WTTスターコンテンダーは世界ランク21位以下の選手向けの大会ですが、国際大会が満足に開催されていないため、世界ランク10以内の選手もチャンスがあれば積極的に参加しているのが現実です。
早田ひな選手は、WTTコンテンダーザグレブ2022に続いての国際大会出場でした。
シングルスは孫穎莎選手に負けてベスト8でした。みまひなペアのダブルス、はりひなペアの混合ダブルスは準優勝でした。
*アイキャッチ画像はWTT公式サイトからの引用です。
WTTスターコンテンダー
- シニア向けWTTシリーズの下から2番目の大会です。
- 年間最大6大会開催可能ですが、2022年年初から7月末までの開催数はわずか2です。
- 本戦5日、予選2~3日の日程で選手によっては1日に4試合に出場します。
- シングルス、ダブルス、混合ダブルスの3種目を実施。
- シングルスの本戦は48名、うち8名は予選を通過した選手。
- 予選人数は32、48、64名から開催国が選択します。
- ダブルス本戦16ペア、うち4ペアは予選を通過したペア。
- 混合ダブルス8ペア(予選なし)。
- シングルスは各協会から6名までしか出場できません。また世界ランク21位以降の上位者から優先出場となっています。
- 世界ランク20位以内の選手は、全体で8名しか出場できません。
- 前6週以内にグランドスマッシュまたはチャンピオンズに出場した選手は優先度が下がります。
- シングルスの準決勝、決勝のみ7ゲームマッチ、他はすべて5ゲームマッチ。
- 優勝選手には600ポイントが付与されます。
ところが実際に出場している選手の顔ぶれを見ると、このルールが厳密に運用されていないことにびっくりします。
WTTスターコンテンダーESS2022
ESSはヨーロピアン・サマー・シリーズの略です。実は7月11日から24日にブダペストスマッシュが開催される予定でしたが、開催1ヶ月前になって急遽、WTTスターコンテンダーESS2022と、WTTチャンピオンズESS2022の2大会連続開催に変更されたのでした。(WTTの運営は問題が多いです。)
- 期間:2022年7月11日から17日
- 場所:ハンガリーのブダペスト(日本との時差7時間、現地10:00が日本の17:00)
- 出場種目:シングルス、ダブルス、混合ダブルス
- 参照:WTT公式サイト
- パリ五輪選考ポイント付与対象ではありません。
ネット中継
- WTTがYoutubeチャンネルでT1からT3をリアルタイム配信しました。
- テレビ東京卓球チャンネルはT1とT2をリアルタイム配信しました。(急遽T3の日本人選手の試合もリアルタイム配信されました。)
- リアルタイム視聴できなくても、おおむね24時間以内にはテレビ東京卓球チャンネルにアップされました。ありがたいです。
シングルス出場選手
本戦から出場する40名の顔ぶれです。世界ランク20位以内の選手は全体で(WCと推薦枠含めて6+4+2の)12名までしか出場できないとされていますが、18名もいます。グランドスマッシュの代わりの大会なので制限を外したのかも知れません。
早田ひな選手はWR6位で第6シードでした。
中国人選手は本戦7名でした。
大会開催中に陳夢選手が右肩の故障で棄権となりました。
シングルス:ベスト8
早田ひな選手はR32で中国の劉煒珊選手、R16で平野美宇選手(予選から勝ち上がり)に当たる厳し目のドローでした。この2戦は絶対に勝って、準々決勝まで進むのが最低条件だったはずです。
早田ひな選手は期待通り準々決勝に進みましたが、孫穎莎選手に勝てませんでした。結果ベスト8、獲得したWRポイントは105でした。
Round 32(2回戦)
劉煒珊選手とは2019年以来の対戦でした。
3-0のストレート勝ちでしたが、劉煒珊選手は強かったです。
- 第1ゲームは接戦になりますが、デュースの末17-15で取ります。第1ゲームを取れたのが大きかったです。
- 第2ゲームも序盤はもたつきますが、終盤勝負どころで得点を重ねて取ります。
- 第3ゲームは流れを渡さず快勝でした。
得点差よりも難しい試合だった気がしますが、勝てて良かったです。ここで負けていたらR16で平野美宇選手と再戦できてませんからね。
フル動画。
ダイジェスト。
ハイライト。両者一歩も譲らない5分間。14-15の場面で心臓が止まりました。
この試合のスーパープレー。
Round 16(3回戦)
平野美宇選手とは6月のWTTコンテンダーザグレブに続く、R16での対戦となりました。その時にはフルゲームで負けていたので、今大会では絶対にリベンジしたかったはずです。
試合の流れを渡さず、快勝でリベンジできました。早田ひな選手は、6月とは別人のようでした。
- 第1ゲームは長いラリーになる前の得点が多かったです。コース取りも良く、平野選手は反撃できないままでした。平野選手のミドルを深く突くボールが効果的でした。
- 第2ゲームは第1ゲームと似たような展開が続きます。早田選手は終始攻撃的で、試合の主導権を離しませんでした。
- 第3ゲームのラリーは互角でしたが、リードを保ったまま流れを渡すことなく勝ち切りました。
今回の勝利で平野美宇選手に対する苦手意識は払拭できたでしょうか。
フル動画。
ダイジェスト。サムネがいい。
この試合のスーパープレー。
準々決勝
早田ひな選手は孫穎莎選手と良く当たります。3月のシンガポールスマッシュの準々決勝でも負けています。
質の高いラリーになることが多いのですが、ラリー力が高い孫穎莎選手が試合を制しました。
- 第1ゲーム、点の取り合いでデュースになりますが、最後は攻撃力の高さを見せた孫穎莎選手が取ります。
- 第2ゲーム、終盤まで離されずに付いていくものの、勝負どころでギアを上げる孫穎莎選手が突き放します。
- 第3ゲーム、6-7まで喰らいついたものの、そこから孫穎莎選手の連続4得点で負けてしまいます。
孫穎莎選手に勝つにはラリー力の差を詰めないといけないですね。中国のトップ選手はみんなそうなんですが。
フル動画。
ダイジェスト。
この試合のスーパープレー。
ダブルス:準優勝
みまひなペアは決勝戦で孫穎莎/王曼昱ペアと当たるドローでした。
また準々決勝で陳夢/王芸迪ペアと当たるドローだったのですが、陳夢選手が右肩の故障でキャンセルになりました。
今大会にはかすみうペアも出場しましたが、準々決勝で孫穎莎/王曼昱ペアに負けました。
みまひなペアは苦しかった準決勝戦を勝って決勝まで進んだものの、孫穎莎/王曼昱ペアに負けて準優勝でした。
Round 16(1回戦)
P.ソルヤ/シャン・シャオナペアとの対戦でした。
第2ゲームを落としたところに、今のみまひなペアの課題があります。
- 第1ゲーム、ほぼラリーにならない、あっさりしたプレーが続きます。11-6で取りますが、みまひなペアにややミスが目立ちます。
- 第2ゲーム、ミスを連発して5-11であっさり落としてしまいます。
- 第3ゲーム、ようやく攻撃が決まり始め、相手ペアのミスにも助けられて11-4で取ります。
- 第4ゲーム、流れをつかんで圧倒し、11-3で勝ち切ります。
この試合、スコアだけ見ると圧勝に思えますが、これでは決勝まで行けないと思いました。
フル動画。
準々決勝
田志希(チョン・ジヒ)/梁夏銀(ヤン・ハウン)の韓国ペアとの対戦でした。
勝てましたが、課題が多い試合でした。
- 第1ゲーム、接戦になりますが何とか11-8で取ります。でもこのままだとまずいのは明らかでした。
- 第2ゲーム、調子が良くないのに戦術を転換しないでリスクの高い攻撃を選択し続けた結果、7-11で落としてしまいます。繰り返し見られる、みまひなペアの悪いところです。
- 第3ゲーム、相変わらずリスクの高い攻撃を選択し続けますが、ミスが減って11-2と圧倒します。
- 第4ゲーム、ミスを連発して流れを相手ペアに渡してしまい、10-12で落とします。ゲームカウントは2-2に。
- 最終第5ゲーム、接戦を制して何とか11-8で勝ち切ります。調子、悪いですね。
負けていてもおかしくない試合内容でした。
フル動画。
ダイジェスト。
この試合のスーパープレー。
準決勝
李皓晴/陳思羽の香港/台湾ペアとの対戦でした。
2ゲーム先取され、その様子から今日は勝てないかと思いました。
- 第1ゲーム、みまひなペアは心配した通りの状態で、攻撃力が高いペア相手にミスを連発していたら勝てません。7-11で落としてしまいます。
- 第2ゲーム、みまひなペアは見ていられないほど調子が悪く、このゲームも7-11で落とします。
- 第3ゲーム、5-6までの展開を見て負けると思いましたが、何とか11-8で取り返します。
- 第4ゲーム、ミスが減り、攻撃が決まるようになって11-4と圧倒します。
- 最終第5ゲーム、流れをつかんで11-4と圧倒して勝ち切ります。
フル動画。
ダイジェスト。
この試合のスーパープレー。
決勝
女子ダブルスの世界最強ペアです。
みまひなペアの調子は良かったと思います。が、孫穎莎/王曼昱ペアのラリー力の高さは(シングルスでもそうですが)素晴らしく、得点できたかと思う球を厳しいコースにより強い球で打ち返してきます。
- 第1ゲームはあと一歩で取れそうでしたが、孫穎莎/王曼昱ペアは勝負どころで簡単に失点しません。伊藤選手がリスクの高いバックハンドパンチをやめないのが気になります。
- 第2ゲームはラリー力の高さを見せつけられ6点しか取れず、あっさり落とします。
- 第3ゲームはプレーの精度を上げて喰い下がりますが、一歩およばず15-13で押し切られます。
みまひなペアは個の力を上げないといけないですね。また、調子の悪い時は戦い方を変えた方がいいと思います。
フル動画。
ダイジェスト。
この試合のスーパープレー。
表彰式。
混合ダブルス:準優勝
はりひなペアは初戦でうだみまペアと当たり、勝ち進めれば決勝で王楚欽/王曼昱ペアと当たるドローでした。
中国卓球協会はパリオリンピックに向けて、王楚欽/孫穎莎ペアに続いて王楚欽/王曼昱ペアをテストしているのかも知れません。
はりひなペアは期待通り決勝まで進みますが、惜しくも王楚欽/王曼昱ペアに負けて準優勝でした。
Round 16(1回戦)
うだみまペアと1回戦で当たるもったいないドローでした。もっと後で当たりたかったです。
うだみまペアとはWTTコンテンダーザグレブ2022の準決勝に続く、2回目の対戦でした。
はりひなペア、危なかったです。
第1、第2ゲームを取られる苦しい展開でしたが、第3ゲームから調子を上げ、ペアの攻撃が噛み合うようになったはりひなペアが逆転勝ち。
はりひなペアがプレー間に良く話し合っていたのが印象的でした。
フル動画。
ダイジェスト。
テレビ東京「みんなのスポーツ」。
準々決勝
チウ・ダン/ミッテルハムのドイツペアとの対戦でした。
好調のはりひなペアの快勝でした。
はりひなペアは調子が良く、第1、第2ゲームを圧倒します。第3ゲームは接戦になりますが、安定感のあるプレーで勝ち切りました。
フル動画。
ダイジェスト。
準決勝
グナナセカラン/バトラーのインドペアとの対戦でした。
接戦になりましたが、好調のはりひなペアが試合を制しました。はりひなペアはとても攻撃的でした。
フル動画。
ダイジェスト。
ありえないスーパーラリー。絶対見て。ありえないから。
決勝
王楚欽/王曼昱ペアとの対戦でした。この試合は王曼昱選手にとって絶対に負けられないものだったはずです。(なお、王曼昱選手は右脚を故障中で、シングルスの準決勝戦を棄権しています。)
負けはしたものの、好調な時のはりひなペアの強さを確認できた、素晴らしい試合でした。
好調のはりひなペアが第1、第2ゲームを取りますが、第3ゲーム以降は王楚欽/王曼昱ペアが攻撃力の高さを見せてフルゲームに。最後はあと一歩及ばず悔しい敗戦になりました。
フル動画。
ダイジェスト。
スーパーラリー。
表彰式。
福原愛が張本/早田 vs 王楚欽/王曼昱をDEEP解説。
まとめ
- シングルスはR32で劉煒珊選手、R16で平野美宇選手を倒して準々決勝に進みました。特に平野美宇選手にリベンジできたことの意味は大きかったはずです。準々決勝では孫穎莎選手に(またしても)勝てませんでしたが、収穫の多い大会だったことでしょう。
- ダブルスはなんとか決勝まで進んで世界最強ペアと対戦しますが、ラリー力の強さを見せつけられる結果となりました。課題が多い大会でした。
- 混合ダブルスは、R16でうだみまペアに競り勝っていなかったら大きな悔いが残った大会でした。準々決勝以降は調子を上げ、あと一歩で中国ペアを撃破するところまで迫りました。素晴らしい大会でした。