今年から、アジア選手権大会が翌年の世界卓球選手権(個人戦)の予選を兼ねることになりました。そのため今大会の個人戦にエントリーした選手に、世界卓球の出場権獲得のチャンスがあります。日本人選手は、シングルスを棄権した早田ひな選手を除いて、男女ともシングルス、ダブルス、混合ダブルスにエントリーした選手が世界卓球の出場権を獲得しました。
また女子団体は決勝で中国を破って優勝する、歴史的快挙を成し遂げました。
*アイキャッチ画像はテレ東卓球情報のXポストからの引用です。
大会の仕様
- 2年に1度、奇数年に開催されるアジア地区の大会ですが、アジア選手権大会が世界卓球2025ドーハ大会の予選を兼ねることになったため、偶数年の2024年に開催されました。
- 種目はシングルスのみによる男女団体戦、男女シングルス、男女ダブルス、混合ダブルス。
- 団体戦は本戦から6ヶ国+予選リーグを勝ち上がった2ヶ国の計8ヶ国によるトーナメント戦。
- シングルスはRound 128から、ダブルス、混合ダブルスはRound 64または32からと試合数が多い。
- 全種目全試合5ゲームマッチ。
- 優勝した選手(チーム)に付与されるWRポイントは500。
世界卓球2025ドーハ大会の出場資格付与条件
今大会は世界卓球2025ドーハ大会(個人戦)の予選を兼ねており、条件を満たした選手に出場資格が付与されます。
シングルス
- R32で勝利してベスト16に進出した選手。
- R32で負けた16名が1試合行いその勝者8名。
- さらに順位決定戦を行い25位から32位を決定し、アジアに割り当てられた枠が埋まるまで上位選手から。
ここはベスト16に進出して一発で決めたいところです。
今大会で出場資格を穫れなかった場合でも、世界ランキング枠に空きがあるなら、次の順序で付与されます。
- 2025年全日本選手権大会シングルス優勝者。
- 最終エントリー日の2週間前の世界ランキング上位順。
ダブルス、混合ダブルス
- R16で勝利してベスト8に進出したペア。
- R16で負けた8ペアが1試合行いその勝者4ペア。
- さらに順位決定戦を行い13位から16位を決定し、アジアに割り当てられた枠が埋まるまで上位ペアから。
ここはベスト8に進出して一発で決めたいところです。
今大会で出場資格を穫れなかった場合でも、世界ランキング枠に空きがあるなら、日本卓球協会がペアを選出します。
大会情報
- 期間:10月7日から13日
- 場所:カザフスタンのアスタナ(日本との時差4時間、現地10:00が日本の14:00)
- 出場種目:シングルス、団体
- 参照:ITTFの公式サイト、日本卓球協会の公式サイト
ITTFの扱いは「大陸大会」でシングルスで優勝しても500ポイントしか付与されませんが、出場メンバー的には世界選手権(優勝すると2000ポイント)と大差ありません。
選手選考基準
選手選考基準は少し複雑でしたが、ざっくり言うとパリオリンピック出場者3名+アジア選手権日本代表選考会優勝者+前記を除いたWR最高位選手の5名です。
また今大会は世界卓球2025ドーハ大会の予選を兼ねることから、非常に重要な大会に位置づけられています。それは派遣者名簿(日本卓球協会のホームページから引用)を見ても分かります。
ネット中継
- ATTUのYouTubeチャンネルがT1からT10をリアルタイム配信しました。
- ところが対戦相手が中国または台湾の試合は、中国国内の配信サービスを除き、全世界で配信されませんでした。ひどすぎます。
全テーブルが配信対象だったので、ラウンドの早い試合(シングルスのR64やダブルスのR32)も視聴できたのは良かったのですが、対戦相手が中国または台湾の試合は中国国内でしか視聴できないという残念極まりないものでした。WTTの配信のまともさを見直した人も多かったことでしょう。
違法YouTubeチャンネル
たまたまですが、YouTubeで違法に動画配信(中国国内の動画配信サービスからの横流し)するチャンネルがあり、違法と知りながらもそれに頼るしかありませんでした。Xを見る限り多くの人は違法と気付かなかったようです。そんな状況を生み出しているATTU、大嫌いです。
女子団体決勝はATTUが配信しませんでしたが、上記違法チャンネルで視聴できました。なお当ブログのポリシーにより、違法チャンネルのアーカイブへのリンクは記載していません。
また上記違法チャンネルは一部の試合しか横流し配信しておらず、視聴手段がない試合も多数発生しました。
テレ東卓球チャンネルが女子団体決勝戦のアーカイブを公開
テレ東卓球チャンネルが歴史的快挙となった女子団体決勝戦のアーカイブを(試合が終わった数日後に)公開しました。アーカイブの公開とテレビ番組で利用する権利を購入したのだと思われます。ありがたいです。
今大会の見どころ
団体戦:優勝(金メダル)
日本は前回大会でベスト4だったので、本戦(決勝ラウンド)からの登場でした。ドローの結果、予選を通過した北朝鮮は中国と、シンガポールは日本と対戦することになりました。
北朝鮮は確率1/2で中国か日本と対戦するドローでしたが、中国になりました。その北朝鮮は恐ろしく強く、孫穎莎選手が不調だったこともあってまさかの展開になりました。中国は3-1で勝ちましたが、日本との対戦になっていたら怖かったです。
そして決勝で中国と対戦して3-1で勝利して優勝しました。決勝で中国を破って優勝したのは50年ぶりの快挙です。
なお、早田ひな選手が試合に出場することはありませんでした。怪我から復帰し練習を再開してまだ10日しか経っていないことを考えれば、致し方なかったと思います。
表彰式。
メダル授与セレモニーの様子。最高の笑顔。
メダルは監督にも授与されました。
引用:国際卓球連盟のXポスト
準々決勝
シンガポールチームとの対戦でした。日本は張本美和選手、伊藤美誠選手、平野美宇選手が出場しました。
ストレート勝利でメダルを確定させました。
試合結果を伝える記事。
第1試合
張本美和選手とLOY Ming Ying選手の対戦でした。
ストレート勝利でエース起用に応えました。
フル動画。
第2試合
伊藤美誠選手とSER Lin Qian選手の対戦でした。
快勝でした。
フル動画。
第3試合
平野美宇選手とTAN Zhao Yun選手の対戦でした。
粘り強いカットマンに苦しめられましたが、しっかり勝ち切りました。
フル動画。
準決勝
インドチームとの対戦でした。準々決勝で韓国チームとの激戦を制し、歴史的勝利でメダルを確定させました。日本は張本美和選手、大藤沙月選手、伊藤美誠選手が出場しました。
チームは3-1で勝ちました。決勝進出です。
試合結果を伝える記事。
第1試合
張本美和選手とA・ムカルジー選手の対戦でした。A・ムカルジー選手はフォアが表ソフト、バックがアンチの異質型です。団体戦で申裕斌選手と田志希選手を倒しています。
フル動画。
第2試合
大藤沙月選手とマニカ・バトラー選手の対戦でした。大藤沙月選手は初代表でこれがデビュー戦でした。
本来の力を出せずに負けてしまいました。
フル動画。
第3試合
伊藤美誠選手とS・ムカルジー選手の対戦でした。S・ムカルジー選手はフォアが表ソフトの異質型です。
異質型に強い伊藤美誠選手がその実力を発揮して、ストレート勝利でした。
フル動画。
第4試合
張本美和選手とマニカ・バトラー選手の対戦でした。
しっかり勝ってエース起用に応えました。
フル動画。
決勝
中国チームとの対戦でした。日本は張本美和選手、伊藤美誠選手、平野美宇選手が出場しました。
歴史的快挙を伝える記事。
ハイライト。
第1試合
張本美和選手と王芸迪選手の対戦でした。
接戦を制して勝ちました。日本人トップ選手にとって、王芸迪選手は倒せない相手ではなくなりました。
フル動画。
試合結果を伝える記事。
第2試合
伊藤美誠選手と孫穎莎選手の対戦でした。
孫穎莎選手は明らかに不調でしたが、それでも1ゲームも取らせてくれませんでした。
フル動画。
試合結果を伝える記事。
第3試合
平野美宇選手と陳幸同選手の対戦でした。WTTチャンピオンズマカオ2024のR32でストレート負けして以来の対戦です。
接戦を制して勝ち、前回対戦のリベンジを果たしました。平野美宇選手、強かったです。
フル動画。
試合結果を伝える記事。
第4試合
張本美和選手と孫穎莎選手の対戦でした
0-2からの劇的な逆転勝利で、チームは優勝に導きました。孫穎莎選手は本調子ではなかったとは言え、そう簡単に負ける相手ではありません。張本美和選手、恐ろしく強かったです。
フル動画。
シングルス:ベスト64(棄権)
早田ひな選手はR64からの登場で、R16で勢いのある中国の石洵瑶選手と、準々決勝は誰が上がってきても強敵と当たるドローでした。
ところがR64の試合時刻になってもコートに現れず、5分以上経過してから棄権が伝えられました。復帰戦を楽しみにしていたファンはつらいですが、一番つらいのは早田ひな選手本人のはずです。
世界卓球2025ドーハ大会の出場資格獲得選手
シングルス
早田ひな選手を除いて、出場した選手全員が獲得しました。
男子は張本智和選手、戸上隼輔選手、篠塚大登選手、吉村真晴選手、松平賢二選手。女子は張本美和選手、伊藤美誠選手、平野美宇選手、大藤沙月選手。
早田ひな選手は2025年全日本選手権大会のシングルスで優勝するか、世界ランキング枠で拾われれば、世界卓球2025ドーハ大会に出場できます。
ダブルス
男子は張本智和/松島輝空ペア、戸上隼輔/篠塚大登ペアが、女子は張本美和/木原美悠ペア、大藤沙月/横井咲桜ペアが獲得しました。
混合ダブルス
吉村真晴/大藤沙月ペア、松島輝空/張本美和ペアが獲得しました。
よってはりひなペアは2025年の世界卓球選手権には出場できません。
まとめ
- 女子団体は決勝で最強中国を破って優勝する歴史的快挙を成し遂げました。
- 張本美和選手は団体戦で王芸迪選手、孫穎莎選手を、シングルスの準々決勝で陳幸同選手に勝利し、恐ろしいほどの強さを見せました。決勝で北朝鮮のキム・クンヨン選手に負けましたが、堂々の銀メダルでした。
- 早田ひな選手はシングルスの初戦を怪我のため棄権しました。
- 早田ひな選手を除き、大会にエントリーしたシングルス全員、ダブルスペア、混合ダブルスペア全員が2025世界卓球ドーハ大会の出場資格を獲得しました。
- 張本智和選手が日本人選手50年ぶりの優勝を手にしました。
- 女子ダブルスは大藤沙月/横井咲桜ペアが優勝、木原美悠/張本美和ペアが準優勝でした。
- 総じて、日本人選手の活躍が目立った大会になりました。
- が、試合数の多さに対して大会日程が短く、過密スケジュールでとてもアスリートファーストとは言えない運営でした。これはITTFが介入してでも改善させるべきですね。
早田ひな選手からのメッセージ
いつも沢山の応援ありがとうございます。
今回アジア選手権に出場するため練習を再開していたのですが、現地での調整中に腕を再度痛めてしまいシングルスでの試合を棄権することになりました。試合を楽しみにしてくださっていたファンの皆さん、ご心配をお掛けしてしまいすみません🙇♂️…
— 早田ひな (@hayata_hina) October 11, 2024
怪我を完治させて、強い身体になってコートに戻って来てください。何ヶ月かかろうとも楽しみに待っています。
おまけ
日本女子チーム、コーチ、監督、スタッフ
女子団体授賞式後の記念撮影。
引用:日本卓球協会のXポスト
地上波TVでの報道
報道ステーションが(試合映像はありませんが)詳しく伝えました。
【卓球女子】アジア制覇の偉業 #張本美和 の“勢い”と“安定感”
▼1972年に始まった『アジア選手権』
これまで全27回のうち、中国が19回優勝
日本の優勝は2021年以来も、この年は中国が不参加
→“中国を破って優勝”は1974年以来、50年ぶりの快挙▼優勝の立役者 張本美和選手について… pic.twitter.com/aKcScPZJPI
— 報道ステーション+サタステ (@hst_tvasahi) October 10, 2024
怪我の状況について
10月16日に日本生命主催のトークショーに参加し、その後取材に応じました。怪我は「再発」とありますね。
そのトークショーのダイジェストが公開されました。日テレスポーツさん、ありがとう。