WTTチャンピオンズは世界ランクの上位30名を対象にした招待制の大会です。各協会からは最大4名が出場できます。世界ランクによる出場制限がなく、実力者が多く集まるため準々決勝に進むことも容易ではない、非常にレベルの高い大会です。
早田ひな選手は準々決勝でセーチ選手を倒して準決勝に進出したものの、王曼昱選手に完敗してベスト4でした。
*アイキャッチ画像はテレビ東京卓球情報のXポストからの引用です。
WTTチャンピオンズ
- シニア向けWTTシリーズの上から3番目の大会です。
- 男女それぞれ年間最大4大会開催可能です。今年最後、3度目のチャンピオンズです。
- 本戦6日、予選はありません。今大会は8日間で実施。
- シングルスのみ実施。出場人数は30名+ワイルドカード1名+WTT推薦1名の合計32名。
- 各協会から4名までしか出場できません。
- 世界ランクによる出場制限はありません。
- 出場資格を持つ選手が病気や怪我以外の理由で辞退した場合、ペナルティの対象となります。
- 準決勝、決勝のみ7ゲームマッチ、他は5ゲームマッチ。
- 試合はテーブル1台のみで進行されます。
- 優勝選手には1,000ポイントが付与されます。
大会情報
- 期間:10月29日から11月5日
- 場所:ドイツのフランクフルト(日本との時差7時間、現地10:00が日本の17:00)
- 出場種目:シングルス
- 参照:WTT公式サイト、日本卓球協会公式サイト
- パリ五輪選考ポイント付与対象ではありませんが、打倒中国ポイント付与対象です。
ネット中継
試合はT1のみ(放送用の超豪華なテーブル1台だけ)で行われました。
- テレビ東京卓球チャンネルが全試合をリアルタイム配信しました。
- リアルタイム視聴できなくても、おおむね24時間以内にはテレビ東京卓球チャンネルにアップされました。ありがたいです。
大会開催前
出場選手をおもてなしする「プレイヤーズパーティー」が開催されました。いいですね。
WTTの公式動画。
大会の見どころ。
シングルス出場選手
中国の四天王が揃っています。WC、推薦枠はドイツの選手でした。
早田ひな選手はWR5位で第5シードでした。
日本人選手は早田ひな選手、伊藤美誠選手、張本美和選手、平野美宇選手の4名が出場しました。
シングルス:ベスト4
順当なら準々決勝で陳夢選手と、準決勝で王曼昱選手と当たるドローでした。
準々決勝で、陳夢選手を倒して勝ち上がってきたセーチ選手にフルゲームで勝利して準決勝に進みましたが、王曼昱選手に実力差を見せつけられる形で完敗し、結果ベスト4でした。
なお今大会でベンチコーチを務めたのはチームひなの左俊斉コーチ(WTTコンテンダーアンタルヤのベンチコーチは岡雄介トレーナー)だったことについて、こう話しています。
「違う方向からのアドバイスをもらったりして、すごくいい勉強になりますし、オリンピックや世界卓球の大きな舞台でいつもと別の人に入ってもらうこともあると思う。そういうのを想定して試合をやっていかなきゃいけないし、その中で自分自身がブレないものを持ちたい。」
Round 32(1回戦)
ドイツのシャン・シャオナ選手との対戦でした。2021年以来の対戦になりました。
シャン・シャオナ選手が強くて苦しめられましたが、勝てて良かったです。
- 第1ゲーム、互いにミスの少ない攻撃的なプレーの応酬が続いて8-8まで競ります。10-8とゲームポイントを握りますが、デュースに持ち込まれ、シャン選手に押し切られる形で11-13でこのゲームを落としてしまいます。早田選手の状態は良いのですが、シャン選手に好きなように攻撃させると分が悪くなります。
- 第2ゲーム、接戦で6-6まで競りますが、そこから抜け出して11-7でこのゲームを取り返します。サーブからの組み立てが良くなってきました。
- 第3ゲーム、両者譲らず4-4まで競りますが、早田選手のサーブが効いて得点率が上がり、失点が目立ったシャン選手のロングサーブにも対応できるようになって11-5でこのゲームも取ります。
- 第4ゲーム、シャン選手にレシーブのコースを読まれて逆襲にあい、ややミスも増えて5-9と大量リードを許します。6-10から2点差まで追い上げたものの、8-11で落としてしまいます。
- 最終第5ゲーム、攻撃時のコース選択が良くなり、流れをつかんで7-0と大量リードする展開になります。シャン選手の追い上げを振り切って11-5で勝ち切り、難しい初戦をものにしました。
フルゲームにはなりましたが、早田選手の仕上がりは良いと思いました。
フル動画。
ハイライト。
ハイライト、WTT制作のロングバージョン。
試合後のインタビュー、必見です。
試合後のインタビューでこのように話しています。
「表(ソフト)でペンっていうのもあって、(ラケットの)面の開き具合とか(ボールの)当たり具合によって、ちょっとナックルが強かったりボールが跳ねたりしました。自分が1球ずつ調整しないといけない部分が多くて、いつもだったらもっと細かくコースや回転量を調整できるのに自分のボールが相手に狙われることが多くなってしまった。」
「苦しい状況でも狙った場所に打てたり、出したい質のボールを打てたり、そういう究極のレベルを目指していかないといけない。自分の実力はまだまだ。」
結果を伝える記事。
得点して吠えている瞬間を切り取った写真。(WTTの記事からの引用)
孫穎莎選手との練習動画、めっちゃ楽しそう。(R32終了後R16前かな)
Round 16(2回戦)
張本美和選手との対戦でした。WTTコンテンダーアンタルヤ2023の準決勝でも戦っています。R32で平野美宇選手を倒して(実況解説付きフル動画)勢いに乗っています。
第3ゲーム以降きわどい接戦になりましたが、勝ち切れて良かったです。
- 第1ゲーム、張本選手のフォアを攻めて得点を重ねます。張本選手はレシーブミスを連発して10-0と一方的な展開になり、11-2でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、張本選手が対応を修正して接戦になり、打ち合いが増えます。5-5まで競った展開が続きますが、そこから抜け出してリードを保ち、11-7でこのゲームも取ります。フォアハンドドライブの精度の高さと威力から、早田選手の仕上がりの良さが分かります。
- 第3ゲーム、激しい打ち合いが増えますが、実力拮抗で7-7まで競ります。早田選手にややミスが出て勝負どころで失点してしまい、9-11で落としてしまいます。
- 第4ゲーム、ラリー戦を連続で落として0-3と良くない入り方をしてしまいますが、すぐに3本連続で打ち合いを制して3-3に戻します。見応えのあるレベルの高いプレーの応酬が続く中、試合巧者の早田選手がリードを保って10-8とマッチポイントを握ります。流れ的にデュースにはしたくないところ、ラリー戦を落として10-9になりますが、積極的なレシーブからバックハンドドライブをミドルに打ち込んで11-9で逃げ切り、この試合をものにしました。
平野美宇選手を倒して勝ち上がってきたのは決してまぐれでないことが良く分かる試合でした。また、フォアサイドへの鋭いカウンターを何本も狙い撃ちされたのは、今後の課題として大きな収穫だったと思います。
フル動画、日本語実況解説付き。
フル動画。
ハイライト。
ハイライト、WTT制作バージョン。
試合結果を伝える記事。
今日は卓球史に残る日になりました。
大会4日目のハイライト。
準々決勝
ルーマニアのセーチ選手との対戦でした。R16で陳夢選手を倒している強敵です。
セーチ選手が強くて、絶好調で内容的には負けでしたが、持てる力を出し切って勝ちました。
- 第1ゲーム、セーチ選手のしゃがみ込みサーブ(トマホークサーブ)を満足にレシーブできず、ラリー戦も打ち負け、ボールが合わない時に良くやるオーバーミスを連発し、2-10と圧倒されます。悪い流れのまま5-11でこのゲームを落としてしまいます。
- 第2ゲーム、いろいろ修正した早田選手がリードを保つ展開になります。レシーブはまだ甘いし、オーバーミスもするものの、ラリー戦が劇的に良くなりました。サーブも効いて11-7で危なげなくこのゲームを取り返しいます。
- 第3ゲーム、アンラッキーなネットイン2本もあって良い入りができず1-6と大量リードされます。早田選手はミスが多く、最後はチキータレシーブがオーバーして6-11で落としてしまいます。
- 第4ゲーム、サーブは効いているものの、トマホークサーブに苦しめられる状況を改善できず接戦になり、5-5まで競ります。そこから3連続失点して5-8にされますが、卓球の神様の力も借りて9-9で追い付きます。得点して首を振る早田選手は記憶にないです。9-9でレシーブの場面、セーチ選手に(この試合何度も失点した)フォアサイドに振られますが対応してラリー戦を制して吠えます。最後も甘いレシーブから始まった不利な、心臓に悪いラリー戦に打ち勝って11-9で取り返し、ゲームカウントを2-2にします。
- 最終第5ゲーム、実力拮抗で点差の開かない展開が続きます。勝負どころの8-8からラリー戦に打ち勝って9-8とします。ここでトマホークサーブがネットにかかって10-8とマッチポイントを握ります。早田選手のサーブ権の場面、流れ的にデュースにしたくないところ、ラリー戦に打ち負けて10-9になりますが、最後サーブ3球目をフォアハンドドライブでミドルに打ち込んで勝ち切り、勝利の雄叫びを上げます。
最後まで劣勢で、内容的には負けでしたが、その状況でも諦めない強靭なメンタルと修正能力の高さを証明した試合になりました。勝てて良かったです。
世界のトップが集結するチャンピオンズで、準決勝に進出するのは容易ではありません。今大会、早田選手以外の3名は、孫穎莎選手、王芸迪選手、王曼昱選手でした。
なお、セーチ選手のトマホークサーブ対策という宿題ができました。
フル動画。
ハイライト。
ハイライト、WTT制作バージョン。
試合後のコメント。
ボールにスピンがかからなかったり、ボールがテーブルを滑っているような感覚がありました。試合が進むにつれて調整できましたが、もっと早く調整したかったです。
準備が十分ではなかったので自分の予想通りにはいかなかったですが、試合では自分の戦い方ができた。
試合が進むにつれて、相手に合わせてうまく対応することができた。強い相手に最後に勝ててよかった。ミスを少なくしようと心がけました 。強い相手と対戦するときは、最後まで頑張ることが大事だと思います。
試合結果を伝える記事。
今大会はベスト4を最低目標にやってきた。
卓球ジャパン!セーチ選手との準々決勝を解説。
準決勝
中国四天王のひとり、王曼昱選手との対戦でした。意外なことに初対戦です。
王曼昱選手が強すぎて完敗でした。実力差を認めざるを得ない結果となりましたが、この時期がそれが分かって良かったです。
- 第1ゲーム、流れをつかんで8-3と大量リードします。ところがそこから王曼昱選手の逆襲にあい、厳しいコースに打ち込まれてミスが増えます。悪夢のような8連続失点で8-11でこのゲームを落としてしまいます。
- 第2ゲーム、仕上がっているはずの早田選手が強打でオーバーミスを繰り返し、王曼昱選手は完璧なプレーでラリー戦を制し、2-11でこのゲームも落としてしまいます。
- 第3ゲーム、ラリー戦の勝率が上がって7-3とリードした時点で王曼昱選手が左脚を痛めますが、治療をしてそのまま試合続行となります。9-3としてから追い上げられますが、最後はサーブを工夫してなんとか11-8で取り返します。
- 第4ゲーム、王曼昱選手は脚を痛めているとは思えないプレーで早田選手に襲いかかります。ラリー力の差を埋められず、8-11でこのゲームも落としてしまい、ゲームカウント1-3と後がなくなります。
- 第5ゲーム、早田選手はずっと良いレシーブができないまま、王曼昱選手は早田選手のサーブを苦にしないのが、ゲームを取り切れない要因です。何とか7-7までは競った展開にしたものの、勝負どころで強さを見せた王曼昱選手が圧倒する形で7-11で負けてしまいました。
サーブが効かない、レシーブに苦労させられる、ラリー戦では先に厳しいコースに打たれて返せない、と課題が多く見つかった対戦になりました。
なお、この試合のベンチコーチを務めたのは岡雄介トレーナーでした。
フル動画。
ハイライト。
ハイライト、WTT制作バージョン。
日本語実況解説付き、一部のゲームのみ抜粋。
試合後のインタビュー。必見です。
試合結果を伝える記事。
まとめ
- チャンピオンズでベスト4に入ったことでWRポイントを350獲得しました。
- セーチ選手のトマホークサーブの対策をしっかりしないとダメだと分かりました。
- 王曼昱選手にサーブが効かなかったのはショックが大きいですが、それが分かっただけでも対戦できて良かったと言えます。
- 王曼昱選手の球質は孫穎莎選手、陳夢選手、王芸迪選手とも違うものだったのでしょう。王曼昱選手と互角の勝負ができるようになりたいですね。それがこの時期に分かったことは、中国人選手がいないコンテンダーで優勝するよりも大きな収穫になったはずです。
おまけ
WTTの公式アカウントによる、セーチ選手との激戦後のポスト。
Smiley Hina Hayata celebrating her entry into the #WTTChampions semifinal after a tough match against Bernie Szocs 😮💨
Watch her at #WTTFrankfurt from 2pm (GMT +1) 👉 https://t.co/obRmtF5f8o#TableTennis #PingPong pic.twitter.com/1Nz9EEiX9W
— World Table Tennis (@WTTGlobal) November 4, 2023
早田ひなプレー集。テレ東さん、いつもありがとう。
大会終了後
早田ひな選手のXポスト。
約1ヶ月半の長期遠征が終わりました。
アジア競技大会からチャンピオンズまでの5大会35試合を怪我なく最後まで元気に戦う事が出来ました。時差がある中で応援してくださった皆さん、長期遠征を支えてくれたチームひなの皆さん有難うございました🐥⸒⸒ pic.twitter.com/frfvWxPYO9— 早田ひな (@hayata_hina) November 6, 2023
孫穎莎選手と練習できたことについて、帰国後のインタビューにて。
孫が自身と同じサウスポーの選手との対戦を控えていたため、早田から「ダメもと」で思い切って声をかけたところ、「OK!」と快諾されたとのこと。
「そこから結構仲良くなった。やってくれるのであれば、(また)声をかけたい」と笑顔で振り返っていました。
帰国後のインタビュー記事からの引用。必見です。
つかの間の休息をはさんだ後は「できるだけいろんな技術を習得したい」と、今回の遠征で得た刺激を胸に、すぐに練習を再開させるという。
・・・
「この2週間で技術が習得できて、それをすぐに試合で試したい。練習でできても試合でできないと意味がないし、逆に練習でうまくできなくても、試合で1回できると、それが自信になってどんどん成長していくと思う。そういった意味では、体調不良だったり、本当にきついなと思うこと以外は(選考会に出ることは)ほぼデメリットはない。ポイントは関係なく自分が技術を習得して、強くなるために試合がしたい」と、考えを明かした。
帰国後、羽田空港でのロングインタビュー。必見です。
王曼昱選手との対戦を振り返って。石田コーチの話もあり。