WTTスターコンテンダーは世界ランク21位以下の選手向けの大会ですが、上位大会の開催数が少ないこともあって中国を含む世界トップ選手が積極的にエントリーすることが多いです。そして2024年は7月まで世界ランク20位以内の選手の出場制限が解除されるため、今大会はグランドスマッシュ並みの顔ぶれになりました。
早田ひな選手はシングルスと混合ダブルスにエントリーしましたが、ともに準々決勝で敗れてベスト8でした。
孫穎莎選手にフルゲーム9-11で惜敗しましたが、世界女王との差が縮まってきたことを実感できた大会でした。
*アイキャッチ画像はテレビ東京卓球情報のXポストからの引用です。
WTTスターコンテンダー
- シニア向けWTTシリーズの下から2番目の大会です。
- 年間最大6大会開催可能です。
- 本戦5日、予選2~3日の日程で選手によっては1日に4試合に出場します。(今大会は本戦4日のタイトなスケジュール。)
- シングルス、ダブルス、混合ダブルスの3種目を実施。
- シングルスの本戦は48名、うち8名は予選を通過した選手。
- 予選人数は32、48、64名から開催国が選択します。
- ダブルス、混合ダブルス本戦16ペア、うち4ペアは予選を通過したペア。
- シングルスは各協会から6名までしか出場できません。
- 世界ランク20位以内の選手への出場制限(PDR)は、今大会は適用外です。
- ワイルドカード枠4名、WTT推薦枠2名。
- シングルスの決勝のみ7ゲームマッチ、他はすべて5ゲームマッチ。
- 優勝選手には600ポイントが付与されます。
大会情報
- 期間:2024年1月8日から13日
- 場所:カタールのドーハ(日本との時差6時間、現地10:00が日本の16:00)
- 出場種目:シングルス、混合ダブルス
- 参照:WTT公式サイト、日本卓球協会の公式サイト
- パリ五輪選考ポイント付与対象ではありませんが、打倒中国ポイントの獲得対象です。
ネット中継
- WTTがYoutubeチャンネルでT1からT4をリアルタイム配信しました。
- テレビ東京卓球チャンネルは本戦からT1を、本戦3日目のシングルス3回戦からT1とT2をリアルタイム配信しました。
- テレビ東京卓球チャンネルはアーカイブの公開が迅速ですが、WTT公式チャンネルはしばらく待たされることがあります。
なおシングルス準々決勝の途中から中継映像がノイズだらけになる現象が頻発しました。時間と空間を飛び越えて試合を生中継してくれている、技術と関係者と時代に感謝です。
シングルス出場選手
本戦から出場する40名の顔ぶれです。PDRが解除されているので、WR20位以内の選手が16名もいます。
早田ひな選手はWR5位で第5シードでした。
日本人女子で出場したのは早田ひな選手、張本美和選手、長﨑美柚選手でした。伊藤美誠選手と平野美宇選手は、全日本選手権大会に照準を合わせるために回避したものと思われます。
シングルス:ベスト8
順当なら準々決勝で孫穎莎選手と当たるドローでした。孫穎莎選手とは2023年に6度対戦してすべて負けており、世界女王に再チャレンジできるまたとない機会になりました。
早田ひな選手はR16敗退の危機を乗り越えて、準々決勝で孫穎莎選手と再戦しました。これまでで一番良い戦い方ができましたが、フルゲーム9-11で惜しくも負けてしまい、ベスト8でした。でも孫穎莎選手とフルゲームを戦って、練習の成果をたくさん出せたことは言葉では表せないぐらいの収穫だったはずです。
Round 32(2回戦)
韓国の李時温(イ・シオン)選手との対戦でした。2017年以降の対戦はありません。
早田ひな選手は仕上がりが良く、快勝でした。
- 第1ゲーム、精度の高いプレーでリードを広げる展開になり、11-5でこのゲームを取ります。サーブが効果的でした。
- 第2ゲーム、サーブのコントロール、台との距離を変えるフットワーク、フォアハンドの精度の高さ、どれを取っても申し分ないできで、11-3と圧倒します。
- 第3ゲーム、李時温選手の逆襲もあってやや競りましたが、危なげなく11-7で勝ち切りました。
早田選手が調整不足の時は両ハンドの精度が極端に落ちますが、この試合では安定していて狙い通りのボールが打てていたようです。この調子の良さを維持したいですね。
なおこの試合のベンチコーチは渡辺監督でした。
フル動画。
ハイライト。
Round 16(3回戦)
スウェーデンのリンダ・ベルストレム選手との対戦でした。混合団体ワールドカップ2023でも対戦しています。また今大会のR32で強敵のセーチ選手を倒しています。
2ゲームを大差で先取されてからの逆転勝利でした。勝ててよかったです。忘れられない試合になりました。
- 第1ゲーム、早田選手はカット打ちが上手いですが、今日はカットボールに合わせられずにオーバーミス、ネットミス、空振りを繰り返します。またツッツいて甘くなったボールを強打される悪い展開で5-11でこのゲームを落としてしまいます。修正しないとまずいです。
- 第2ゲーム、悪い流れを断ち切れず1-8と大量リードされる苦しい展開になります。国際大会で初めてYGサーブを3本出しますが、序盤の失点が響いて6-11でこのゲームも落とし、後がなくなります。
- 第3ゲーム、勢いづいたベリストレム選手を抑えられず0-3となりタイムアウトを取ります。ここからミスが減ってリードする展開になり、追いすがるベリストレム選手を振り切って11-8でなんとか1ゲーム取り返します。あと2ゲーム取らないと勝てません。
- 第4ゲーム、ようやく早田選手らしい動きになり、しっかり声も出るようになります。第1、第2ゲームとは別人のようなプレーで11-4でこのゲームも取ってゲームカウントを2-2にします。
- 最終第5ゲーム、明らかにボールに合わせられるようになってきた早田選手がリードする展開になります。7-4からサーブ3球目攻撃で得点し、石田コーチの「ナイスボール」の声が響きます。最後はチキータレシーブを決めて11-6で勝ち切り、苦しい試合をものにしました。
早田選手のメンタルの強靭さ、諦めない気持ち、試合の中での修正能力の高さは素晴らしかったです。また映像ではベンチコーチを確認できなかったのですが、試合中に聞こえてきた声は石田コーチのものでした。一緒に戦っていたわけです。
フル動画。
ハイライト。
みんスポからの公式動画。
試合結果を伝える記事。
準々決勝
孫穎莎選手との対戦でした。互いに惹かれ合うのか対戦回数が多いです。まだ一度も勝ててません。
世界最強女王は今回も勝たせてくれませんでしたが、早田ひな選手の進化を確認できた試合でした。
- 第1ゲーム、過去の対戦では第1ゲームを大差で落とすことが多かったのですが、今日は試合への入りが良く接戦になります。10-9と先にゲームポイントを握りますがデュースに持ち込まれ、ゲームポイント2回をものにできず13-15でこのゲームを落とします。
- 第2ゲーム、今日は動きがすこぶる良く、流れをつかんで10-4と大量リードします。そこから孫穎莎選手に強烈なフォアハンドで追い上げられますが、最後サービスエースで逃げ切ってこのゲームを取り返します。
- 第3ゲーム、リードを許す苦しい展開になります。7-8まで追い上げたものの、フォアハンドの強打と孫穎莎戦で良く見るサイドを切って逃げていく柔らかいボールで失点し、7-11で落としてしまいます。孫穎莎選手のボールコントロールは地球人のものではないですね。
- 第4ゲーム、早田選手がリードを保つ展開が続きます。7-6と追い上げられたところでタイムアウトを取り、ミドル攻めのボールを身体を折りたたみながら打ち返して8-6とし吠えます。8-7からはサーブ3球目を孫穎莎選手のフォア側に打ち抜いて静かに拳を握ります。最後ラリー戦2本を制して11-7で取り、ゲームカウントを2-2にします。
- 最終第5ゲーム、孫穎莎選手が強さを見せてリードされる展開になります。ラリー戦で互角、チャンスボールを決めに行く際のミスが少ない早田選手は9-10まで喰い下がりますが、最後ツッツキが甘くなったところをフリックで決められて9-11で敗戦となりました。8-9から出したストレートコースのロングサーブをエースできる孫穎莎選手は恐ろしいですね。
WTTスターコンテンダーリュブリャナ2023の準々決勝に続く、フルゲーム9-11での惜敗でしたが、この試合の方が孫穎莎選手との差が縮まったと実感できました。
なおこの試合のベンチコーチは渡辺監督でした。
フル動画。
ハイライト。見応えたっぷり10分間。
試合結果を伝える記事。
混合ダブルス:ベスト8
はりひなペアは準決勝までは行きやすい、恵まれたドローでした。絶対に決勝まで進んで王楚欽/孫穎莎ペアとの再戦することを目標にしたはずです。
ところが準々決勝でルーマニアペアに惜敗してしまい、悔しいベスト8でした。
Round 16(1回戦)
フランスのA・ル・ブラン/ユアン・ジアナンペアとの対戦でした。予選を勝ち上がってきたペアです。
難しい初戦をしっかり勝つことができました。
- 第1ゲーム、接戦になり6-6まで競りますが、フランスペアに打ち込まれて6-9とリードされます。そこから強気で攻めて5連続得点し、11-9でこのゲームを取ります。逆転で第1ゲームを取れたのは大きかったです。
- 第2ゲーム、接戦で6-6まで競りますが、そこから流れをつかんで引き離し、11-7でこのゲームも取ります。二人共声がよく出ています。このゲーム、はりひなペアに不利なローテーションでしたが、早田選手はルブラン選手のボールを苦にせずしっかり攻撃できていました。
- 第3ゲーム、いろいろと噛み合わないところが増えて一方的な展開になり、2-11で落としてしまいます。
- 第4ゲーム、第3ゲームの悪い流れを引きずることなく良い入り方をします。早田選手がチャンスを作って張本選手が決めるパターンでリードを広げ、11-3で勝ち切りました。
はりひなペア、仕上がりが良かったです。
フル動画。
ハイライト。
準々決勝
ルーマニアのイオネスク/セーチペアとの対戦でした。WTTコンテンダーアンタルヤ2023の準決勝でも対戦しています。
課題を克服できず、勝てませんでした。
- 第1ゲーム、はりひなペアにとって有利なローテーション、攻守が噛み合い危なげなく11-6でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、はりひなペアにとって不利なローテーション、イオネスク選手に強打される回数が増え、早田選手が対応できず6-11で落としてしまいます。イオネスク選手にチャンスを与えてはいけません。
- 第3ゲーム、接戦になりましたが11-8でこのゲームを取ってゲームカウントを2-1にします。このローテーションだとはりひなペアのサーブはどちらも効くし、レシーブも甘くならずイオネスク選手を抑えることができます。
- 第4ゲーム、苦手なローテーションで悪い流れになります。修正できないままミスも増えて7-11で落としてしまいます。
- 最終第5ゲーム、有利なローテーションでリードを広げたかったものの5-4でコートチェンジになります。苦手意識があるのかミスが増えて逆転され、8-11で負けてしまいました。
イオネスク選手が良かったのも確かですが、不利なローテーションでの戦い方は、はりひなペアの課題です。
ハイライト。
フル動画。
みんスポからの公式動画。
まとめ
- シングルスは準々決勝で孫穎莎選手に敗れてベスト8でした。孫穎莎選手に負けはしたものの、これまでで一番良いプレーがたくさん出せた試合だっと思います。え、こんなプレーこれまでの対戦で出してなかったよね、というのがいくつもありました。そうしてフルゲームを戦えたことは大きな収穫になったはずです。
- 混合ダブルスははりひなペアの課題が出る形でルーマニアペアに惜敗し、ベスト8でした。これからパリオリンピックに向けてシード権争いが激しくなります。
大会終了後
石田コーチがインスタグラムストリーズに記した振り返り。
準決勝に進めず残念ではあるけど、練習での成果がこんなにも出せたのかというほど内容は大きく変わってきた。ひなが良く言っている【挑戦】と、私が見て感じる【コツコツ】との絶妙なバランスだった。