国際大会

ワールドカップマカオ2025(個人戦)の結果詳細

ITTFが主催していたほとんどの大会は、2021年からWTTシリーズに置き換えられました。ワールドカップ(個人戦)はWTTファイナルズに代わり、ワールドカップ(団体戦)は廃止されましたが、団体戦が混合団体ワールドカップとして復活したのに続き、個人戦も新フォーマットで復活しました。

ところが個人戦の新フォーマットは史上最悪でした。まさか継続するとは思っていませんでしたが、2年目も同じフォーマットで開催されたので驚くと同時にひどくがっかりしました。

早田ひな選手は決勝トーナメント初戦で強い鄭怡静選手のボールへの順応が遅れ、0-3と追い込まれてしまいました。そこからフルゲームに持ち込んだものの、マッチポイントでの1本のミスが響いて惜しくも負けてしまいました。

*アイキャッチ画像はテレ東卓球情報のXポストからの引用です。

ワールドカップ(個人戦)

試合形式は複雑です。

  • ITTFが指定した選手48名が出場します。各協会から最大4名が出場できます。
  • 現在の世界チャンピオン(孫穎莎選手)とU19の世界チャンピオン(アネット・カウフマン選手)の2名は別枠で出場できます。そのため中国人選手は5名出場します。
  • 3名ずつの16グループに分かれてグループリーグ形式の予選ラウンドを行います。各グループは4ゲームずつ2試合戦って、最高勝率の選手が決勝トーナメントに進出します。
  • 予選ラウンドでは必ず4ゲーム戦い、その結果は4-0、3-1、2-2、1-3、0-4のどれかになります。1試合目が2-2だった場合、2試合目を3-1で勝てたとしても、もうひとつの試合の試合結果が4-0だと予選敗退となります。この試合形式はワールドカップマカオ2024で初めて導入されました。批判が多かったにも関わらず、継続されました。
  • 予選ラウンドの順位決めには、勝利ゲーム数が使われ、これが同数だった場合、総得点数と総失点数の比が使われます。実際には複数パターンあり、複雑です。
  • 予選ラウンドのグループ分けには最新の世界ランクが使われ、4名ずつの区切りでドローが行われます。ドロー運の要素は無視できないものの、納得できる水準と言えます。
  • 予選ラウンドでは同一協会からの選手は同一グループに入らないように調整されます。
  • 決勝トーナメントは、予選ラウンドを1位通過した16名で戦います。シード数は4しかないので、ドロー運の要素が強いです。
  • 決勝トーナメントでは、同一協会からの選手が対戦することへの配慮はなされません。
  • 決勝トーナメントはすべて7ゲームマッチで行われます。また以前のワールドカップと異なり、3位決定戦はありません。
  • 試合は男女ぞれぞれテーブル1台で進行されます。
  • 優勝選手には1,500ポイントが付与されます。

以前のワールドカップでは、シード選手は本戦から出場、シード外の選手のみが予選ラウンドを戦う形式でした。新形式は世界ランク上位16名の選手にとって、決勝トーナメント進出するための壁が厚いものになっています。雰囲気的には、WTTが推進していいる商業化の影響を受けたように思えます。

最悪だった予選ラウンド通過ルール

昨年の大会で初採用された、予選ラウンドでは必ず4ゲームを戦い、勝利ゲーム数が同じ場合は総得点数と総失点数の比で1位通過者を決めるというルールは問題の多いものでした。最悪でしたね。廃止して欲しかったのですが、残念ながら継続されました。初年度だけで廃止したら誰かの責任になるから、でしょうか。選手の声を尊重して欲しかったですね。

大会情報

ネット中継

  • テレビ東京卓球チャンネルが全試合をリアルタイム配信しました。T1は男子、T2は女子の2台進行です。
  • リアルタイム視聴できなくても、おおむね24時間以内にはテレビ東京卓球チャンネルにアップされました。ありがたいです。

シングルス出場選手

WR上位36名の顔ぶれです。孫穎莎選手が別枠でエントリーしているため、中国人トップ選手が4名+蒯曼選手の5名います。

早田ひな選手はWR6位でした。

WR上位36名の顔ぶれ

日本人選手で出場したのは早田ひな選手、張本美和選手、大藤沙月選手、伊藤美誠選手の4名です。

予選ラウンド:1位通過

早田ひな選手はドローによりドイツのニーナ・ミッテルハム選手、タイのオラワン・パラナン選手と同じグループ7に入りました。

早田ひな選手はオラワン選手に4-0で勝利し、予選ラウンドを1位で通過しました。

ドローセレモニー。YouTubeでの生配信はなく、後日アーカイブが公開されました。

ドローセレモニーでの日本人女子選手の様子。すっごく楽しそう。

第1試合

ドイツのニーナ・ミッテルハム選手との対戦でした。シンガポールスマッシュ2025で対戦しています。

ニーナ・ミッテルハム選手

ミッテルハム選手は初日のオラワン戦で腰痛が再発したため、棄権となりました。

ニーナ・ミッテルハム選手との対戦のスコア表

そのため早田ひな選手は第2試合のオラワン戦が今大会(試合でコートに立つ)初戦となります。2ゲーム取れば予選通過が決まりますが、観てる方は緊張しますね。

第2試合

タイのオラワン・パラナン選手との対戦でした。アジアカップ2025の予選ラウンドで対戦し、危うく負けるところでした。

オラワン・パラナン選手

前回対戦時の経験が活きていたようで、しっかりストレートで勝ちました。

オラワン・パラナン選手との対戦のスコア表

  • 第1ゲーム、前回対戦時はサーブレシーブに苦労しましたが、今日は序盤から積極的なレシーブで攻めます。サーブも効いて早田選手がリードを広げる展開が続きます。危なげなく11-5でこのゲームを取ります。両ハンドのミスの少なさ、動きの良さから仕上がりは良いと思いました。
  • 第2ゲーム、早田選手がリードを保つ展開が続きます。10-8で先にゲームポイントを握りますが、デュースに持ち込まれます。しっかり攻めて13-11でこのゲームも取り切り、控えめに吠えます。2ゲーム取れたので、決勝トーナメント進出決定です。
  • 第3ゲーム、消化ゲームではあるものの、いろんな技術を出しながらゲームを取りに行く姿勢を見せます。それはプレー内容、得点時の咆哮に表れます。11-7でこのゲームも取ります。
  • 第4ゲーム、流してもいいゲームですが、早田選手はこの機会を無駄にはせず、5-6でタイムアウトを取ってまで勝負に、結果にこだわりを見せます。点差が開かない展開が続いて9-9まで競りますが、11-9で勝ち切って4-0のストレート勝利を収めました。

今大会、金恵美コーチが帯同キャンセルになったのですが、しっかり調整できているようでした。

フル動画。

ハイライト。

試合後のインタビュー。テレビ東京制作版。

試合後のインタビュー。現地ITTFスタッフ制作版。

試合結果を伝える記事。

この試合のスーパープレー。

決勝トーナメント:ベスト16

シード数は4、残りは完全ランダムのドローです。

引用:卓球王国のXポスト

早田ひな選手はR16で鄭怡静選手と、順当なら準々決勝で孫穎莎選手と対戦するドローでした。孫穎莎選手と対戦したいところでしたが、強い鄭怡静選手に負けてしまい、結果ベスト16でした。

Round 16

鄭怡静選手との対戦でした。アジアカップ2025の予選で対戦して、負けています。絶対にリベンジしたいです。

鄭怡静選手

鄭怡静選手が強く、ミスが多かった早田ひな選手は0-3と追い込まれたところからフルゲームに持ち込みますが、最後の1点が遠く負けてしまいました。

鄭怡静選手との対戦のスコア表

  • 第1ゲーム、バックハンドのレシーブでボールをネットにかける、フォアハンドの強打もミスするなど流れをつかめません。9-10と先にゲームポイントを握られますが、粘ってデュースに持ち込みます。最後ミスが続いて11-13でこのゲームを落とします。このゲームでロングサーブを3本レシーブミスするなど明らかに状態が良くないです。
  • 第2ゲーム、今大会好調の鄭怡静選手にリードを許す展開が続きます。今日はサーブも一撃で打ち抜かれることが多いです。普段なら決まっている回り込みフォアハンドもミスになり、8-11でこのゲームも落とします。
  • 第3ゲーム、両選手の今日の状態を象徴するかのようなプレー内容が続きます。5-11でこのゲームも落としてしまい、後がなくなります。
  • 第4ゲーム、ようやく早田選手らしいプレーが出るようになり、リードを広げる展開が続きます。サーブも効くようになり、11-6でこのゲームを取り返します。
  • 第5ゲーム、接戦で点差が開かない展開が続きます。早田選手が今日の状態で、強い鄭怡静選手になんとか喰らいついている状態です。10-9と先にゲームポイントを握りますが、鄭怡静選手に打ち込まれてデュースになります。そこから胃が痛くなるような打ち合いが続きます。ようやく鄭怡静選手のボールに順応し、11-15でこのゲームも取って、ゲームカウントを2-3にします。
  • 第6ゲーム、ミスが減り、動きが良くなり、流れをつかんでリードを広げる展開が続きます。ようやくエンジン全開になりました。こんなカウンタープレーができるなら、もっと早くその状態になって欲しかったと思いました。11-4でこのゲームも取ってフルゲームに持ち込みます。
  • 最終第7ゲーム、第6ゲームの流れそのままに行きたいところですが、ゲームが変わるとそうは行かないもので、攻撃性を高めた鄭怡静選手に押されて0-4スタートになります。そこから追い上げて8-8とし、10-9と先にマッチポイントを握って絶叫します。ここでサーブ3球目攻撃をやや強引な打ち方でミスしてしまいます。この1本は悔いが残ります。デュース後流れを渡してしまい、10-12で惜しくも負けてしまいました。

今大会のボールは特殊なシームレスボールで、中国人選手も対応に手を焼いているそうです。それでも問題なくプレーできる選手はたくさんいるので、馴れないボールへの対応力も備えなければならない実力のひとつです。

早田ひな選手は結果的に鄭怡静選手のボールに順応するのが遅れて0-3スタートとなり、強くて状態の良い鄭怡静に負けてしまいました。それでもフルゲームに持ち込めたこと、最終ゲーム10-9からの1本のチャンスを逃して負けたこと、それらの経験のすべてが早田ひな選手を強くしてくれるはずです。

フル動画。

ハイライト。

最終ゲームのみ、下カメバージョン。

試合後のインタビュー。必見です。

試合結果を伝える記事。

この試合のスーパープレー。

まとめ

  • 史上最悪フォーマットの予選を通過して決勝トーナメントに臨みましたが、強い鄭怡静選手のボールへの順応が遅れ、0-3と追い込まれてしまいました。そこからフルゲームに持ち込んだものの、マッチポイントでの1本のミスが響いて惜しくも負けてしまいました。
  • 強くて好調の鄭怡静選手と互角に戦えるようになるのが遅かったので、負けたのはしょうがないです。今大会で使用されたボールが特殊なシームレスボールで馴れていないものだったということもあるようですが、早田ひな選手曰く「それでも勝つ選手は勝つ」わけで、強くなるためにはそういうことへの対応力も向上させなければなりません。
  • できれば準々決勝に進んで孫穎莎選手と対戦したかったですが、それに匹敵するぐらいの収穫が得られたはずです。

おまけ

早田ひな選手は元気です。左腕は鄭怡静選手との激戦にも耐えてくれました。これからは上がっていくだけ。そしてワールドカップマカオの翌週、金曜日からWTTコンテンダーチュニスの本戦です。

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