WTTチャンピオンズは世界ランクの上位30名を対象にした招待制の大会です。各協会からは最大4名しか出場できませんが、世界ランクによる出場制限がなく、実力者が多く集まります。そのため準々決勝に進むことも容易ではない、非常にレベルの高い大会です。
早田ひな選手はR32敗退の危機を乗り越えて準々決勝に進出しましたが、強すぎる孫穎莎選手に屈してベスト8でした。
*アイキャッチ画像はテレ東卓球情報のXポストからの引用です。
WTTチャンピオンズ
- シニア向けWTTシリーズの上から3番目の大会です。
- 男女それぞれ年間最大4大会開催可能です。今年1回目のチャンピオンズです。
- 本戦6日、予選はありません。今大会は5日間の短縮日程で実施。
- シングルスのみ実施。出場人数は30名+ワイルドカード1名+WTT推薦1名の合計32名。
- 各協会から4名までしか出場できません。
- 世界ランクによる出場制限はありません。
- 出場資格を持つ選手が病気や怪我以外の理由で辞退した場合、ペナルティの対象となります。
- 準決勝、決勝のみ7ゲームマッチ、他は5ゲームマッチ。
- 試合はテーブル1台のみで進行されます。
- 優勝選手には1,000ポイントが付与されます。
大会情報
- 期間:3月27日から31日
- 場所:韓国の仁川(日本との時差0時間、現地10:00が日本の10:00)
- 出場種目:シングルス
- 参照:WTT公式サイト、日本卓球協会公式サイト
ネット中継
試合はT1のみ(放送用の超豪華なテーブル1台だけ)で行われました。
- テレビ東京卓球チャンネルが全試合をリアルタイム配信しました。
- リアルタイム視聴できなくても、おおむね24時間以内にはテレビ東京卓球チャンネルにアップされました。ありがたいです。
大会開催前
シンガポールスマッシュから体調を戻せたのか
早田ひな選手は世界卓球2024釜山大会は絶好調だったものの、帰国後に体調不良に陥りました。そのままシンガポールスマッシュに出場しましたが、大会中ずっと100%の状態ではないと言っていました。
そこから体調を戻せたのか、今大会直前のTリーグプレーオフセミファイナル勝利後に次のように話しました。
「(世界卓球後に)体調を崩してしまって、そこを戻せる段階に入る時ぐらいにシンガポールに出発して。あとはシンガポールの湿気だったりもあって、毎日、混合ダブルスやシングルスの試合が終わった後に熱をぶり返してしまったりしていた。ただ、シンガポールスマッシュに出るのは自分が決めたこと。張本(智和)選手だったりとか、混合ダブルスなどは気を遣ってもらった。結果的に韓国ペアに負けてしまったけど、とりあえず最後まで戦えたことは良かった。今の状態も100%かというとそうではないけど、ちょっとずつ本来の自分に戻ってきたなと」
プレーオフファイナルで平野美宇選手と再戦
プレーオフファイナルで、シンガポールスマッシュでストレート負けした平野美宇選手と再戦しました。3-1で勝利した後のインタビューで次のように話しています。
「リベンジの場だと思ったし、でも負けたことは忘れて今日の自分でどう戦うか。勝ち負けは忘れて試合に集中した。今日は敵として戦うので、自分自身に集中して試合に入りました」と振り返り、切磋琢磨できる関係に感謝した。
「間違いなくプラス。伊藤美誠選手、張本選手ともこれから国際大会でも当たる可能性がある。その刺激があるからこそ、今のままじゃダメだと思える。でも、そこは最終目標じゃない。パリ五輪で金メダルを獲るためにより海外に目を向けたい。
私は試合をする側なので平野選手に勝ちに行くことしか考えていないけど、他の人から見ると五輪代表対決、黄金世代の対決、シンガポールのリベンジという見方もある。勝負は時の運でこれからも続くけど、切磋琢磨してより日本全体のレベルを上げていくのが私たちにできること。それで『来年も見に行きたい』と思ってもらうことが大事。でも、本業というか、私が集中しないといけないのは勝つこと。五輪までに勝たないと注目は集まらないので、しっかり勝っていきたい」引用:早田ひな「日本全体のレベルを上げる」 平野美宇らと切磋琢磨を歓迎「刺激があるからこそ…」【卓球Tリーグファイナル】
成田から韓国ソウルへ
プレーオフファイナルで優勝した日曜日に(おそらく成田あたりに)移動し、月曜日の8:45にソウルに向けて飛び立ちました。慌ただしいですが、早ければ水曜日、遅くても木曜日に初戦のR32を迎えます。
幸い、韓国は日本との時差がなく、気候も似ているので環境への順応はしやすいと思います。初戦からしっかり、良い状態で試合に臨めますように。
シングルス出場選手
中国の四天王が揃っています。ワイルドカード、推薦枠は韓国の選手でした。
早田ひな選手はWR6位で第5シードでした。
日本人選手は早田ひな選手、伊藤美誠選手、張本美和選手、平野美宇選手の4名が出場しました。
シングルス:ベスト8
早田ひな選手は順当なら準々決勝で孫穎莎選手か平野美宇選手、準決勝で王芸迪選手と当たるドローでした。
出典:テレ東卓球情報のXポスト
早田ひな選手はR32敗退の危機を乗り越えて準々決勝に進出しましたが、強すぎる孫穎莎選手に負けてしまい、ベスト8でした。それでも努力の方向性が正しいことは証明できました。
Round 32(1回戦)
インドのマニカ・バトラー選手との対戦でした。2023年アジア選手権大会の団体戦以来の対戦になります。バトラー選手は裏面に粒高ラバーを使う異質型で、ラケットを反転させる「業師」と呼ばれています。
バトラー選手の変則プレーにとんでもなく苦しめられましたが、ギリギリで勝てました。危なかったです。
- 第1ゲーム、バトラー選手の粒高ラバーの球質に対応できずミスを連発します。得点を取りに行く両ハンドが極端にダメです。またバトラー選手は仕上がりが良く、甘いボールを見逃さずに強打してきます。最後は不運なエッジで10-12でこのゲームを落としてしまいます。このままだとヤバいです。
- 第2ゲーム、接戦で点差が開かない展開が続きます。心が折れそうになるのを耐えつつ我慢のプレーで10-8とします。今日のバトラー選手は攻撃力が高く10-9とされてイヤな雰囲気になりますが、最後我慢のラリーを制して11-9でこのゲームを取り返します。石田コーチの咆哮がコートに響きます。このゲームを落としていたら勝てなかったですね。
- 第3ゲーム、依然として明らかにやりにくそうですが、それでも早田選手らしいプレーが増えてリードを保つ展開になります。8-6からの勝負どころでしっかり得点してリードを広げ、11-6でこのゲームも取ります。
- 第4ゲーム、やりにくい中あらゆる技術を駆使して得点につなげます。8-6から粒高ラバーで打たれたボールを返せず5連続失点して6-11で落としてしまいます。ゲームカウントは2-2に。
- 最終第5ゲーム、リードできない苦しい展開が続きますが、早田選手らしいプレーも増えます。その様子からは、早田選手の調子は決して悪くないと思われました。苦しみながらも10-8として最後、粒高ラバーでレシーブされたボールをしっかり処理して得点し、11-8で勝ち切って大きな勝利を手にしました。
最近、インドの異質ラバー遣いに苦杯を舐める選手が散見されますが、今日の早田ひな選手もその一人になってしまうところでした。特に今日はバトラー選手に翻弄されてしまい、あとちょっと運が悪かったら負けていました。勝てて良かったですし、パリオリンピック本番前に対戦できて良かったです。粒高ラバーの選手を招聘しての特訓が必要ですね。
この試合のベンチは石田コーチでした。今日は石田コーチに入ってもらって正解だったと思いました。
フル動画。
ハイライト。
試合結果を伝える記事。
この試合のスーパープレー。
Round 16(2回戦)
エジプトのメシュレフ選手との対戦でした。世界卓球2021ヒューストン大会以来の対戦になりました。
R32のバトラー戦とは別人のようなプレー内容で勝ちました。やはり裏裏ドライブ型の選手はやりやすいですよね。
- 第1ゲーム、精度の高いプレーでリードを保つ展開になり、11-7でこのゲームを取ります。両ハンドドライブの精度の高さから、仕上がりは良いと思われます。また、レシーブをほぼバックハンドで攻めていました。
- 第2ゲーム、いつもの早田選手らしいプレーでリードを保ち、危なげなく11-6でこのゲームも取ります。
- 第3ゲーム、ミスが増えて競った展開になります。最後は良く決まっていたフォアハンドドライブがオーバーになり、9-11で落としてしまいます。
- 第4ゲーム、再び精度の高いプレーでリードを広げる展開になります。最後は国際大会でほとんど出していないバックサーブを試します。11-2で勝ち切って準々決勝進出を決めました。
この試合ではレシーブを極力バックハンドで行うと決めていたようです。プレー内容は好調な時の早田ひな選手のものに見えました。問題は、準々決勝です。
フル動画。
ハイライト。
インフィニティ・アリーナでの勝利インタビュー。
試合結果を伝える記事。
この試合のスーパープレー。
準々決勝
孫穎莎選手との対戦でした。最近さらに強くなっており、現在の早田ひな選手が普通に戦っても勝てない相手です。
早田ひな選手は前回対戦時より善戦しましたが、驚異的に強い孫穎莎選手に勝つにはあと数歩足りませんでした。
- 第1ゲーム、早田選手がリードする展開になるも6-6で追い付かれます。そこから点差が開かない展開が続きますが、11-9でこのゲームを取ります。プレー内容から早田選手の仕上がりが良いことが分かります。
- 第2ゲーム、孫穎莎選手が強さを見せてリードを許す展開になり、5-11でこのゲームを落としてしまいます。前回対戦時よりサーブ、レシーブとも改善されていますが、それでも孫穎莎選手は強いです。
- 第3ゲーム、精度の高いプレーで早田選手がリードを広げる展開になります。9-3と大量リードしたところから追い上げられますが、最後なんとか打ち合いを制して11-9でこのゲームを取って絶叫します。
- 第4ゲーム、孫穎莎選手の強打にリードを許す展開になります。早田選手も世界最高水準のプレーで応戦しますが、孫穎莎選手の強さがとんでもなくて6-11でこのゲームを取り返されます。ゲームカウントは2-2に。
- 最終第5ゲーム、序盤は接戦になるも得点を取りに行くショットにミスが多くリードを広げられます。孫穎莎選手の安定した強さに屈する形で6-11で悔しい敗戦となりました。
一方的な展開だった前回対戦から2週間しか経っていませんが、サーブ、レシーブとも良くなっていたし、負けはしたものの収穫の多い試合だったはずです。
フル動画。
ハイライト。
スーパープレー集。
試合結果を伝える記事。
この試合のスーパープレー。
まとめ
- R32で異質ラバーを使うバトラー選手の変則プレーに翻弄されてしまい、あとちょっと運が悪かったら負けるところまで追い込まれました。この危機を乗り越えて準々決勝まで進出できて良かったです。
- パリオリンピック本番前に粒高ラバーの選手を招聘しての特訓が必要だと分かりました。準決勝で中国人選手と対戦する前に負けるわけにはいきません。
- 準々決勝で孫穎莎選手と対戦し、ゲームカウント2-1とリードしたものの、驚異的な強さを発揮され逆転負けを喫しました。孫穎莎選手に勝つにはまだまだ足りないところが多いことを痛感させられる結果でしたが、石田コーチがインスタグラム・ストーリーズで触れていたように、得るものがたくさんあった試合でした。
- 早田ひな選手の努力の方向性が間違っていないことが、再度証明された大会になりました。
- コンディションについてのインタビュー記事は出ていませんが、孫穎莎戦は100%の早田で臨めたと見ています。
- 次の大会はワールドカップマカオですが、準々決勝で孫穎莎選手以外と当たるドローを引きたいものです。