早田ひな選手はパリオリンピックのシングルス代表です。厳しい選考レースを戦い抜き、ダントツの1位でシングルスの代表権を獲得しましたが、パリオリンピックでメダルを狙うにはシード権の確保が極めて重要になります。
パリオリンピックのシングルスでは、準決勝まで中国人選手に当たらないようにしたいです。ドローの仕組みから、第3、第4シードならそれを確実にできます。そして第2シードを確保できたら、世界最強である孫穎莎選手と決勝まで当たらないようにできますが、それには手が届きませんでした。
この記事は、早田ひな選手のパリオリンピック本番に向けたシード権確保への戦いの記録です。
*アイキャッチ画像は石田コーチのインスタグラムからの引用です。
パリオリンピックシングルスの試合形式とドロールール
パリオリンピックシングルスの試合形式とドロールールは、他の国際大会と大きく異なっています。
- シングルスに出場するのは64から70名。各国からは最大2名しか出場できません。
- 予選があり、本戦はR64から開始。シード数は64。世界卓球選手権(個人戦)が32ですから倍です。シード数が最大でも16しかなくドローゲームになっているWTTシリーズとは大きく異なります。
- 上位シード16名はR32から登場。全日本選手権大会で言うスーパーシード扱い。
- 第1シードは左上、第2シードは右下のスロットに入ります。第3、第4シードはドローにより右上から左下のスロットに入ります。これは他の国際大会と同じです。
- ただし同じ国から出場した選手は反対の山に入ります。そのため同じ国の選手は決勝まで当たりません。このルールを採用しているのはアジアカップ、アジア競技大会など特定の大会に限られています。
- 試合はすべて7ゲームマッチ。
- 3位決定戦あり。(世界卓球選手権などは3位決定戦がないので、準決勝で負けてベスト4でも銅メダル獲得。)
第3、第4シードなら中国人選手と準決勝まで当たりません。第1シードになる可能性が濃厚な孫穎莎選手と同じ山に入るかどうかは、ドロー運次第(確率1/2)です。第5から第8シードになると、確率1/2で準々決勝で中国人選手と当たってしまいます。
メダルを目指すなら、中国人選手と当たらずに準決勝まで勝ち上がり、準決勝で中国人選手をひとり倒して決勝に進みたいです。それができれば銀メダル以上が確定します。準決勝で負けた場合、順当ならメダル決定戦で反対の山の中国人選手に負けた選手と対戦します。運が悪いとメダル決定戦で中国人選手と対戦することになります。
もし第2シードを確保できると、世界最強の孫穎莎選手と決勝まで当たりません。孫穎莎選手のいる山に入るか、中国2番手の選手(陳夢選手か王曼昱選手の見込み)の山に入るかをドロー運に委ねるよりも、メダル獲得の可能性が高くなります。が、現在の実力差では第2シードを確保するのは難しいです。
第2シードには届かないけど第3シードは誰にも渡さない、を目標にするのが良さそうです。
シングルス第3シード死守に向けて
パリオリンピックのシングルスのシードは7月16日のWRで決まります。次はシンガポールスマッシュ後の保有ポイントの、7月16日有効分をまとめたものです。(計算間違っているかも)同一国の3番手以降の選手は除外しています。
意外ですが、1位は王曼昱選手です。WRポイントは1年で失効するためそうなってしまうのですが、孫穎莎選手の圧倒的な安定性を考えると、7月16日には余裕で1位になるでしょう。
早田ひな選手は3位です。4位以下との差はチャンピオンズ1大会の結果で簡単に逆転する程度しかありません。まず第4シード以内を確実にすることが重要ですが、余裕を持って第3シードを死守したいです。まずサウジスマッシュとWTTコンテンダーリオデジャネイロでしっかり結果を出してポイントを稼ぎたいです。
シード権確保への戦いの記録
第3シード死守を目標に、WRポイントを積み増したいです。これはその挑戦の記録です。適宜更新します。
独自に計算した表は、シードが決まると思われる7月16日有効分のWRポイントによるものです。
WTTチャンピオンズ仁川2024(3月27日から31日)
WTTチャンピオンズ仁川2024は準々決勝で孫穎莎選手に負けてベスト8だったので、保有ポイントは微増にとどまりました。
ワールドカップマカオ2024(個人戦、4月15日から21日)
ワールドカップマカオ2024は準々決勝で王曼昱選手に負けてベスト8だったので、保有ポイントは微増にとどまりました。また、2位との差が開きました。また、R16で申裕斌選手に負けなくて良かったです。
サウジスマッシュ2024(5月1日から11日)
サウジスマッシュ2024でベスト4に入ったので、(失効する世界卓球ダーバン大会で得た700ポイントの代わりに)700ポイント補充できて良かったです。これにより申裕斌選手との差を広げることができました。
なお、今大会でバトラー選手に負けた王曼昱選手はシングルス代表から漏れ、陳夢選手が選ばれました。これで中国のシングルス代表は孫穎莎選手、陳夢選手となりました。
WTTコンテンダーリオデジャネイロ2024(5月20日から26日)
申裕斌選手との差をわずかに広げました。
オリンピックシードを狙う選手の出場予定
これは5月28日の世界ランキングを元にした、7月16日時点のシード順に、チャンピオンズ重慶以降オリンピック前までの大会出場予定を調べたものです。
- 中国人選手はチャンピオンズ重慶を最後にコンテンダー、スターコンテンダーには出場しません。絶対王者はオリンピックへの臨み方が違います。
- 早田ひな選手はラゴス以外の全ての大会に出場します。怪我のリスクが怖いです。
- 申裕斌選手はチュニス以外の全ての大会に出場します。怪我のリスクを承知で決断したはずです。
- 平野美宇選手も多くの大会に出場します。
- 第8シード確保に向けて余裕がない鄭怡静選手と田志希選手も多くの大会に出場します。
平野美宇選手は何とかして第8シードに滑り込みたいところです。
WTTチャンピオンズ重慶2024(5月30日から6月3日)、WTTコンテンダーザグレブ2024(6月3日から9日)
この2大会は日本人選手の上位進出が目立ちました。
- 早田ひな選手の第3シードは確定的です。
- 平野美宇選手が第8シードに上昇しました。残り2大会で8位内を守り抜きたいです。
WTTスターコンテンダーリュブリャナ2024(6月10日から16日)
- 早田ひな選手は優勝して申裕斌選手との差を広げました。
- チームメイトの援護射撃もあって、平野美宇選手は8位をキープしています。
WTTコンテンダーラゴス2024(6月17日から23日)
- 日本人選手の出場はありませんでした。
- 平野美宇選手は8位をキープしています。
- 優勝したインドのスリージャ・アクラ選手が16位に上がってきました。
WTTコンテンダーチュニス2024(6月24日から30日)
- 早田ひな選手は混合ダブルスのみ出場、平野美宇選手は出場しませんでした。
- 平野美宇選手の第8シードはギリギリの状態です。
WTTスターコンテンダーバンコク2024(7月2日から7日)
- 早田ひな選手は混合ダブルスのみ出場、平野美宇選手はエントリーしていましたが、キャンセルしました。
- 9位以下の選手が勝ち上がれなかったため、平野美宇選手はギリギリで第8シードを守れました。
7月16日更新のランキング
パリオリンピックのシードは7月16日に更新されたWRで行われます。次はその結果です。
計算通りでした。早田ひな選手は第3シード、平野美宇選手は第8シードを獲得しました。