WTTグランドスマッシュはWTTシリーズの最上位大会です。年間最大4回開催可能ですが、これまで年1回、3月にシンガポールでしか開催されていませんでした。2024年は3月にシンガポールで、5月にサウジアラビアでと複数開催されることが決まっています。
付与されるWRポイントが高いため、世界ランク上位選手がびっしり出場します。出場選手、大会規模、WRポイント、日程の全てが最上位大会にふさわしいものです。優勝する難易度も、です。
早田ひな選手は残念ながらシングルスはR64敗退、混合ダブルスは準決勝で負けてはいけない韓国ペアに負けてしまい、非常に悔しい大会になりました。
*アイキャッチ画像はテレビ東京卓球情報のXポストからの引用です。
WTTグランドスマッシュ
- オリンピック、世界卓球選手権大会(個人戦)と同列のWTTシリーズ最上位大会です。
- 年間最大4大会開催可能ですが、大会運営に億円単位の費用がかかるため、開催できる国・協会が限られるようです。
- 本戦10日程度、予選2~3日のゆったりした日程。今年は本戦8日間に短縮。
- シングルス、ダブルス、混合ダブルスの3種目を実施。
- シングルスの本戦は64名、うち8名は予選64名を通過した選手。
- ダブルス24ペア、混合ダブルス24ペア(共に予選なし)。
- シングルスは本戦、予選合わせて各協会から6名までしか出場できません。また世界ランク上位者から優先出場となっています。
- 世界ランク20位以内の選手参加規制はありません。
- 出場資格を持つ選手が病気や怪我以外の理由で辞退した場合、ペナルティの対象となります。
- シングルスのシードは16名。(2022年までは8名。)
- シングルスの準々決勝、準決勝、決勝のみ7ゲームマッチ、他はすべて5ゲームマッチ。(2023年からシングルスの準々決勝が7ゲームマッチに変更。)
- 優勝選手には2,000ポイントが付与されます。WTTチャンピオンが1,000ポイント、WTTスターコンテンダーが600ポイントですからダントツの高さです。
シンガポールスマッシュ2024
理由不明ですが、大会名の頭にWTTを付けません。
- 期間:2024年3月7日から17日
- 場所:シンガポール(日本との時差1時間、現地10:00が日本の11:00)
- 出場種目:シングルス、混合ダブルス
- 参照:WTT公式サイト、日本卓球協会公式サイト
ネット中継
- WTTがYoutubeチャンネルでT1からT3をリアルタイム配信しました。(日本ではT3以外は視聴制限あり。)
- テレビ東京が予選のT2、本戦のT1をTVerでリアルタイム配信しました。日本人選手の試合は日本語実況解説付きでした。
- テレビ東京卓球チャンネルで本戦のT2をリアルタイム配信しました。
- T2で日本人選手の試合が行われた時、TVerでもその試合を日本語実況解説付きで配信しました。日本人選手の試合を楽しむにはいいのですが、そうするとT1の試合が日本でリアルタイムに観られない問題が発生します。この運用は見直して欲しいです。
- リアルタイム視聴できなくても、おおむね24時間以内にはテレビ東京卓球チャンネルにアップされました。ありがたいです。
僕は、すばらしい実況は卓球の試合観戦に大きな付加価値を与えるものだと考えています。アダム・バブローやフレイザー・ライリーの実況も大好きです。今大会、TVerでの中継では日本語実況解説以外は実況音声がオフでした。権利関係のためかも分かりませんが、だったら従前のYouTubeの方がいいです。
フレイザー・ライリーによるアリーナミニツアー
WTTのコメンテーターで有名なフレイザー・ライリーによる、アリーナの紹介。
シングルス出場選手
世界ランク(ほぼ)上位48名の顔ぶれです。最上位大会(かつ出場を求められる自動エントリー制)だけあって、ランキング上位選手がびっしり並んでいます。抜けているところは怪我などによる辞退か、NER(同一協会から6名までの制限)によるものです。
早田ひな選手はWR5位でした。
日本女子は早田ひな選手、伊藤美誠選手、張本美和選手、平野美宇選手、木原美悠選手、長﨑美柚選手の合計6名でした。
中国人選手も6名(全員第8シード内)でした。
ドローセレモニー
グランドスマッシュ恒例でドローセレモニーは公開で行われました。今年は選手がカジノチップを目の前で選ぶ、ゴリゴリのアナログ方式でした。僕はこういうスタイルのドローが好きです。
シングルス:ベスト64
早田ひな選手はR64で平野美宇選手と、順当ならR16で伊藤美誠選手と、準々決勝で王曼昱選手と当たるびっくりなドローでした。シード数が16しかないので、ドロー運次第でR64から厳しい戦いになります。
早田ひな選手は本戦1週間前に起きた体調不良が原因で100%の状態ではなく(ラケットの感覚を戻せていない)、状態の良い平野美宇選手に負けてしまいベスト64でした。本人が一番悔しがっていると思います。
Round 64(1回戦)
平野美宇選手との対戦でした。13ヶ月ぶりの対戦です。でももっと後のステージで当たりたかったですね。
早田ひな選手はミスが多く、勝負どころで取り切れずストレート負けでした。平野美宇選手、強かったです。
- 第1ゲーム、接戦で7-7まで競りますが、勝負どころでの失点がひびいて8-11でこのゲームを落としてします。早田選手は両ハンドの精度がやや低く、サーブのコントロールにも苦労している印象でした。
- 第2ゲーム、早田選手はややミスが多く試合を有利に運ぶことができません。競った展開で9-9となった後、不運なネットインで失点し9-10とされます。なんとかデュースに持ち込みますが、YGサーブが長くなって打たれ、得点源であるサーブ3球目攻撃のバックハンドがオーバーして11-12となります。最後心が折れそうになるネットインがあり、11-13でこのゲームも落としてしまいます。卓球の神様は今日は力を貸してくれませんでした。
- 第3ゲーム、接戦で5-5まで競りますが、サーブのコントロールが悪い、レシーブに苦労する、平野選手にカウンターされてしまうなどして5-9と大量リードされます。そこから7-9まで追い上げたものの、最後レシーブ2本がうまくできずに7-11で敗戦となりました。
早田ひな選手は明らかに調整不足で、状態の良い平野美宇選手に勝つのは無理な状態でした。試合後のインタビューで、100%の状態でなかったこと、キャンセルも考えたことが明かされました。
フル動画。
ハイライト。
試合後のインタビュー。必見です。
平野美宇選手のインタビュー。対戦相手を気づかえる選手。
試合結果を伝える記事。
混合ダブルス:ベスト4
パリオリンピックの混合ダブルスで決勝まで中国と当たらないようにするために、はりひなペアは現在の世界ランク2位を死守する必要があります。3位に付けている韓国の林鐘勳/申裕斌ペアには絶対に負けられないです。
今大会第2シードのはりひなペアは、R16でグナナセカラン/バトラーのインド最強ペア、勝ち進むと準決勝で林鐘勳/申裕斌の韓国最強ペア、決勝で王楚欽/孫穎莎の世界最強ペアと当たるドローでした。
はりひなペアは準決勝で、負けてはいけない韓国最強ペアに負けてしまい、オリンピックの第2シードの確保に赤信号点灯です。オリンピックのシード確定まで、ポイント付与対象の混合ダブルスには出続けるしかないですね。
でも700ポイント加算できたことで、2024年4月11日、12日にチェコで開催されるパリオリンピック混合ダブルス世界予選会を回避し、翌週のワールドカップマカオ2024(個人戦)に専念することができました。
Round 16(2回戦)
イシイ/B・タカハシのブラジルペアとの対戦でした。
早田ひな選手は復調傾向、張本智和選手は仕上がりが良く、快勝でした。
- 第1ゲーム、はりひなペアにとって不利なローテーション、ブラジルの男子選手に強打させないよう短い展開が続きます。はりひなペアは精度の高いプレーでリードを拡げ、11-5でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、長い展開が増えますが、はりひなペアは安定したプレーでリードを拡げます。二人とも動きが良いです。このゲームも危なげなく11-5で取ります。
- 第3ゲーム、再びはりひなペアにとって不利なローテーションですが、台上プレーで上回るはりひなペアがリードを保つ展開になります。11-7でこのゲームも取って、準々決勝進出を決めました。
張本智和選手は女子のボールをレシーブするのに苦労しなかったし、早田ひな選手はシングルスで平野美宇選手に負けた時からはずいぶん調子を上げてきている印象でした。
フル動画。
ハイライト。
試合結果を伝える記事。
張本智和選手によると、早田ひな選手はシングルスで平野美宇選手に負けた翌日は体調不良で練習できなかったそうです。それで良くこの試合に間に合わせられましたね。
「早田選手の体調もすごく不安だったし、昨日は体調不良で1日練習できなかったので、本当にまずは試合できるかって状態だったんですけど、早田選手も睡眠だったり休養とって回復してくれたので、シングル残念だしたけど、しっかりミックスでオリンピックのシードを取るために、はずみになる1回戦だったのかなと思います。」
早田ひな選手はオリンピック本番に向けて、失敗しない体調管理方法を習得しないといけないですね。
準々決勝
ガルドシュ/ポルカノバのオーストリアペアとの対戦でした。シンガポールスマッシュ2023のR16でも対戦しています。
はりひなペアは仕上がりが良く、しっかり勝てました。不利なローテーションの第2ゲームを取り切れたのが大きかったです。
- 第1ゲーム、はりひなペアにとって有利なローテーション、はりひなペアが隙のないプレーでリードを拡げる展開になります。二人ともほとんどミスがありません。早田選手のサーブコントロールもシングルスの時とは別人のように良いです。11-2でこのゲームを取ります。
- 第2ゲーム、はりひなペアにとって不利なローテーション、レシーブする相手選手が変わり、ミスが増えて接戦になります。修正して9-5と大量リードしたものの、9-9と追い付かれてしまいます。そこから勝負どころの2本をしっかり取って、11-9でこのゲームも取ります。最後のプレーは少しツキにも恵まれました。
- 第3ゲーム、再度はりひなペアにとって有利なローテーション、集中力が切れ気味の相手ペアに対し、安定したプレーでリードを拡げます。あっと言う間に11-2で勝ち切って、準決勝進出を決めました。
早田ひな選手は復調したと思います。張本智和選手は好調を維持できています。準決勝も期待できます。
フル動画。
ハイライト。
試合後のインタビュー。早田ひな選手は今大会調子が良くなくて明日どうなるか分からないって発言しています。いや、もう大丈夫でしょう。
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準決勝
林鐘勳(イム・ジョンフン)/申裕斌(シン・ユビン)の韓国最強ペアとの対戦でした。WTTスターコンテンダー蘭州2023の準決勝でも対戦しています。
世界ランク2位キープのためには絶対に負けられない相手でしたが、林鐘勳選手にやられてしまいました。
- 第1ゲーム、はりひなペアにとって不利なローテーションですが、林鐘勳選手を抑えることができてリードする展開になります。終盤韓国ペアの追い上げを振り切って、11-7でこのゲームを取ります。ペアの動きも良かったし、早田選手のサーブが効いていました。
- 第2ゲーム、はりひなペアにとって有利なローテーション、流れをつかんで5-0と大量リードしますが、そこから失速します。林鐘勳選手の攻撃を抑えられず8連続得点されてしまいます。9-9から早田選手がまさかのサービスエラーでゲームポイントを握られ、そのまま9-11でこのゲームを落としてしまいます。
- 第3ゲーム、弱い時のはりひなペアに戻ってしまい、申裕斌選手のボールの処理が甘くなって林鐘勳選手に強打されるパターンが増えます。明らかに準備不足で、6-11でこのゲームも落としてしまいます。
- 第4ゲーム、悪い流れを断ち切れず6連続失点してしまいます。最後まで林鐘勳選手の勢いを抑えられず、5-11で負けてしまいました。
この敗戦は痛かったですね。オリンピックの第2シード確保が難しくなりました。
フル動画。
ハイライト。
試合後のインタビュー。早田ひな選手はまだ「コンディションを100%に戻さないと」ということを言っています。心配になりますね。
試合結果を伝える記事。
まとめ
- シングルスはドロー運が悪くR64(初戦)で平野美宇選手に当たり、コンディションが100%でなかったこともあってストレートで負けてしまいました。
- 混合ダブルスは状態を上げて準決勝に進みましたが、韓国最強ペアに負けてベスト4でした。これではりひなペアは世界ランク3位に後退し、オリンピックの第2シード確保に赤信号点灯です。オリンピックのシード確定まで、ポイント付与対象の混合ダブルスには出続けるしかないですね。また、相応の練習をしないといけません。
- 混合ダブルスで700ポイント加算できたことで、2024年4月11日、12日にチェコで開催されるパリオリンピック混合ダブルス世界予選会を回避し、翌週のワールドカップマカオ2024(個人戦)に専念することができました。エントリーしていたパリオリンピック混合ダブルス世界予選会は、シンガポールスマッシュ後にキャンセルされました。
- 早田ひな選手は3月8日に体調不良になったと伝えられましたが、そこから完全に回復できないまま今大会を迎え、混合ダブルスの準決勝で負けた後もコンディションが100%でなかったと言っていました。年に数回体調不良になりますが、長引くことがあるし、オリンピック本番を迎えるにあたって心配になりますね。
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