WTTグランドスマッシュはWTTシリーズの最上位大会です。2025年は上限の4大会が開催されます。付与されるWRポイントが大きいので、良いコンディションで臨んで結果を出したいものです。
怪我からの復帰途上にある早田ひな選手は、シングルスだけに出場して準々決勝に進出しましたが、陳幸同選手の厚い壁を突き破ることができず、結果ベスト8でした。それでも非常に大きな収穫のあった、素晴らしい大会になりました。
*アイキャッチ画像はテレビ東京卓球情報のXポストからの引用です。
WTTグランドスマッシュ
- オリンピック、世界卓球選手権大会(個人戦)と同列のWTTシリーズ最上位大会です。
- 年間最大4大会開催可能。大会運営に億円単位の費用がかかると言われています。
- 本戦8日、予選2~3日のゆったりした日程。
- シングルス、ダブルス、混合ダブルスの3種目を実施。
- シングルスの本戦は64名、うち8名は予選64名を通過した選手。
- ダブルス24ペア、混合ダブルス24ペア(共に予選なし)。
- シングルスは本戦、予選合わせて各協会から6名までしか出場できません。また世界ランク上位者から優先出場となっています。
- 世界ランク20位以内の選手参加規制はありません。
- 出場資格を持つ選手が病気や怪我以外の理由で辞退した場合、ペナルティの対象となります。
- シングルスのシードは16名。(2022年までは8名。)
- シングルスの準々決勝、準決勝、決勝のみ7ゲームマッチ、他はすべて5ゲームマッチ。(2023年からシングルスの準々決勝が7ゲームマッチに変更。)
- 優勝選手には2,000ポイントが付与されます。WTTチャンピオンが1,000ポイント、WTTスターコンテンダーが600ポイントですからダントツの高さです。
シンガポールスマッシュ2025
理由不明ですが、大会名の頭にWTTを付けません。
- 期間:2025年1月30日から2月9日
- 場所:シンガポール(日本との時差1時間、現地10:00が日本の11:00)
- 出場種目:シングルス
- 参照:WTT公式サイト、日本卓球協会公式サイト
ネット中継
- WTTがYoutubeチャンネルでT1からT4をリアルタイム配信しました。(日本ではT1、T2の視聴制限あり。)
- テレビ東京卓球チャンネルが本戦のT1をリアルタイム配信しました。
- テレビ東京は2024年、T1をTVerで、T2をYoutubeで配信しましたが、今大会はそうしませんでした。僕はTVerなしの方が好きです。
- ところが日本ではT2に視聴制限がかかり、まったく観れなくなってしまいました。最悪です。おそらく、テレビ東京がT1、T2の配信権を購入していたが、T2の配信を取りやめたためと思われますが、迷惑な話です。サイテーです。
- リアルタイム視聴できなくても、おおむね24時間以内にはテレビ東京卓球チャンネルにアップされました。これはありがたいですが、上記問題で怒り心頭です。
- 早田ひな選手の試合がT2で行われたため、僕はやむなくVPNに課金しインド経由で視聴しました。
僕は卓球中継に力を入れているテレビ東京に感謝しています。TVer+Youtubeの運用が嫌いということはありますが、事情も理解します。が、今回のT2を全く見れなくしてしまったことに関しては納得できません。同じ思いの卓球ファンは多いはずです。もう二度とこんなことを起こして欲しくないです。
シングルス出場選手
世界ランク(ほぼ)上位48名の顔ぶれです。最上位大会(かつ出場を求められる自動エントリー制)だけあって、ランキング上位選手がびっしり並んでいます。抜けているところは怪我などによる辞退か、NER(同一協会から6名までの制限)によるものです。
早田ひな選手はWR5位でした。
日本女子は早田ひな選手、張本美和選手、大藤沙月選手、伊藤美誠選手、平野美宇選手、木原美悠選手、長﨑美柚選手(ワイルドカード)の合計7名でした。
ドローセレモニー
グランドスマッシュ恒例でドローセレモニーは公開で行われました。今大会は番号の入った封筒を選ぶ形式でした。
シングルス:ベスト8
早田ひな選手は、準々決勝で陳幸同選手と対戦するまでは(シード数が16しかないことを考えると)恵まれたドローでした。準々決勝では新四天王の誰かと対戦しますが、陳幸同選手の山に入れたのは運が良かったと思ます。
昨年のシンガポールスマッシュでは、大会直前の体調不良が原因で初戦敗退しているだけに、今大会は(怪我からの復帰途上ではありますが)良いコンディションで準々決勝までは行きたかったことでしょう。そして見事準々決勝進出を決めましたが、陳幸同選手に競り負けて結果ベスト8でした。
Round 64(1回戦)
ワイルドカードで選出された、シンガポールのジョウ・ジンイー選手との対戦でした。
早田ひな選手は仕上がりが良く、快勝でした。
- 第1ゲーム、サーブが効くのとレシーブを思ったようにできることから、早田選手がリードを保つ展開になります。得点源にしているサーブ3球目攻撃を逆モーションで決めるなど気の緩みはありません。危なげなく11-5でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、不運なエッジもあって1-5と出遅れますが、落ち着いたプレーで5-5で追い付きます。早田選手は動きが良く、バックハンドも良く振れています。サーブ3球目のフォアハンド攻撃は怪我する前より威力があるかも知れません。ミスした時の動作も早田仕様で、調子の良さが分かります。ジョウ選手の追い上げを振り切って11-8でこのゲームも取ります。
- 第3ゲーム、サーブのコントロールが良く、レシーブも安定していることから早田選手がリードを広げる展開が続きます。危なげなく11-4で勝ち切りました。
回数を制限しているとのことですが、手首に負担がかかるチキータ系の技術も積極的に選択していました。回復は予定通りでしょうか。
また早田ひな選手が楽しそうにプレーしているのが印象的でした。
フル動画。
フル動画、日本語実況解説付き。
ハイライト。
試合結果を伝える記事。
Round 32(2回戦)
ドイツのニーナ・ミッテルハム選手との対戦でした。
難敵相手に流れを渡さず快勝でした。
- 第1ゲーム、早田選手のサーブが効くのに対し、ミッテルハム選手はレシーブでボールが浮くことが多く、試合の主導権を握ります。特にサーブのコントロールが良く、欲しい時にエースできています。11-6でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、早田選手がリードを広げる展開が続きます。ミッテルハム選手はいらだちを隠せません。早田選手はプレーに隙がなく、仕上がりが良いです。11-3と危なげなくこのゲームも取ります。
- 第3ゲーム、接戦で点差が開かない展開が続き、8-8まで競ります。勝負どころ、精度の高いプレーで取り切り、11-8でストレート勝利を収めました。
早田ひな選手は状態が非常に良く、頭も冴えているようでした。
フル動画。
ハイライト。
試合結果を伝える記事。
試合後のインタビュー記事。「ベスト4を狙って行きたいと思います」
試合後のインタビューで語ったこと。
早田は「腕の怪我がちょっとあるんですけど、シンガポールは暖かいのでその心配も少し減らしてくれてるので、良い状態で練習ができている」とシンガポールの気候が好影響をもたらしているとしながら、「今できないことを上手くするために練習するのはすごく大変ですし、メンタル的にもしんどいんですけど、そこをちょっとでも何かできたときに喜びに変えて、楽しみに変えて練習することを心掛けているので、常に面白く、楽しく練習はできている」と充実ぶりを語った。
引用:「ベスト4を狙っていきたい」早田ひなが見据える今大会の展望 明かした現在の充実ぶり「常に面白く、楽しく練習ができている」【シンガポールスマッシュ】
Round 16(3回戦)
アメリカのチャン・リリー選手との対戦でした。WTTスターコンテンダーリュブリャナ2024で対戦しています。
スコアよりもずっと難しい試合でしたが、しっかり勝ち切りました。
- 第1ゲーム、早田選手がリードを保つ展開が続きます。サーブが効き、レシーブからの展開も良く、バックハンドも良く振れています。危なげなく11-5でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、打ち合いを落とすことが増え、ややミスも増えて4-7とリードを許します。そこから冷静に攻めて7連続得点し、11-7でこのゲームも取ります。振り返ると、このゲームを逆転で取れたのが大きかったです。
- 第3ゲーム、チャン選手の逆襲にあい、リードを許す展開になります。6-8から点を取りに行くフォアハンドを3連続でミスしてしまい、6-11でこのゲームを落とします。修正が必要です。
- 第4ゲーム、早田選手らしいリーチを活かしたプレーも出てリードを保つ展開が続きます。厳しいコースを攻めて7-3とリードしますが、7-4とされたところでタイムアウトを取ります。タイムアウト明け、レシーブをチキータで攻めてラリー戦を仕掛け、フォアハンドでコースを突いて得点し、右手拳を何度も振ります。この1本が勝敗を分けた気がします。その後掴んだ流れを渡すことなく11-4で勝ち切り、目標としているベスト4がかかった準々決勝進出を決めました。
チャン・リリー選手に打ち負けることなく、巧みな駆け引きも見せながら勝ち切りました。試合のコントロールが素晴らしかったです。
フル動画。
ハイライト。
試合結果を伝える記事。
試合後のインタビューで語ったこと。
早田は試合後に「3ゲーム目は相手の戦術やテンポを変えてきた時の自分の調整がうまくできていなかった。そこを4ゲーム目で修正できたのは良かったなと思います」とうなずいた。
早田は「久しぶりにシンガポール・スマッシュでこういう成績を出せてうれしい。ここまで来たなら、1試合でも勝ち上がりたい。しっかりコンディションを整えて臨みます」と気合を入れた。
準々決勝
陳幸同選手との対戦でした。陳夢選手のWRからの離脱に伴い、新四天王に繰り上がりました。
持てる力を出し切ってフルゲームに持ち込みましたが、勝てませんでした。陳幸同選手は強かったです。
- 第1ゲーム、接戦で点差の開かない展開が続きます。8-8から2本、フォアハンドの強打がオーバーミスになって9-11でこのゲームを落とします。やや陳幸同選手のボールに合っていない感じがします。
- 第2ゲーム、6-2とリードしていたところから6-6で追い付かれ、頭を掻きます。陳幸同選手のコースが厳しいのもありますが、対応できていないところが目立ちます。9-6としてからまた9-9で追い付かれますが、難しいラリー戦2本を制して吠えます。11-9でこのゲームを取り返します。
- 第3ゲーム、実力拮抗で8-8まで競ります。そこから打ち合いを制して10-8とし絶叫します。最後はサービスで11-8で逃げ切ってこのゲームも取ります。
- 第4ゲーム、5-6となったところで陳幸同選手がタイムアウト取った際、早田選手はベンチに座って岡トレーナーに背中をマッサージしてもらいます。心配しましたが問題にはならなかったようです。このゲームも競った展開が続きますが、9-11で落としてしまいます。陳幸同選手のコース取りが厳しいです。ゲームカウントは2-2に。
- 第5ゲーム、点差の開かない展開が続きますが、勝負どころで競り負けてしまい8-11で落としてしまいます。
- 第6ゲーム、早田選手がリードを保つ展開が続きますが、追い上げられて9-8になります。なんとか踏ん張って11-8でこのゲームを取り返し、勝負は最終第7ゲームへ。
- 最終第7ゲーム、陳幸同選手が実力差を見せつけるような展開になり、これまでの流れを失って接戦に持ち込めず、4-11で悔しい敗戦になりました。それでも最終ゲーム以外は9点、8点という接戦で、ここまで戦えるぐらい戻せてきていることは大きな自信になったことでしょう。
新四天王はそうそう勝たせてくれません。行きたかったベスト4には一歩及びませんでしたが、怪我からの復帰を目指すシーズン2の現状としては十分に満足・納得できる結果だと思います。
フル動画。
日本語実況解説、第6ゲームから。
ハイライト。
試合結果を伝える記事。
試合後のインタビューで語ったこと。
「今回の負けは実力として負けたなと言う感じがある。これがあったからこそ強くなれた、といつか言えるように頑張りたい」
「ケガが明けてから練習してきたことが出せたところもあったり、出せなかったところもある。出せなかったところは技術不足。試合の中でいろんな調整をしながらやっていたけど、最終的に上手く出来なかったので、そこは練習のみだと思う。」
プレーへの制限は、かなり外していた印象でした。このまま順調に回復して欲しいです。
パリ五輪で痛めた左腕は、3連覇した1月の全日本選手権時より疲労があった。その中で8強入りし、「この強度でもいける」と体の状態に前進を感じられたという。「これがあったからこそ強くなれた、と言えるように頑張りたい」と前を向いた。
まとめ
- 恵まれたドロー運を活かして準々決勝に進出しますが、新四天王のひとりである陳幸同選手の厚い壁を突破することはできず、惜しくもベスト8でした。
- 陳幸同選手とのフルゲームの激戦から得た収穫は非常に大きなものだったはずです。それだけで、今大会を頑張った価値があると言えるでしょう。
- 怪我からの復帰途上ですが、陳幸同選手とあれだけの戦いができるところまで戻せているのは、すこぶる明るい材料です。次の大会(10日後に開催されるアジアカップ)も全力で応援します。
- 付与されたWRポイントは350です。現在の早田ひな選手にとっては十分に大きいです。
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