パリオリンピック出場選手の選考には、世界ランキングではなくて日本独自の選考ポイントが使われます。第1回パリオリンピック選考会(2022 LION CUP TOP32)に続いて、小型版パリオリンピック選考会とも言える、TリーグNOJIMA CUP 2022が開催済みで、早田ひな選手はどちらの大会も優勝しました。
早田ひな選手は準決勝で伊藤美誠選手に敗れ、3位決定戦で長﨑美柚選手に勝ち、結果3位でした。
*アイキャッチ画像はテレビ東京卓球特設サイトからの引用です。
大会概要
- 期間:2022年9月2日、3日
- 場所:福岡県・アクシオン福岡
- 種目:シングルスのみ
- 試合方法:選考資格を得た32名によるトーナメント
- 順位決定戦:8位まであり
- 試合形式:7ゲームマッチ
- 参照:日本卓球協会の公式ページ
順位に応じてパリ五輪選考ポイントが付与されます。
ネット中継・放送
ネット中継は、第1回パリオリンピック選考会に続いてテレビ東京が担当しました。テレビ東京卓球チャンネルのYoutube配信です。第1回同様、2本のストリーミングによる生中継+全テーブル全試合のアーカイブ動画という構成の予定でしたが、大会当日になってストリーミングが1本追加されました。ところがT1はカメラが固定でT1に割り当てられた試合がない時間帯は配信停止となる、もったいない運用でした。せっかくのストリーミングチャンネルなので、有効活用して欲しいものです。
そうは言ってもテレビ東京卓球チャンネルの対応は素晴らしいもので、卓球ファンとしては感謝しかありません。
また、女子の決勝戦も第1回同様、テレビ東京系列で生中継されました。
ドロー
ドローは大会前日に会場にて公開(ネット中継)で行われました。
第1回大会の結果でシードされました。トップシード8名は色を塗ってあります。また、前回の対戦で負けた選手とは反対の山に入るルールが適用されました。(第1回大会のドロー時に案内がありました。)
ドローとは言っても前回大会で8位まで順位決定していること、前回の対戦で負けた選手とは反対の山に入ることから、ほとんどドロー運の作用を感じません。
前日練習を終えて帰るところ。
1回戦前練習風景。
試合結果
早田ひな選手は準決勝で伊藤美誠選手に敗れ、3位決定戦で長﨑美柚選手に勝ち、結果3位でした。
Round 32(1回戦)
伊藤友杏選手との対戦でした。伊藤選手は小学6年生で、男女選考合宿(U12)の結果選考されました。
やりにくさもあったと思いますが、しっかり勝つことができました。
フル動画。
Round 16(2回戦)
竹谷美涼選手との対戦でした。竹谷選手は中学2年生で、男女選考合宿の結果選考されました。
しっかり勝つことができました。第4ゲームでミスが増えたのは反省点ですね。
フル動画。
準々決勝
平野美宇選手との対戦でした。TリーグNOJIMA CUP 2022の決勝戦からわずか3週間での再戦になりました。でもそうなることは十分予想できたので、両者ともに十分な対策をしてきたことでしょう。
- 第1ゲーム、サーブからの組み立てが良く、強打でも台上技術でも得点できる早田選手がリードする展開になります。多用したフォア前のサーブに回り込んでチキータレシーブされても、それを読んでいたかのように身体を折り畳んでフォアハンドで打ち返します。平野選手の得意なパターンに持ち込ませず、11-6で取ります。
- 第2ゲーム、無理に打たずに緩いボールと台上技術を混ぜたラリーを選択してミスを誘う、チャンスボールが来たらコースを突いたドライブで決めるなど、巧みな試合運びで主導権を握り、11-2で圧倒します。
- 第3ゲーム、プレーの精度が高くミスの少ない早田選手がリードする展開になります。平野選手の強打で決めたいという心理を逆手に取るような攻め方もみせます。このゲームも流れを渡すことなく11-6で取ります。
- 第4ゲーム、序盤は早田選手がリードしますが、平野選手の攻撃が決まり始めて2点差まで追い上げられます。10-7とマッチポイントを握ってから2失点で10-9になりますが、最後は連続でミドルを攻めてオーバーミスを誘い、ストレート勝利で試合をものにしました。
早田選手はミスが少ない上に頭が冴えていて、常に平野選手の一歩先を進んでいる感じでした。
フル動画。
卓球ジャパンでの解説付きフル動画。
フル動画、別アングルバージョン。
ハイライト。
この試合のスーパープレー。
準々決勝後インタビュー。
準決勝
伊藤美誠選手との対戦でした。2022年全日本選手権大会の決勝戦以来の対戦となりました。
伊藤選手はプレーの精度が高く、スマッシュを少なくした堅実な戦術で早田選手を上回りました。早田選手は試合前半、準々決勝までと違ってミスが多く、試合を優位に進めることができませんでした。
- 第1ゲーム、高い緊張感の中、2点程度リードを保った展開が続きますが、早田選手が得意な両ハンドドライブのオーバーミスが目立ち、8-9と逆転されます。伊藤選手は前陣でのラリーで左右の厳しいコースに精度良く振り分け得点し、8-10と先にゲームポイントを握ります。ここから伊藤選手のミドルを攻めてデュースに持ち込み、最後はコースを突いたバックハンドを決めて12-10で取ります。
- 第2ゲーム、両ハンドドライブのオーバーミスが減らず、リードを許す展開が続きます。最近は安定していた、浮いたボールをフォアハンドドライブで決めに行くプレーもミスになります。得点源のひとつになっていた台上技術もオーバーミスとなり3-8と大量リードを許します。ここからプレーの精度を上げて逆転し、10-9と先にゲームポイントを握ったものの、後が続かず10-12で落としてしまいます。
- 第3ゲーム、両ハンドドライブのオーバーミスを連発に加えてラリーでは左右に振られる、高い打点から速いボールを打ち込まれるで4-9と大量リードを許します。ここからミスを減らして7-9まで追い上げますが、得点パターンの多い伊藤選手に勝つには遅く、7-11でこのゲームも落としてしまいます。
- 第4ゲーム、両ハンドドライブのミスが減って中盤まで接戦になりますが、勝負どころでのミスがひびいて6-11でこのゲームも落としてしまいます。ゲームカウント1-3と後がなくなります。
- 第5ゲーム、これまでとは別人のように躍動感あるプレーでラリーでも勝てるようになります。ロングサーブに回り込んでのフォアハンドドライブも決まります。最初からこのプレーができていればと思う内容で、11-7で取り返します。
- 第6ゲームも素晴らしいプレーが続き、11-4と圧倒します。ゲームカウントを3-3にします。
- 最終第7ゲーム、ラリー戦で負け、再度ミスが増えてしまい1-8と大量リードを許します。その後4-10と先にマッチポイントを握られますが、強気で攻める姿勢を崩さず9-10まで追い上げます。が、最後バックハンドドライブがオーバーになり9-11で負けてしまいました。
前回、全日本選手権の決勝で対戦した時は(疲労もあって)いいようにもてあそばれましたが、今回は伊藤選手も「負けるかもしれない」と思ったことでしょう。次回の対戦が楽しみです。
そして国内にこんなに強いライバルがいることに、お互いが感謝していることでしょう。
フル動画。
フル動画、別アングルバージョン。
ダイジェスト。
この試合のスーパープレー。
3位決定戦後に行われたロングインタビューで、準決勝について触れています。
3位決定戦
長﨑美柚選手との対戦でした。第1回パリオリンピック選考会の決勝戦以来の対戦となりました。
伊藤選手とのフルゲームの激闘から1時間も空かなかったためか、疲れているようでした。頭も冴えていなかったように思います。ギリギリで勝てたものの、ちょっと運がなかったら負けていてもおかしくない試合でした。
- 第1ゲーム、接戦になり7-7まで競りますが8-10と先にゲームポイントを握られます。なんとかデュースに持ち込みますが、後が続かず10-12で落としてしまいます。ゲーム間にベンチで椅子に座る早田選手を初めて見ました。
- 第2ゲーム、両ハンドドライブの精度が上がってきた早田選手がリードする展開になり、10-5とゲームポイントを握ります。長﨑選手の追い上げを振り切って11-8で取り返します。
- 第3ゲーム、接戦になり6-6まで競ります。その後10-7とゲームポイントを握り、長﨑選手の追い上げをかわして11-9でこのゲームも取ります。
- 第4ゲームも接戦で8-8まで競りますが、勝負どころでミスしなかった早田選手が11-8で取り、ゲームカウントを3-1にします。
- 第5ゲーム、再度オーバーミスが増えてしまい、5-11であっさり落としてしまいます。
- 第6ゲーム、流れを掴んで6-1と大量リードしますが、その後追い上げられ9-10と先にゲームポイントを握られます。長﨑選手の今日2本目のサーブミスでデュースになり、心臓に悪い展開が続きますが何とか14-12で勝ち切りました。このゲームを落としてフルゲームになっていたら危なかったですね。
残っていた体力・知力を振り絞って何とか勝利したという印象です。勝てて良かったです。
フル動画。アングル良くない。
フル動画、上カメラバージョン。こっちの方が良い。
この試合のスーパープレー。
3位決定戦後のロングインタビュー。準決勝の話題もあります。必見です。
最終順位
最終順位(8位まで)と、獲得した選考ポイントです。
その結果を反映した、選考ポイント合計上位9名です。
積み上げグラフにすると状況が良く分かります。
この選考会で得たもの
準決勝で伊藤美誠選手に敗れ、3位決定戦で長﨑美柚選手に勝って3位でしたので、得られた選考ポイントは40でした。選考ポイント付与対象の大会が3回終了した時点で2位の伊藤選手との差は30ポイントです。
第2回パリオリンピック選考会は、第1回と違って優勝者に特別な権利(資格)は付与されません。そのため優勝できなかったものの、選考レースを戦う上で大きく不利になるようなことはありません。
- 2023年の世界卓球シングルスの出場権がかかるアジア大陸予選会に出場できるのは、選考ポイント上位5名です。第3回パリオリンピック選考会と12月中旬までのTリーグ・リーグ戦が対象になります。早田ひな選手は現在2位以下を大きく引き離していてすこぶる優位です。
すべての大会で優勝するのは無理ですから、どうしても負けられない大会では優勝し、優勝できなかった大会からはより強くなるための経験・知見を得るという姿勢でいいと思います。その意味で、伊藤選手との(久しぶりの)対戦から得たものはものすごく大きかったはずです。
お互いの戦術や技術をフルに駆使しての死闘を終え、早田は「伊藤選手とやるときはもう1人分の頭がほしいくらい頭を使うし、疲れる」と苦笑い。ただ、伊藤に勝った20年1月の全日本選手権時に比べて「今回はお互い同じくらいの緊張の中で駆け引きができた」と手応えを示し、対伊藤攻略の糸口についても「自分の感覚をつかんだ。(伊藤に対して)これくらいで打つのが正しい方法だと、やっとつかむことができた。それだけでも収穫」とうなずいていた。
引用:早田ひな快進撃ストップ 伊藤美誠と激戦も苦杯「もう1人分の頭ほしい」攻略法に収穫も
大会終了後
早田ひな選手のインスタグラム。
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おまけ
卓球ジャパン!「伊藤美誠vs早田ひな パリ五輪選考会TOP32でのニッポン女子頂上決戦を徹底解説」