかり勝ちました。
- 第1ゲーム、はりひなペアにとって有利なローテーション、接戦で5-5まで競りますがそこから抜け出して11-6でこのゲームを取ります。初戦で見られた相手選手の球質に苦労する様子はありませんでした。
- 第2ゲーム、流れをつかんで8-4とリードしたものの、そこから9-9と追い付かれます。流れ的に落としたくないゲーム、最後しっかり攻めて11-9で取ります。
- 第3ゲーム、はりひなペアがリードを保つ展開が続きます。インドペアに追い上げられますが、勝負どころで失点せず11-7で勝ち切って決勝進出を決めました。
はりひなペアは仕上がりが良かったです。スウェーデンペアとの決勝戦も期待できます。
フル動画。
ハイライト。
決勝
カールソン/C・シェルベリのスウェーデンペアとの対戦でした。WTTコンテンダーリオ・デ・ジャネイロ2024の準決勝でも対戦しています。
カールソン選手が強くて苦戦しましたが、なんとか勝ちました。勝てて良かったです。
- 第1ゲーム、はりひなペアにとって不利なローテーション、流れをつかんで6-2とリードしたものの、そこからカールソン選手の強打を連続して喰らって6-5と追い上げられます。その後もカールソン選手を抑えられずに8-11でこのゲームを落としてしまいます。今日のカールソン選手は強過ぎます。
- 第2ゲーム、カールソン選手を抑えられずに2-6と大量リードされる苦しい展開になります。ここから我慢のプレーで追い上げ、7-7からは競った展開が続きます。9-10と先にゲームポイントを握られますが、ギリギリのプレーでデュースに持ち込みます。ちょっと運がなかったらこのゲームも落としていました。苦しい展開が続く中、最後はりひなペアらしい攻撃が決まって13-11でこのゲームを取り返します。このゲームを落としていたら負けていたと思います。
- 第3ゲーム、接戦で点差が開かない展開が続きます。10-9と先にゲームポイントを握りますがデュースに持ち込まれます。最後2本、なんとかカールソン選手を抑えて13-11でこのゲームも取ってゲームカウントを2-1とします。
- 第4ゲーム、はりひなペアにミスが増えてスウェーデンペアに逆襲され、11-6でこのゲームを取り返されます。今日のスウェーデンペアは強いです。
- 最終第5ゲーム、不利なローテーションを5-1でしのぎ、その流れをつかんだまま7-1と大量リードします。攻撃的姿勢を続けるスウェーデンペアに7-5と追い上げられますが、死力を尽くすようなプレーを続けて11-7で勝ち切り、3大会連続で優勝を手にしました。
パリオリンピックの第2シードを獲るためには絶対に負けられないところ、そのプレッシャーに耐えて好調のスウェーデンペアに勝利、優勝することができました。
第3ゲームでスウェーデンペアがレシーブの態勢に入っていない状態で早田選手がサーブしたと副審がレットを宣言しましたが、C・シェルベリ選手はそうではないと申告します。それでも副審は聞き入れませんでした。ここでおそらくカールソン選手の指示だと思うのですが、シェルベリ選手がわざとレシーブミスをしてレットで消された得点を渡します。(そのシーンの動画)あの競った場面でのスウェーデンペアのフェアプレーに感動しました。カールソン選手とC・シェルベリ選手のファンになりました。
フル動画。
ハイライト。
表彰式。
試合結果を伝える記事。
テレビ東京制作の公式動画。
この試合のスーパープレー。
まとめ
- 当初シングルスと混合ダブルスにエントリーしていましたが、開催直前になってシングルスをキャンセルしました。WTTは「スケジュール調整のため」と伝えました。怪我や体調不良でなかったことは明らかなので、おそらく「シングルスに出場するのを我慢して混合ダブルスに専念した」のだと思われます。
- はりひなペアは仕上がりが良く、特に張本智和選手が絶好調で、早田ひな選手を引っ張る形で厳しい試合に競り勝って、目標通り優勝しました。
- はりひなペアはパリオリンピックの第2シードを林鐘勳/申裕斌ペアから奪取するため、負けられない戦いを続けています。3大会連続で優勝したことでその望みを最後の対象大会であるスターコンテンダーバンコクにつなぎました。でもバンコクで優勝した上で、林鐘勳/申裕斌ペアがベスト4以下でないと第2シードを奪えないという厳しい状況です。でも可能性がある限り最後まで諦めないで戦います。
おまけ
石田コーチのインスタグラムから。
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