WTTシリーズ登場時に、ワールドカップ(個人戦)はWTTファイナルズにとって代わられました。ところが2024年に新フォーマットで復活しました。この新フォーマットは予選形式が最悪で、選手の精神的負担を無駄に増やしています。
ワールドカップ団体戦が男女混合で復活したのもそうですが、ITTFまで商業主義に走る姿勢に疑問を感じます。
*アイキャッチ画像はこちらの記事からの引用です。
ワールドカップ(個人戦)
試合形式は複雑です。
- ITTFが指定した選手48名が出場します。各協会から最大4名が出場できます。
- 現在の世界チャンピオン(孫穎莎選手)とU19の世界チャンピオン(アネット・カウフマン選手)の2名は別枠で出場できます。そのため中国人選手は5名出場します。
- 3名ずつの16グループに分かれてグループリーグ形式の予選ラウンドを行います。各グループは4ゲームずつ2試合戦って、最高勝率の選手が決勝トーナメントに進出します。
- 予選ラウンドでは必ず4ゲーム戦い、その結果は4-0、3-1、2-2、1-3、0-4のどれかになります。1試合目が2-2だった場合、2試合目を3-1で勝てたとしても、もうひとつの試合の試合結果が4-0だと予選敗退となります。この試合形式はワールドカップマカオ2024で初めて導入されました。批判が多かったにも関わらず、継続されました。
- 予選ラウンドの順位決めには、勝利ゲーム数が使われ、これが同数だった場合、総得点数と総失点数の比が使われます。実際には複数パターンあり、複雑です。
- 予選ラウンドのグループ分けには最新の世界ランクが使われ、4名ずつの区切りでドローが行われます。ドロー運の要素は無視できないものの、納得できる水準と言えます。
- 予選ラウンドでは同一協会からの選手は同一グループに入らないように調整されます。
- 決勝トーナメントは、予選ラウンドを1位通過した16名で戦います。シード数は4しかないので、ドロー運の要素が強いです。
- 決勝トーナメントでは、同一協会からの選手が対戦することへの配慮はなされません。
- 決勝トーナメントはすべて7ゲームマッチで行われます。また以前のワールドカップと異なり、3位決定戦はありません。
- 試合は男女ぞれぞれテーブル1台で進行されます。
- 優勝選手には1,500ポイントが付与されます。
以前のワールドカップでは、シード選手は本戦から出場、シード外の選手のみが予選ラウンドを戦う形式でした。新形式は世界ランク上位16名の選手にとって、決勝トーナメント進出するための壁が厚いものになっています。雰囲気的には、WTTが推進していいる商業化の影響を受けたように思えます。
最悪の予選ラウンド通過ルール
2024年に復活したワールドカップ個人戦で採用された、予選ラウンドでは必ず4ゲームを戦い、勝利ゲーム数が同じ場合は総得点数と総失点数の比で1位通過者を決めるというルールは問題の多いものでした。最悪でした。廃止して欲しかったのですが、残念ながら2025年も継続されました。初年度だけで廃止したら誰かの責任になるから、でしょうか。選手の声を尊重して欲しかったですね。
付与されるWRポイント
WTTシリーズを含む国際大会で付与されるWRポイント一覧です。優勝すると1,500ポイント付与されますが、中国トップ選手4名を含む世界の強豪が集うので、優勝の難易度はWTTチャンピオンズ並みに高いです。
出典:ITTF TABLE TENNIS WORLD RANKING REGULATION
世界卓球との違い
ワールドカップと世界卓球を比較すると、世界卓球の格の高さを実感します。
伝統のある世界卓球に対し、復活後のワールドカップは興行面を重視しすぎと感じます。また、優勝時のポイントが1,500なのは(配分として)ややバランスが悪いと思います。WTTチャンピオンズと同じ1,000で良いのではないでしょうか。
早田ひな選手が出場したワールドカップ(個人戦)一覧
ワールドカップマカオ2024(個人戦、2024年4月15日から21日)
- R16で対戦した申裕斌選手が強くてほぼ負けかけましたが、なんとか踏ん張って勝ちました。負けていたら王曼昱選手と再戦できませんでした。
- 準々決勝で王曼昱選手と再戦しました。半年前のWTTチャンピオンズフランクフルト2023では完敗でした。今回も勝てませんでしたが、試合内容ははるかに良くなっており、努力の方向性が間違っていないことを改めて証明しました。
- 結果ベスト8で、獲得したWRポイントは265でした。
ワールドカップマカオ2025(個人戦、2025年4月14日から20日)
- 史上最悪フォーマットの予選を通過して決勝トーナメントに臨みましたが、強い鄭怡静選手のボールへの順応が遅れ、0-3と追い込まれてしまいました。そこからフルゲームに持ち込んだものの、マッチポイントでの1本のミスが響いて惜しくも負けてしまいました。
- 強くて好調の鄭怡静選手と互角に戦えるようになるのが遅かったので、負けたのはしょうがないです。今大会で使用されたボールが特殊なシームレスボールで馴れていないものだったということもあるようですが、早田ひな選手曰く「それでも勝つ選手は勝つ」わけで、強くなるためにはそういうことへの対応力も向上させなければなりません。
- できれば準々決勝に進んで孫穎莎選手と対戦したかったですが、それに匹敵するぐらいの収穫が得られたはずです。
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